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「ファシリテーション」の学び方は、「ボクシング」に学ぶ


会議やワークショップの場で、ボトムアップの創造的対話を生み出す技術として「ファシリテーション」に注目が集まっています。

ぼくは組織ファシリテーションを専門とするミミクリデザインという企業で働いています。そこで様々な企業や公共機関から「ファシリテーションの技術を学びたい」というご依頼をいただきます。これはとてもありがたく、ぼく自身この技術を通して世界がもっとよくなるといいなと願って仕事をしています。

しかし、ふと自分自身と社会が囚われているバイアスに気づいてしまい、このnoteを内省のラップとして書き綴りたいと思いました。

技術は一朝一夕では身につかない

まず、講座や研修を数時間やった程度で「技術が身に付く」なんて考えるのをやめようということです。

そして願わくば、ファシリテーションの技術を組織やチームに導入することを試みるなら、短期ではなく中長期で伴走したいのです。

当たり前のことなのですが、技術なんて一朝一夕で身につくものではありません。

技術を学ぶとき、ぼくらはまず方法を知ります。そして他者のやり方を手本することが多いでしょう。

そのような方法と手本を参考にしながら自分なりに試し、他者から指摘を受け、悔しい思いをしながら真摯に受け止めます。そして、試すなかでうまくいったこと、うまくいかなかったことを振り返りながらまた試し・・・こういったプロセスのなかで磨いていくものです。

技術の習得とは日々の研鑽の賜物であるにも関わらず、「ファシリテーションが学べる2時間のパッケージ」だなんて言っちゃっていいのだろうか?それは技術への冒涜では?

というのがぼくの、ぼく自身への批判です。

まるでボクサーのトレーニングのように

こうした疑問が心に湧いてからというもの、研修や講座を依頼される背景や、それを引き受けるぼく自身のなかにも「講座や研修でいかに身につけてもらうか?」というバイアスが存在することに気づいてしまいました。

ファシリテーションの学習は、ボクシングのトレーニングに似ています。

特別なコーチに2時間あるいは数日指導を受けたとして、その教えが血となり肉となるには、日々の研鑽が必要です。

基本のフォームを鏡を見て確認するように、「今日のミーティングのアジェンダはこれでよいか」「自分のストーリーテリングがいいものになっているか」を確かめていきます。

サンドバッグを打ちながら手応えを確かめるように「準備してきた問いかけは参加者の思考を駆動させるか」「問いのコンビネーションの流れはうまく機能するか」をシミュレーションします。

スパーリングをするように、ミーティングで問いかけを実践します。ミーティングのプロセスをふりかえり、うまくいったこと、うまくいかなかったことを確かめていきます。

スパーリングはとても有効です。試合に臨む前に、チームでテストワークショップを行うのもよいでしょう。実戦でオフェンス、ディフェンス、フットワークの技術を確かめるように、問いかけ、ストーリーテリング、意見の構造化などがうまくいっているかを確かめるのです。

スパーリングでボコボコにされることもあります。しかしその都度ふりかえれば、かならず改善します。

「楽しさ」に触れるために

ファシリテーションについての講義や演習は、こうしたトレーニングを日々行ってもらうための、ほんのさわりでしかないのです。

2時間の講座をうけて、わかった気にならないでほしいですし、ぼく自身「わからせた」ことで満足してはならないと思っています。

「わかる」とか「わからない」とかではなく、「楽しさ」と「奥深さ」に触れ、その技術を継続して学び続けたくなるような研修をつくることがぼくの課題です。

人の学びの根源は楽しさや喜びですから、その根源を駆動できる演習になっていないといけないわけです。そのために日々悩みながら研修の設計をしています。

参考記事・文献

大企業の「ジョブ型組織」への移行が話題となっています。ジョブ型への移行の懸念として、「個人主義的で、チームワークが生まれにくいのでは?」と言われています。しかし、ジョブ型であろうとも、チームワークは必須です。各所でさまざまな研修が行われていますが、「ジョブ型組織に移行するからこそ、ミドルマネージャーのファシリテーションスキルを育みたい」というご要望も多くあります。


そして、ファシリテーションの必読書はこちらです。

最近掲載された、ミミクリデザインでの仕事が紹介された記事はこちらです。


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臼井 隆志|Art Educator
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