オフィスが「ケ」の場所から「ハレ」の場所に変わったら「オンデマンド型オフィス」が主流になるかもしれない。
こんばんは。複業研究家の西村創一朗(@souta6954)です。
今回の日経COMEMOのテーマ企画は #オフィスは必要ですか ということで、夏休みの宿題は最終日にやるタイプのぼくらしく、やはり〆切当日になってしまいましたが、書いてみたいとおもいます。
新型コロナウイルスへの感染対策として、在宅ワークが一挙に拡大して、中にはオフィスを解約してフルリモート体制にシフトする企業も出てきました。
他方で、あれから半年が経って「生産性の低下問題」が表出して、「週1日の出社を必須」とする企業も出てきました。
カゴメは2017年から在宅勤務制度を導入。コロナ禍を受け4月17日から全事業所で原則在宅勤務を続けていた。5月に社員にアンケート調査したところ「在宅勤務では商品開発などで意見をぶつけ合うことがしにくくなった」など、生産性の低下を懸念する回答が多かったという。
「在宅勤務では商品開発などで意見をぶつけ合うことがしにくくなった」ことが理由で週1の出社を必須にした、ということですが、「在宅勤務では商品開発などで意見をぶつけ合うことがしにくい」というのは本当か?という疑問がないわけでもないです。
実際、僕はかれこれ半年近くフルリモートですべてのプロジェクトが完全オンラインのみのコミュニケーションですが、企画立案からディスカッションを通じたフィードバック、改善や実装に至るまで全く不都合なく完結できていますし、同様にフルリモートでもパフォーマンスを発揮できているチームもたくさんあります。
ただ、これまで数十年にわたって「同じ会議室」で「膝を突き合わせて」メンバー同士で意見をぶつけ合って喧々囂々議論しながら商品開発を行う、というカルチャーの組織にとっては、在宅勤務でオンラインで議論しながら、というのは「飛車角落ちで将棋をする」ようなムズ痒さがあっただろうことは想像に難くありません。
(大前提として「フルリモートが正義でオフィスに出勤するスタイルが悪」だとは思っていません。それぞれの会社のカルチャーによってフルリモートの方がワークするのか、それとも出社したほうがワークするのかは異なってくるので。)
こんな時代だからこそ感じる「フィジカルに会う」ことの贅沢さ。
先ほど書いた通り、僕は4月の緊急事態宣言が出たタイミングから、かれこれ半年近く在宅ワークにシフトしています。2018年8月にWeWork Icebergに入居して以来、WeWorkが好きすぎて毎日楽しく通っていたのですが、さすがにコロナ禍ではそうも言ってられず、なくなく在宅ワークにシフトしたわけです。
※厳密に言うと、固定のオフィス契約プランは解除したものの、「使いたいときだけ従量課金でWeWorkのオフィスを利用できるメンバーシッププラン」に変更したため、「解約」はしていません。引き続きWeWorkメンバーです。
最初は対面で人と会えないことに寂しさを感じたり、完全オンラインでも円滑に仕事が進められるのか、一抹の不安がありましたが、いざはじめてみると極めて快適。
毎日往復2時間の通勤時間やクライアント先への訪問にかかる移動時間がなくなった分、生産性は格段に上がりました。また、常に自宅の大きいディスプレイを使って仕事ができるようになったことで、作業効率も数段アップ。
打ち合わせの際も、オンラインのミーティングの場合、常にマルチウィンドウで様々な資料を見たり、必要に応じて検索など調べ物をしながら打ち合わせができるため、スピーディーに議論が進められるようになったように感じます。
それ以外にも、家族と過ごす時間が爆発的に増えたのも、思わぬ副産物です。
そういうわけで、少なくとも僕自身にとっては、在宅ワークによって失ったものよりも、在宅ワークによって得たものの方が遥かに多かったのです。仕事面においても、家族面においても。
緊急事態宣言が解除された後も、原則在宅ワークという働き方は変えず、多摩センターに引き込もる毎日です。都心に出るのは週に1回あるかないか。全く都心に出ることのない週も少なくありません。
いつか新型コロナウイルスが収束したとしても、コロナ以前の「毎日都心に通勤する働き方」には戻れそうもありません。スマホの便利さを知ってしまった現代人が、スマホのない生活にはもう二度と戻れないように。
半年ぶりに「オフィス」に行ってみたら感動した。
かつて毎日通っていたWeWork Icebergには、4月上旬を最後にかれこれ半年近く訪れていなかったわけですが、期せずして先週久々にWeWork Icebergを訪ねることになりました。
そう。本来は五反田に行く予定が原宿駅で足止めを食らったので、「せっかく原宿に来たのだから、久々にWeWork Icebergにお邪魔してそこで仕事しよう」と思い立ったわけです。
誰と約束していたわけでも、「行くよ!」と予告したわけでもないけれど、そこには見慣れた「いつメン」がいて、「わ~~~!!!西村さん!!久しぶりです~~~!!!」とかいってエアハグしてくれて、他愛もないけれど心温まる「おしゃべり」ができたことに、なんだか猛烈に感動したんですよね。
これは、在宅ワーク・リモートワーク、オンライン飲み会では得難い体験だなーと。
フィジカルに同じコワーキングスペースに集まって働くからこそ、生まれるモーメントですよね。
一方で、「この感動体験はオフィスじゃないと得られないモノか?」というと決してそうじゃないはず。
僕は「行きつけのバー」みたいなものはないので実体験としてはありませんが、緊急事態宣言が解除された後、久々に「行きつけのバー」に訪れて、顔なじみの常連客と久々に酒を酌み交わす、という感動体験はきっと至るところで生まれていたに違いありません。
(少なくとも、僕のSNSのタイムラインにはそうした投稿がたくさん見られました)
「フィジカルに人と会う」ということがゼロに限りなく制限されていた(今も一定の制限がありますが)僕たちにとって、オフィスやお店という共通の空間で、食事や会話という共通の体験ができること自体が、ものすごくプレミアムで贅沢な時間なんですよね。
オフィスは「ケ」の場所から「ハレ」の場所へ
繰り返しになりますが、PCに向き合って行うような作業や、打ち合わせや会議も含めて、「仕事」をするだけならオフィスは不要です。
「仕事に最適化された空間ではないので、自宅だと集中できない」という人も少なくないですが、自宅の近くに「作業や会議に集中できる空間」があればカフェやコワーキングスペースでも良いわけで、わざわざ通勤電車に消耗しながらオフィスに通って「みんなで同じ場所ではたらく」必要性はないわけです。
ただ、完全在宅/フルリモートでは得られない「プレミアムな体験」が、「会う」ことによって得られることもまた、紛れもない事実です。会社に出社することを「オフ会」と表現するみたいな話もありますが、そうなるといよいよオフィスの存在意義が根本から変わっていくことになるでしょう。
これまでは、毎日出社して「仕事」をするための「ケ」の場所として日常的に利用されていた空間であったはずのオフィスが、時折みんなで集まって関係性を深めたり、相互理解を促す、オフサイトミーティングのような「非日常」のコミュニケーションを行うための「ハレ」の場所へとシフトしてゆくのだと思います。
そういう意味では、 #オフィスは必要ですか という問いに対して端的に応えるならば「必要」と言えるかもしれませんが、必要なのは「ハレの場所としてのオフィス」であって、果たして毎月高額な賃料を払ってまでオフィスを自前で持つことが必要なのか?メンバーが集まる時だけ必要なスペースを借りる、というような形で「オンデマンド型のオフィス」で十分なのではないか?という点については議論の余地がありそうです。
僕自身、まさに「オンデマンド型のオフィス」として、WeWorkのメンバーシッププランを契約して、必要なときだけお金を払ってオフィスを利用する、という働き方をしているので、「オフィスの未来」がどうなるか?については興味津々です。
これから、オフィスに対する価値観や、実際のオフィス利用のあり方がどう変化していくのか、あるいは変化しないのかをウォッチしつづけていきたいと思います。
P.S.
在宅ワークはやっぱり最高です。
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