心理的安全性があればいい、というものでもない
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心理的安全性があればいい、というものでもない

今回のCOMEMOのお題は、心理的安全性です。

最近よく耳にするこの言葉から、筆者は以下の3つのエピソードを想起しました。

エピソード1:心理的安全性が低い家庭について

唐突ですが、読者の皆さんはご自宅で、高い心理的安全性を持って暮らしておられるでしょうか?
筆者の知人であるA氏の場合は、とてもそのような状態からは遠い様です。
彼の財布はお小遣い制で、毎月奥様から定額をもらっているのですが、時どき百円単位でその使途を説明することを求められるそうです。
後輩に奢ったので、たくさんお金を使った、などという説明をしようものなら、なぜ奢る必要があるのか、どこの店で何を食べ飲んだのか、事細かな報告が必要になります。のでそもそもあまり人にご馳走したりはしないし、稀にそういうことがあった時も、適当に説明して(=嘘をついて)お茶を濁すこともあります。そうすると後から説明の辻褄が合わなくなり、奥様からの質問はエンドレスの様相を呈して行くとか、行かないとか。
奥様に言わせると、以前A氏は隠れて女性がいる飲み屋で散財していた的なことが複数回あり、やむなくその様な詰問調のコミュニケーションをしているとのこと。ので、ご主人が深夜の会議で残業している時、携帯に電話をかけて中継させる、という荒技を繰り出すこともしばしばとか。
A氏にも、奥様にも、この環境は心理的安全性が高いとは言えず、他人の家庭のことながら、あまり幸福に見えません。こうした関係は徐々に形成されるものだと思いますが、もしA氏と奥様が

(1)前提として、相互信頼を持つ(例えば交通においては、他のドライバーが飲酒しているかも、などと疑い始めたら成立しません。そういう意味で相互信頼は関係が成り立つベースであると考えます)

(2)嘘をつかない

(3)何か受け入れにくいことがあってもそれを許し、難詰したり責任追求したりしない

(4)受け入れにくいことが起きたことを錦の御旗にして、相手を管理しようとしたりしない(性悪説ベースの制度設計は、コストが高くなるし、幸福実感が下がります)

と言ったようなことを初めから気にかけていれば、だいぶ違ったのかもしれない、という気がします。

エピソード2:心理的安全性が低い国について


日本の報道や記事の範囲でしか知らないので、もしかしたら実態は違うのかもしれませんが、ロシアや北朝鮮の政治組織には心理的安全性がほとんどなさそうに思われます。何しろ体制(=独裁者)に反対表明したりしようものなら粛清だ暗殺だの目に遭いかねないお国柄な訳で、誰だって早死にしたくはありませんから、勢い忖度が横行することになる次第です。
至極当たり前のことではありますが、色々な考え方を持った人の集合体である国や企業では、その理念を追求するために適切な意思決定を重ねることが必要で、リーダーの存在やリーダーシップの発揮は、必要条件です。
しかしこれが独裁というスタイルになってしまうと、色々な方向から歪みが起こり、全体の合理性や幸福さが減じられます。そして必要条件としてのリーダーシップと独裁を隔てるものは
(5)国なら三権分立、企業ならガバナンスなどのチェック機構
(6)民主主義的な機会均等や自由の保障

と言ったことなのではないか、と思います。

エピソード3:行き過ぎた心理的安全性について

今回の問いにもあったように、心理的安全性は組織が健全に機能する上で重要なことです。でも、当たり前と言えば当たり前ですが、心理的安全性が担保されていれば、それで組織運営がうまく行く、ということではない、と思います。
というわけで、思考実験として仮に心理的安全性を担保することを一義にしたら、組織に何が起こり得るか考えてみたいと思います。
(A)代案のない批判や評論の横行
匿名での発信可能、という観点でTwitterは心理的安全性が担保された形で発言ができ、事実国の政策や企業の発信などに対して、非難すること自体が目的化している様な書き込みが多くみられます。
企業などの組織の場合は、匿名ではないので、ここまで感情的ではなく、ある程度の品性は保たれるとは思いますが、心理的安全性が一義となってし合うと、同じ様なメカニズムで経営方針・戦略・施策などに対してネガティブな言論が横行する可能性があるのではないかと思います。これらは方針や施策が決定する前であれば、ストレステストの役割を果たし得るかもしれませんが、決定後、つまり実行フェイズにおいては、組織が一枚岩になり一つの方向を目指すのに水をかけることとなりチーム力を下げます。
(B)徒党によるパワーの形成
組織に属して仕事をすると、大なり小なり組織からの制約を受けます。例えば服務規定には従わなければならない、とか、昇給は人事ルールによって決まる、とか、与えられた予算は原則達成しなければならない、とか。
これにより、従業員と組織の間には、ゼロサムの権利・義務関係が発生するように直感されるので、従業員側は組織に制約を緩和するように要求するモチベーションを持ちます。
通常は組織と個人の力関係は組織が勝り、これを実行するには度胸や実行力が要求されますが、発言や行動に忖度が全くいらない環境であれば、徒党を組むことも容易になり、その結果経営方針・戦略のスピードを減じることになりかねないパワーが、組織内に発生する芽になるかもしれません。

こう言った本末転倒な事態を回避するためには、心理的安全性を担保することと並行して
(7)自責的な組織文化の形成
(8)透明性が高く、公平さに重きを置いた制度及びその設計プロセス
(9)経営陣によるその(組織文化や制度)理念の継続的な説明

といったことが重要になってくるのではないか、と考えます。

(4)まとめ

上の3エピソードは、このように整理できるのではないかと思います。

・心理的安全性は企業のみのアジェンダではなく、人が集う組織であれば、どんな集団にでも関連することである

・チームや個人の力を引き出すのに重要な因子ではあるものの、それだけを単独で取り扱って結果が良くなるものではない

・心理的安全性を担保するためには、以下のマインドセット・仕組み・決め事などが必要である
<マインドセット>
(1)前提として、相互信頼を持つ
(2)嘘をつかない
(3)何か受け入れにくいことがあってもそれを許し、難詰したり責任追求したりしない
(4)受け入れにくいことが起きたことを錦の御旗にして、相手を管理しようとしたりしない
<仕組み・決め事>
(5)国なら三権分立、企業ならガバナンスなどのチェック機構
(6)民主主義的な機会均等や自由の保障

・(当たり前ではあるが)心理的安全性が担保されていれば良い、というものではなく、以下の仕組み・決め事などと共に運用されて初めてそれは効力を発揮する
(7)自責的な組織文化の形成
(8)透明性が高く、公平さに重きを置いた制度及びその設計プロセス
(9)経営陣によるその(組織文化や制度)理念の継続的な説明

読者のみなさんは、いかがお考えですか?

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富永朋信(プロフェッショナルマーケター・「幸せをつかむ戦略」著者)
9つの事業会社でマーケティングやってきました。うち、西友、ドミノ・ピザなど4社でCMO。現在は株式会社Preferred Networksの執行役員CMO、イトーヨーカ堂・セルム顧問、日経XTrendアドバイザリーボード、厚生労働省年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー等。