見出し画像

続々登場!「肥満薬」ポイントまとめ

ここ1か月余り、いわゆる「肥満薬」(肥満もしくは肥満症に対する治療薬)が次々と日本でも発売が報じられ、話題になっています。

「体重を減らせる薬」と聞くと興味を惹かれますが、薬を使える人の条件や、気を付けておきたいポイントもありますので、情報をまとめてみます。

2月~春に登場する肥満薬2種類

2月22日に発売されたのは「ウゴービ」という薬です。肥満症の治療薬として使われるようになったものです。医師の診察のうえで処方箋をもらい、薬局などで購入する「処方薬」です。週に1回、注射による投与が必要です。

もうひとつ、春にもうひとつ「肥満の治療」に関わる薬の発売が見込まれています。「アライ」と呼ばれる薬です。こちらは肥満の人向けに、ドラッグストアなどで購入できる「市販薬」です。医師の処方なしで購入が可能です。飲み薬で、1日3回、食事中・食後に服用します。

ウゴービとオルリスタット、何が違う?

この2つの違い、まず大きいのは、医師の診察を必要とする「処方薬」か、必要としない「市販薬」かという違いです。
そこにも関係するのですが、前者は肥満症の「治療薬」であり、後者は肥満症の「予防薬」であることも違いとして挙げることが出来ます。

治療か予防かって、ちょっとわかりにくいですね。

まず「肥満症」という言葉の定義から確認します。以下の2つの条件を満たすと、肥満症とされます。

  • ①BMI25以上であり

    • ②2型糖尿病や脂質異常症、高血圧、高尿酸血症などの肥満に関連する11の健康障害のどれか1つ以上を合併している

    • ②または、内臓脂肪の蓄積がある

簡単に言えば、肥満(BMI25以上)があるだけじゃなくて、肥満がもとになっている健康の問題があると、「肥満症」という状態だとされるということです。

ウゴービは、肥満症に「なっている」人が、その状態を脱するための「治療薬」であり、新井は、肥満症に「ならない」ための減量などを目的とする、いわば「予防薬」であると考えればわかりやすいかもしれません。

肥満薬を使う際の注意点は?


前提として気を付けておきたいのは、前述したように「肥満」自体は病気ではない、ということです。もちろん、美容目的でのダイエット(肥満ではないし、肥満による健康問題も出ていないのに行う減量)は、今回の薬の適応ではありません。

一方で、体質の問題などがあってどうしても健康に問題が出てしまうような肥満になってしまう人もいます。その方々にとって、薬で改善できる選択肢が出たことは良いニュースと言えます。

ウゴービに関していうと、上記の肥満症の定義より、利用の範囲はさらに限られ、以下の2つのポイントを満たすもの、となっています。

  • ①高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかの病気があり、

  • ②BMI(体格指数)が35以上(身長160センチで体重約90キロ)

  • ②またはBMI27以上(身長160cmで体重約69キロ)で肥満に関する健康障害が2つあることを条件とした。

一方、アライは医師の処方を必要としない市販薬です。「予防薬」という位置づけから、範囲はより広いものになっています。

  • 腹囲が男性は85cm以上、女性は90cm以上。

  • 健康障害がなく、BMI35未満。

  • 食事や運動など生活習慣の改善の取り組みを3か月以上行い、体重や腹囲の記録を1か月以上記録していること。

  • 定期的に健康診断を受けていること。

アライは「要指導医薬品」といって、薬剤師と対面で薬についての指導を受けた場合のみ購入できます。詳しいことは、お近くのドラッグストアなどに
お問合せ下さい。

肥満症薬は「やせ薬」ではない

この日経新聞での社説でも指摘されているように、肥満薬の利用には注意も必要です。
特に心配されるのが、美容目的での不適切な利用が増えることです。
もちろん、苦労せずに痩せられるならそんなに良いことはない、という気持ちは非常に共感できます。しかし、肥満薬(特にウゴービ)には吐き気やおう吐、便秘、下痢などの副作用が指摘されています。

また、頻度は少ないものの、低血糖や急性すい炎などの重大な副作用を生じる可能性があります。

自分を守るためにも、例えばオンラインクリニックなどで安易な処方を行うところからの入手は避け、かかりつけのクリニックなど、信頼できる医療機関を通じた利用が求められます。

#日経COMEMO

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?