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メタバースはじめました。 〜現実からオフグリットされた「あ(な)たらしい居場所」の可能性とクリエイターエコノミー

お疲れさまです。uni'que若宮です。

今日は立ち上げ中のメタバース事業とメタバースのこれからの可能性について考えていることを書きたいと思います。


メタバースクリエイタースタジオはじめました。

実はいま、メタバースのトップクリエイターが集めたクリエイタースタジオを事業として立ち上げています。

このスタジオでは、ワールド、アバター、エフェクトなど、VRChatをはじめとする仮想空間であたらしい世界や体験をつくり出している日本のトップクリエイターが集まっていて、プロジェクトごとにギルド型のチームを組んでメタバース体験を創出します。

水面下で進めてきたのですが、徐々に事業としても具体化してきており、年末にかけてアクセルをかけていきたいと思っています。

(たとえば先ごろ発表された、日本を代表する法律事務所であるアンダーソン・毛利・友常法律事務所の「メタバース支店」開設をご一緒していたりします)


「メタバース」という言葉はweb3と同様バズワードになっていますが、定義が曖昧で内実がかなり雑多、なにもかも「メタバース」と言われてしまいわかりづらくなっているところもあります。

私たちのスタジオがやる「メタバース」の主眼は、VRChatをはじめとする仮想空間での「現実からオフグリッドされた体験とコミュニケーションの創出」です。

「現実からのオフグリッド」の体験可能性を広げていくことがメインフォーカスのため、いわゆるデジタルツイン的なシミュレーション活用や「実用」のためのVR事業はフォーカス外です。

また、暗号資産やNFTはまだしばらくは扱いません。それは現状のクリプトやNFTが結局まだリアルマネーのための投機段階だと思うからで、現段階でやると「現実からのオフグリッド」とは真逆に「現実のお金を稼ぐため」という旧来型のモーメントに巻き込まれすぎてしまいそうだからです。しかしこのあたりはやがて法定通貨などリアルマネーからもオフグリッドされ、DAOや新しいコモンズのための経済圏をつくれる可能性があると考えており、将来的には展開していく予定です。


スタジオを立ち上げた理由① 「あ(な)たらしい居場所」の可能性

このスタジオをつくりたいと思ったのには大きくいうと2つ理由があります。ひとつは「居場所の可能性」を感じたから。

2000年くらいのインターネット黎明期のカオス感

昨年遅ればせながらQuest2を購入しVRChatに入ってみて、「2000年くらいのインターネット黎明期のカオス感」を感じました。

そこではビジネス目的ではなく、個人が趣味で膨大な時間と労力をかけて狂ったワールドをつくっていたり、英語や中国や色んな国の人が入り混じって明確な目的もなく「遊んで」いて、独自の文法やカルチャーも生まれています。

Facebook社がMeta社に改称したことがダメ押しになり「メタバース」がバズワードになったものの、(当のMeta社が普及機Oculus Quest2を買収後値上げするというプラットフォーマー的横暴で水をさしたりして)まだまだそれを体験している人は限られていますし、

メタバースはまだまだ「一部のオタクの(非生産的な)趣味」と捉える向きもあるかもしれません。

しかし思い出してください。2000年より前のインターネットはまさにそんな感じだったのです。テキストサイトや今はなきFLASH、2ちゃんねる、などなど、一般社会からみれば、役に立たない「一部のオタクの趣味」と思われていました。

しかしそこから数年でインターネットは大きく普及し、2007年のiPhone登場によって決定的に一般化します。そこにオフライン世界以上の巨大なコンテンツ市場が生まれ、GAFAMが世界を統べるにいたりました。

いまや自社の「サイト」をもっていない企業はなく、個人はひとつのみならず複数の「アカウント(ID)」を持っています。同じように数年後、メタバースでは各企業が「ワールド」という「場」を持ち、個人が「アバター」により複数の「アイディンティティ」をもって暮らす時代がくるでしょう。

VRChatが現在、「一見役に立たないような」「一部のオタクの趣味」にみえるとしても、否、いまはそうみえるからこそ、そこに可能性を感じるのです。


Be/liveできる「あ(な)たらしい居場所」

そしてまた、そこには単なる「コンテンツ(内容)」としてだけでなく、「居場所」としての可能性があります。

メタバースに関してよく、「結局現実じゃないんだからせいぜいお遊びで、意味ないでしょ?」という声も聞きます。しかし、「現実」を主と考えている限りメタバースの価値を理解するのは難しいのです。このあたりは↓の記事をぜひ読んでみていただきたい。

かつてスマホが爆発的に普及し始めた頃、よく「電車の一車輛まるまる全員スマホ見てる」的な話が取り上げられたものだった。そしてスマホをまだ持ってない人々は彼らを訝しみ、問うのだ。「みんなスマホで何やってんの?」と。
"外"の人間が今VRChatに向けているのはまさにこれと同じ類の不快感なのだと思う。
(中略)

"外"にいた頃、友達と会って何してた?ご飯食べて、おしゃべりして、あとは趣味の何かを色々。でもそれって本当に"外"じゃないとできないことなんだろうか?……VRChatで過ごしていると、このことについてよく考える。ほとんどの場合、答えはNoだ。心底そう思えるようになるまでには私も多少時間がかかった。でも慣れてしまった今、そうなのだ。ここには何でもある。少なくとも、満足に暮らせる程度には。
(中略)

現実でもできるじゃん!! なんでわざわざVRChatでやるの?

と思うのは"外"にいればまあ当然である。違うのだ。

「わざわざVRChatでやる」のではない。「わざわざ現実でやらない」のである。

一つ一つ言語化してみよう。まずバーだが、最大の理由は実際に出かけるより長居できるからだ。よく通っているAtrangelというバーは夜中の2時までやっているのだが、リモートワークとはいえ翌朝9時に出勤する人間が夜中の2時にバーを出たら、家に帰って風呂入ったりして寝るのは早くても3時とかである。終電を逃せば交通費はアホほどかかるし、そんなことをしょっちゅうしていたら健康を害しまくるし仕事にも悪影響ありまくりである。VRChatならそもそも寝る準備をしてからバーに行けるので店を出てから寝るまで1分だし、交通費もゼロだ。好きな飲み物を好きなように作って飲めるし、そもそも別に飲まなくてもいい。席料なんて概念は存在しない。6時間の睡眠が取れるなら、週に数度ならそれほど健康面の心配もいらない。翌朝には元気モリモリ。最高だ。
(中略)

これの副作用として、"外"に引きこもっていつまでもVRに来ない人間のことがわりかしどうでもよくなってくる。いつまでも"外"で苦しんでいる人のことは本当にどうでもいいし、なんで無駄なことしてるんだろうって思う。手を伸ばされたら引っ張り上げて助けてあげよう、くらいの気持ちはあるが、なにせVRChatに住んでいる以上、VRChatに来てもらわないことには手の取りようがない。

「わざわざVRChatでやる」のではなく「わざわざ現実でやらない」。「"外"に引きこもっている人たち」。「住んでいる」。こうした言葉からはメタバースが「居場所」であることがわかります。

メタバースは特定のなにかを「doする」ことを超えて、「be(なる/ある)」、「live(生きる/住む/暮らす)」居場所になっているのです。

先ほどの引用の最後に、「いつまでも"外"で苦しんでいる人のことは本当にどうでもいいし、なんで無駄なことしてるんだろうって思う」という一文がありました。

そう、「外」の世界がメインでいろいろなことができ、メタバースに比べて自由だ、という考え方はもはや幻想なのかもしれません。なぜなら、現実は圧倒的に「物理」に支配されているからです。

自分が選んだわけではない、たまたま生まれ持った顔や身長・性別など身体的特徴に囚われて生きづらさをかかえていたり、距離の制約のせいで会いたくても会えなかったり。建築やモノをつくろうとしても、物理法則に合わせた構造的制約や金銭的制約があります。メタバースは物理的存在ではない故に、こうした制約から「オフグリッド」されて、望む生き方をすることも可能なのです。

メタバースにはスポーツの柱の一つでもある、多様性尊重の側面もある。仮想空間にはアバターを通じて参加するため、現実世界の役割や容姿にとらわれずに創作や表現など様々な活動ができる。
為末氏は「メタバース上では日常の肩書を取り払って、一人のファンになったり、サポーターになったりできる可能性がある。性別、人種、障害の有無にかかわらず、偏見なくその人自身を評価できる」と話す。

実際、バーチャル美少女ねむさんの「ソーシャルVR国勢調査2021」によると人型アバターの半数以上は物理性別とは異なるものであり、また半数以上の人が「人間」ではないものとして過ごしているといいます。


先日開催した「よそおうのこれから」展ではメタバースの体験展示とともに、『身を変えていきる術』というスペシャルトークを行いましたが、そこでも現実の制約や生きづらさから「解放」されたい欲求をもっている人が多いと感じました。

生まれ持った性別(ジェンダー)、見た目(ルッキズム)、障害、ダイバーシティがさかんに言われますが、いまだに僕たちはたまたまガチャのように与えられただけの身体の「物理」に囚われています。そこで無理に生きるより、「わざわざ現実でやらない」という選択肢があってもよいのではないでしょうか。

そしてこの「あたらしい居場所」はひとつではなく、いくつも存在することができるいわゆる「マルチバース」です。あなたにフィットした「あなたらしい居場所」がつくれるのです。

こうしたこれからますます増大してくる「あ(な)たらしい居場所」への需要を考えた時、それをもっとも上手く叶えることができるのはすでにそこに住み、居場所にしているクリエイターたちです。必要なのは単なる3DCGのモデリングやプログラミング技術だけではなく、一日の過半をすでに「中」で過ごし遊び倒しているクリエイターのBeやLiveの体験なのです。


スタジオを立ち上げた理由② 搾取のない活躍の場を

以上がスタジオを立ち上げたポジティブな側の理由ですが、もう一つ、ちょっとネガティブな理由もあります。

それは「クリエイターの搾取構造」を変えていきたいという想いです。

メタバースに始まったことではありませんが、日本ではしばしば「つくり手」が搾取される構造になりがちです。

僕はかつて建築業界にいましたが、ゼネコンなどが大きな工事を数百億で企業から受注しているのに、実際に現場で工事している人は日雇いで安い賃金しかもらえていないようなケースがままあります。IT業界でも同じく、SIerはM銀行とかのシステムを数千億で受注しているのに、N次の下請けを経て実際にものづくりをしている人はデスマーチ、というのは珍しくありません。

せっかくこれから「メタバース」という新しい市場が立ち上がろうとしている今、このままでは企業によるクリエイターの搾取構造がつくられかねない危機感があります。

クリエイターはもともと趣味からはじめた個人だったりするので、企業との契約や交渉のスキルがありません。それをいいことに搾取が横行すれば(一部の企業が短期的に大きな利益を手にするだけで)クリエイターは疲弊し、メタバースの源泉は枯渇していってしまいます。これから文化として育つべきメタバースの土壌が搾取によってやせ細ってしまうのです。

日本のアニメは世界に名だたるコンテンツ産業ですが、アニメーターとして食べていけるかというと厳しい現状があります。少なくとも活躍しやすい環境があるとはいいがたいでしょう。結果としてアニメーターやアニメーションの技術は、より単価の安い他国へと流出してしまっています。

「メタバース・クリエイター」という仕事が食べていくのも大変な職業になるのか、「YouTuber」のように子供たちの新しい憧れの職業になるのか、その分かれ目だからこそ、今それを変える事業を立ち上げようと思ったのです。


「クリエイターファースト」を実現する

搾取の構造を引き起こしている要因は大きくは

①つくり手の無名化
②低賃金
③非対称な主従関係

という旧来の慣習だと分析しています。これはそれぞれつながっていて、名前も出せずに取替えのきく作業員になるからこそ低賃金となり、また指示に従う構造の中でクリエイターが「個」として活躍する機会が増えない現状があります。

こうした状況を変えるため、当スタジオでは

①クリエイターが自らの名前で活躍できる機会の増加
②透明性の高い見積もりによる、クリエイターへの適切な報酬確保と相場の形成
③主従ではなくコラボレーション型の制作

という環境をつくり、クリエイターそれぞれがのびのびと活躍できる機会を増やしていきます。そのことが業界全体を盛り上げ、あたらしい文化を育てていくと思うからです。

今回のクライアントである、アンダーソン・毛利・友常法律事務所さんはこうした思いを十分に理解してくださり、クリエイターへのリスペクトを持ってクリエイターにものづくりの自由度をもたせてくださっていて、こうした共創関係からこそまだ世にないような、遊び心のあるユニークなメタバースの先駆的な例が生まれてくると思っています。

そして僕は、「メタバース」はアニメや同人誌、ゲーム、コスプレなどのように日本のクリエイターが世界で活躍できる領域だと信じてやみません。こうした可能性のある領域だからこそ、企業が自社利益のために搾取するのではなく(著作権の移転や著作人格権の不行使が慣習になっていることも変えていきたい)、共に成長する「クリエイターエコノミー」として事業をしていきます。

コラボラティブにメタバースの可能性をクリエイターと一緒に考え、つくっていきたい企業のみなさま、ぜひお気軽にご相談ください(↓問い合わせから)


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メタバース移住

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若宮和男 (起業家 / アート思考キュレーター / 福岡女子大客員教授 / ランサーズタレント社員)
東洋経済「すごいベンチャー100」uni'que CEO、 ランサーズタレント社員 (最近の興味)編み物としての建築←コアバリュー、アート思考、新しい働き方、新しい教育 ←DeNAで新規事業 ←NTTドコモで新規事業 ←美学藝術学研究者 ←アート・音楽イベント主催 ←建築士