見出し画像

仕事を「作る」人をつくろう

人不足と言われて久しい。なぜ完全雇用が続くのか?世界の好景気に結び付けたいところだが、実は輸出は日本のGDP比13%に過ぎない。

むしろ日本の人不足は、人口構造の変化がもたらす短期的な局面と解釈できる。急激に進んだ高齢化ゆえに、労働力人口対シニア人口の比率は20年の間で、4対1(2000年)から2対1(2020年予測)へ高まった。このことが、自動化になじみにくいサービス業の需要供給バランスを崩した。

しかし、この人不足は長続きしないだろう。シニア人口の伸びはすでに鈍化している。最後の人口ピークである団塊ジュニアが70歳を迎える2040年以降、労働人口対シニア人口の比率は1.5対1程度で安定することが見込まれる。

したがい、仕事の「需要」と、労働力の「供給」は遠からず反転する。労働力人口とその他の比率が落ち着き、さらに製造の現場を追う形でサービス業やホワイトカラーの自動化、AI活用が進むと、短期的な人不足の先に、慢性的な仕事不足が想像できる。

この観点から、日本経済に必要なのは、短期的に仕事を「こなす」こと以上に、長期的に仕事を「作る」ことだ。しかし、女性の非正規雇用増加、シニアの定年延長、外国人労働者のビザ緩和といった目の前の労働政策は、どれも仕事を「こなす」側の労働力供給に偏っている。先を見越して仕事を「作る」観点が弱い。

では、どのように仕事を「作る」のか?

財政出動は雇用創出の伝統的な解だが、これからのインフラは、成長よりも成熟を意識することが大切だ。新しいものを増やすよりも、古いものをメンテしたり、コンパクトシティのように賢く畳んだりすることが、成熟社会における正しい財政出動の方向だろう。また、国家運営の基礎となるデジタルインフラつくりも欠かせない。これらは仕事を「作る」観点から国が率先するべき分野である。

さらに、仕事を「作る」ひとをつくるという視点を指摘したい。社会の付加価値が生まれるメカニズムは、一部のエリートが大きな組織を動かすモデルから、緩い個人のネットワークがアイディアを生み、短いサイクルで実行するモデルに移りつつある。

ということは、創造性のある個人がのびのび活躍できることが、長期的にいろいろな仕事を生み出す必要条件だろう。このような個人を応援し、日本でより多く活躍してもらうことが、仕事の需要を生み、成熟社会の活性化につながると考える。

もちろん、社内ベンチャーで新規事業を生んだり副業を推奨したり、企業ができることは多い。加えて、女性・シニア・外国人というこれまで労働人口の王道から弾かれていたセグメントを積極的に「仕事を作るひと」として応援してはどうか?

例えば、シニア起業家の創出。シニア労働力の目的を定年延長ととらえると、とかくシルバー人材センター的な単純労働に終始しがちだ。一方で、シニアの持つ経験や蓄積はこれからの時代にも役立つことが多い。しかも、継承に失敗すると、せっかくの知恵は途絶えてしまう。

実はものづくりの分野で、アナログな技術がデジタル時代にも生き残ることが多い。このような技術を持ったシニア人材を定年とともに失うことは、大きな損失だ。女性起業家に特化したVCがあるように、シニア世代の競争力を見出し継承するような投資の枠組みを作れば、長期的な仕事つくりと競争力の創出につながるだろう。

また、外国人を、仕事を「こなす」人から「作る」人と発想転換することも大切だ。日本人にはない価値観を持ち込むことで、革新が期待できる。例えば国内観光業など旧来型の内需産業に、外国人の知恵を使ってはどうだろう?

地方振興によそ者の発想が必要とはよく言われることだが、究極なよそ者とは日本人以外に違いない。このように考えると、短期ゲストワーカー的な外国人労働者受け入れとは逆に、日本に長く根付いて仕事をつくってくれるような人材を積極的に呼び込むことが必要になる。実際、地域おこし協力隊には外国人も活躍しているが、もっと受け入れる余地があるのではないか?

国内の人不足が仕事不足に様変わりする時代は遠くない。仕事を作る、さらに、仕事を作る人をつくる試みをいまから始めたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?