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ステージが変わる新型肺炎の影響

新型肺炎の感染が世界各国にも広がり、更なる感染の拡大に警戒が強まっています。

流行がさらに広がれば、これまでのインバウンドやサプライチェーンへの影響に加え、感染を避けるために外出やイベントを控える動きが広がることを通じても、日本経済に大きな悪影響が及びます。

東日本大震災後の自粛の動きが最も深刻化した2011年前半には、自粛がなかったと仮定した場合に比べて、名目家計消費が2四半期で▲2.2兆円程度下押しされた計算になります。

今回、東日本大震災後並みの自粛の動きとなった場合、名目家計消費は2四半期で▲2.3兆円以上減少することになります。

自粛の悪影響を受ける可能性がある分野は、宿泊や運輸、小売、レジャー、外食、旅行、イベント関連等が想定されます。

一方、宅配や通販・テイクアウト・テレビ・ゲームなどの巣ごもりや、テレワーク・通信などの在宅勤務関連には特需が発生する可能性があります。

風評被害により、中国人以外のインバウンドも減少した東日本大震災後のサービス輸出は、3四半期で▲0.5兆円程度押し下げられたと計算されます。

今回も同程度の影響が出ると仮定すると、インバウンド消費の拡大等により▲1.0兆円程度サービス輸出が下押しされる可能性があります。

日本居住者の海外旅行の需要が減少すれば、旅行支払いの減少を通じてサービス輸入の減少にもつながります。

東日本大震災後は、サービス輸入が東日本大震災後の影響がなかった場合と比較して▲0.3兆円程度下押しされたと計算されます。

今回も同程度の影響が出た場合は、サービス輸入が▲0.5兆円程度減少することになります。

結局、自粛や風評被害が深刻化した東日本大震災後と同程度の影響を前提とすれば、名目GDPが東日本大震災後の▲2.5兆円を上回る▲2.9兆円程度の下押しとなります。

ただし、この試算は今年の前半中に国内での自粛が落ち着き、海外からの風評被害も秋までに落ち着くといった前提です。

自粛や風評被害が長期化する場合には、想定以上の悪影響が及ぶリスクもあります。

政府は感染拡大を一刻も早く食い止めることに全力を尽くすとともに、潤沢な資金供給によって、この間の企業倒産などを最小限に食い止めることが最優先となるでしょう。

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