フリーランスガイドライン案が公表。フリーランスに関する議論に大きな一歩
どうも。弁護士の堀田陽平です。
以下の記事のとおり、年内にフリーランスガイドラインの案が示されるとされていましたが、昨日12月24日(木)、フリーランスガイドラインの案が公開になり、意見公募手続が始まっています。
案をご覧になりたい方は以下をご参照ください。
まだ内容が確定したわけではないので細かな内容には触れませんが、このフリーランスガイドライン案について思うところを書いていきます。
なぜ「省庁横断」のガイドラインが必要なのか
このガイドラインでは、「フリーランス」について一応の定義づけがされていますが、一言で「フリーランス」といってもその実態は実に多様です。法的観点からの分析のため、
①専門的スキルを有しており発注者との関係でも交渉力を有するフリーランス
②フリーランスというのは形式に過ぎず実態は「労働者」であるフリーランス
③「労働者」ではないものの、一社からの発注に依存している等の理由から経済的に特定の発注者に依存しているフリーランス
と一応分けて考えてみたいと思います。
現行法を基準に法的に整理すると、①は「事業者」として独占禁止法、下請法といった「競争法」の適用を受けることになります。
②については、実態としては「労働者」であるので、労働関係法令によって保護されることとなります(ただ、ガイドライン案では競争法の適用も排除されているわけではありません)。
問題であるのは③ですが、現行法の下では、①と同じく競争法の適用を受けることとなり、ガイドライン案も同様のスタンスをとっているのだろうと思います。
こうしてみてみると、「フリーランス」と一言でいっても、適用される法律との関係では、競争法、労働関係法令を連続的に捉える必要があり、それぞれの省庁がバラバラに議論をすることはかえってフリーランスを混乱させることになりかねないでしょう。
そのため、内閣官房を中心として、競争法との関係では公正取引委員会、中小企業庁が、労働関係法令との関係では厚労省が連名して、一覧性のあるガイドラインを策定するということは非常に重要な意味があると思われます(実際、一覧性があるので、見やすいです。)。
フリーランス取引に競争法を適用することを明確化
このガイドライン案では、フリーランスの取引に競争法を適用することを明確化しています。
これは、「明確化」であるので、もともと適用が可能であったところをよりしっかりと執行していくというスタンスの現れと考えられます。
競争法である独占禁止法の法目的は、「公正且つ自由な競争を促進」であるので、競争法の適用を強化するというスタンスは、「フリーランスの自律性」を残しつつ自由な競争を阻害するような不公正な取引行為を規制することで、フリーランスの健全な発展を促すものと考えられます。
労働法的保護の拡大を行うべきか
上記③の類型のような特定の発注者に経済的に従属している場合に労働法的保護を拡大すべきとか、一定の未満の収入の場合は労働法的保護を拡大すべきという議論がなされることが多いです。
しかし、下の実態調査によれば、フリーランスという働き方を選択した理由としては、自律的な働き方をしたいという理由が多く、この自律性を奪ってまでフリーランスの一部をカテゴライズして一律に労働法的保護を拡大することが適当であるかは難しいところです。
もちろん、立法論としてはあり得ると思いますが、上記の実態調査によれば、現行法の労働者概念を基準にしても、実態としては「労働者」である可能性のある人(冒頭述べた②)が一定数見られ、まずは現行制度の枠組みをしっかりと執行していくことが重要と思われ、この点もガイドライン案で示されています。
不本意フリーランスの問題
フリーランスの増加は、好景気の時と不景気の時の双方で起こるされています。
すなわち、好景気のタイミングでは、労働者がリスクをとってフリーランスになる場合が多く、他方で、不景気の時には、雇用市場に入ることのできなかった層が不本意ながらフリーランスになる場合が多いといわれています。
この不本意フリーランスは、自律性を望んでいないため非常に問題があり、本質的には雇用市場に限らない労働市場全体の課題でしょう。
フリーランスガイドラインは第一歩。今後も継続的議論が必要
これまで非正規雇用の問題はあれど、フリーランスについては「労働者“以外”の人たち」という程度の位置づけで、本格的な議論がされてこなかったように思います。
フリーランスガイドラインの策定は、こうした状況下にあったフリーランスの働き方に光が当てられたもので、非常に大きな一歩であると思います。
上記のようにフリーランスの働き方は雇用市場とも連動しており景気にも左右されるため、今後も引き続き議論されていくことに期待したいと思います。