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「社内公募」は組織の現状診断として有効ではないでしょうか

こんにちは。ローンディールの原田です。今回は、COMEMOさんからお題として提示いただいた「社内公募」ということについて考えてみます。

「レンタル移籍」事業における社内公募

ローンディールという会社では、大企業の方々にベンチャー企業で働く機会を提供する「レンタル移籍」という仕組みを運営しています。こんな事業をやっていると、企業の「社内公募」に直接かかわることがあります。それは、ベンチャー企業に行きたい人を決めるために「社内公募」をするケースです。社内に必要なポストを「社内公募」するということとは若干異なりますが、キャリアの選択肢を社員に提示するというアクションとして大企業が実施する「社内公募」というものを第三者的に見ている立場として、コメントができればと思います。

まず、前提情報としてご説明しておきますと、「レンタル移籍」という制度を企業で導入していただく場合、人の募り方は大きく公募か選抜かという二択になります。そして、事業を始めた当初、「選抜」よりも「公募」のほうがモチベーションの高い人材が集まり、成長し、復帰後も活躍してくれるのではないかと考えていました。(一つ補足をしておくと、私たちの事業の成否を判断するのは復帰後で、元の組織に戻って活躍できるのか、ということが一番重要なのです。)

実際、移籍した方の45%が「社内公募」で選出され、ベンチャー企業で挑戦してくれました。

想定していたように、モチベーションの高い方が移籍してくれていますし、さらに加えて言うと、人事が把握できていなかった素晴らしい人材が明らかになるという人材発掘的な利点があることがわかってきました。公募でうまく回っている企業様の場合は、毎年継続的に公募でレンタル移籍者を募っていただいているケースも少なくありません。

一方で、公募ならではの難しいポイントに直面するケースがあります。今回はあえてその課題の部分にフォーカスをして紹介します。

難しいポイントを整理すると、以下の3つです。
①せっかく公募制度を設けたのに人が集まらない。
②制度の目的や必要性を理解していない上司との間に摩擦が起きる。
③復帰後の配属がうまくいかず、その人の個性が活かせない。
以下、それぞれについて課題の詳細と私たちが考えている対策を考えてみたいと思います。

課題①人が集まらない問題

「社内公募」の内容を社内の掲示板など公表したとしても、それだけで公募が集まると考えるのは、どうやら甘い考えのようです。私たちも以前は、「大企業という安定した環境を捨てることなく、一定期間ベンチャーで挑戦できるなんて、こんなおいしい話はないから、簡単人が集まるんじゃないか」と思っていたのですが、ふたを開けてみると、なかなか応募が集まらないというケースもありました。

一方で、倍率が何十倍にもなるケースもあります。この違いはなぜ生まれるのか。両者を比較してみると、以下3つのいずれかに要因があるように思います。

1つ目はトップのコミットメントがあるかどうか。この制度を導入したことに対して、経営陣がメッセージを発信しているかどうか、それによって、やはり社員のリアクションは大きく変わります。

2つ目は、運営事務局や現場のマネージャーの方々が、しっかりと情報を発信しているかどうか。ただ単に情報が全社の掲示板のようなところに掲載されただけでは社員に響かない。特に、会社全体で新しい施策を行う彩には現場のマネージャー層がいかに新しい制度の意義をメンバーに語れるか、語れているか、ということによって差が出るように思います。

そして3つ目はずばり、社風です。新しい制度に対して、全員が興味関心をもって積極的にかかわろうという企業風土があれば当然、興味を持つ方は増えてきます。

いずれも一朝一夕で変えられるものではないかもしれず、少しずつ変化させていくしかない部分ですが、だからこそ、公募をやる意義があるように思います。私たちも事務局の方と一緒に作戦を練り、説明会をやったりレポートを書いて発信したりという形で試行錯誤をしています。

私たちのケースに限らず、公募で人が集まらないということは、往々にして起こりうることだと思います。そのような場合には上記3点を参考にしていただければ幸いです。

課題②上司との摩擦

社内公募運営の難しさの2つ目は、現在の上司との間に摩擦が起きるという点です。社内公募なんだから、上司のことなんて気にせず手を上げられる、という考えもあるかもしれません。これは新規事業コンテストの応募なんかも同様ですが、組織上の制約さえ取っ払えばうまくいくかというと、そんなに甘い話ではないようです。

組織の中で物事を進めるのですから、少なくとも一緒に仕事をしている人たちの応援は必要です。そのことをしっかりと認識しない社内公募は、下手をすると組織の摩擦を生むだけになりかねません。

私たちの仕組みでは、社内公募でやる場合は、基本的に「上司の理解を得た上で応募してください」といった前提条件を付けていただくことを推奨しています。そうすると、「そんな相談できないですよ」と言ったりアクションもあります。それって、組織内で心理的安全性が担保されていないということなんだと思うのです。会社全体の方針として募集がかかっているものに対して興味を持っているということを、直属の上司と話せないというのは、なかなか問題が根深いように思います。

ただ、実際にいろいろなケースを見ていると、考え方の違いというよりも対話不足が原因であることが多く、本当は理解し応援してもらえる環境をつくれることも少なくないと感じます。公募だからと言って、対話もせずに進めてしまうと、マイナスの影響が出てくるリスクが高まりそうです。

課題③個性が活かせない

そして復帰後の配属に関してです。先にも述べたように、レンタル移籍の本当の勝負は復帰をしてからです。1年間、ベンチャー企業で挑戦をした方々はほぼ間違いなく、マインドセットがアップデートされ、パワーアップして復帰します。しかし、そういう人を活かせる組織と活かせない組織があります。

一方で選抜で運営されている場合、活かせる確率は高くなります。なぜなら、所属組織の課題や方針と関連付けて人が選抜され、ベンチャーで経験を積んでくるわけですから、復帰後の役割や期待値も明確になっています。しかし、これが公募となると、組織との関連付けがとても難しくなります。そういった進取の気性を持った人材というのは組織を活性化する貴重な存在となりうると思うのですが、事はそう簡単に運びません。本人のモチベーションに依存するのではなく、組織全体をみながらその人の個性を活かせる環境やサポートが重要になります。

レンタル移籍という事業の場合、たとえ公募であったとしても(復帰後ではなく)レンタル移籍をする前から、復帰後にかかわるであろう方々と積極的にコミュニケーションをとるようにしています。

「社内公募」は組織の現状診断

以上、私たちが「レンタル移籍」という事業を通じて実施する「社内公募」で直面する課題を紹介しました。(今回は社内公募の課題に絞って記載しており、もちろん選抜には選抜の難しさがあるのですが、今回は割愛します。いかなる制度も完璧ということではなく、それぞれにどういう手を打つか、というだけの話だと思っています。)

こうしてみると「社内公募」というのはある意味で、組織の現状診断という要素があるように思います。
具体的には・・・

・経営陣が新しい取り組みにどこまでコミットメントできているか
・経営陣のメッセージが組織内に伝達力を持っているか
・新しいものに対する社員の興味関心はどの程度か
・組織ごとの上司と部下のコミュニケーションはしっかりとれているか
・新しい取り組みを、ミドルマネジメントが支援できるのか
・組織として多様性を活かせているのか

・・・といった、状況を見極める良い機会となりそうです。もちろん、これらの問いにすべて「Yes」と答えられる組織なんて、なかなかないかもしれませんけれども。

そして、最後にもう一つだけ付け加えておきますと、「社内公募」は、一回やって何かを変えるだけのインパクトを持った施策ではない、と思うのです。アイディア募集であれ、人の募集であれ、繰り返し繰り返しやっていくことで精度が上がっていくもの。そういう粘り強さをもって運営されていかなければならない事だと思うのです。

そして、上記に整理したように、組織診断的な要素があるという点にこそ、「社内公募」の有用性があるのではないでしょうか。最終的な目的は別のところにあるとしても、「社内公募」を実施したことで組織がどのようなリアクションをしたのかを注視していく。単に制度の導入ではなく、組織の現状を把握し、改善していくためのきっかけとしても活用しうるものだと考えます。私たちもじっくりと組織自体を進化させていくことを支援していけたらいいなと思っています。

皆さんのお考えはいかがでしょうか?ぜひご意見をいただけますと幸いです。それでは。


追伸

こちらは本題と関係ありませんが、「大企業から地域に飛び込んだ人材は、どんなことを経験するのか・・・」そんなことをお話しするイベントを、地域・教育魅力化プラットフォームの岩本さんとやります。島根県の海士町で高校の魅力化と地域の活性化に取り組んだエピソードなど、面白い話が聞けると思うので、ご興味があればぜひご参加ください!(こじつけが強引ですが笑、キャリアの話にはなると思うのでご紹介させていただきました!!)

#日経COMEMO #キャリアの社内公募


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