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紙媒体の未来

先日、日本で売られている映画『哀れなるものたち』のパンフレットが英語圏Twitterバズっていた。舞台裏の制作背景や、美しいシーンのカラー画像、文章がたっぷり読めることが魅力的だとして、大きな反響を呼んだ。

https://x.com/makigdlp/status/1751138754075693468?s=20

日本の紙文化は(特にアメリカ)から見てレアなものになってきているし、パンフレット一つとっても。それを作るまでの制作に思い入れが詰まっているということが伝わってくる。特にアメリカではデジタル化が悪い方向に進む中、こういう文化は本当に大事にした方が良いと強く実感した。

日本に行くと、毎回びっくりすることの一つに、紙の量がめちゃくちゃ多いということがある。チラシ、請求書、契約書、雑誌、良くも悪くも紙が多い。一方で、アメリカで暮らしていて、紙のものに触れることが比較すると極端に少ない。授業での教材も全てオンラインもしくはダウンロード可能なもの、お知らせも全てメール、請求書や契約のやり取りも基本的に全てオンライン上で済ます。

NYLONの紙媒体が今年復活するというアナウンスメントが昨年話題になった。2024年のトレンド予想の取材でも「紙媒体/フィジカルの復活」を個人的に入れたけれど、デジタルでの記録がどんどん消されてしまう中で、実物を持ち続けることのノスタルジー以外での重要性は今後さらに増してくると考えている。

「最近のアメリカの若者の間で紙媒体の復活が話題」みたいな話をする上では、それは紙がほとんど使用されなくなった社会でのフィジカルへの懐古であり、紙が溢れてる日本では社会背景や文化的事情が全く違うということは念頭においておく必要があると思う。

音楽ライティング/ジャーナリズム/メディアの未来は、一周回って紙媒体+ローカル+小規模だという議論も起きている。スケールばかりを重視することで重要な批評やマイナーアーティストのピックアップなどが不可能になってしまうし、今あるオンラインのツールは悪化に向かうばかりで不安定で頼れない。「デジタル革命」も過渡期にある現在、本や雑誌、パンフレットやZINE等含めて、価値ある「モノ」を作るために責任を持って制作を大切にしたい。

https://www.nikkei.com/article/DGKDZO67618740R00C14A3TCJ000/

 


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