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「必ずしも結婚する必要ない」7割のニュースに思うこと

結婚することについて「必ずしも必要はない」と考える人の割合が7割近くに上ったというNHKの調査結果のニュースが話題になりました。この25年間で最も高くなったそうです。

第一印象では、未婚者に対する調査ならば「妥当では?」と思ったのですが、このNHKの調査の概要を確認すると、未婚者調査ではなく、既婚者(離婚含む)が82%も占めていることがわかりました。未婚はたった18%しかいません。

しかも60歳以上が半分くらいを占めています。2015年の国勢調査による現段階での年代構成比と比較しても、このNHK調査は高齢者比率が高いようです。

そういう高齢者が多いサンプルの中で「必ずしも結婚しなくてもいい」が7割という結果は、個人的には結構衝撃でした。皆婚時代の高齢者にとって「結婚=当たり前」はデフォルト価値観だったからです。


但し、この設問は、選択肢が

甲:人は結婚するのが当たり前だ
乙:必ずしも結婚する必要はない

と、「結婚するのが当たり前か否か」という形なので、若干バイアスがかかっているとは思います。

本結果の経年推移を見ると以下の通りです。

最初の調査年が1993年ですから、まだ男女とも生涯未婚率が5%以下だった皆婚時代です。

1993年50%だった「結婚しなくても良い」が、2018年の結果では68%まで増えました。年代別では、30代だと88%。実に9割にまで拡大しています。一方、70代以上は43%しかいません。

つまり、高齢者層はいまだに「結婚するのが当然」という意識が強いことがわかります。

当然でしょう。彼らは、自分たち自身がほぼ100%結婚した世代ですから。むしろ43%も「しなくていい」派がいることの方が驚きです。


同時に調査された「子を持つのが当然」意識は、1993年の54%から2018年33%へと減ってはいますが、こちらも多分高齢者層の意識は「子どもを持って当然」意識が高いものと推測します(概要には年代別データが存在しないので)。


この調査の設問文に対して、なぜ「~して当然」とか「必ずしも~ではない」という両極端の二者択一方式にする必要があったのか、という疑問の声もネット上にはありました。

同様の例は、厚労省の「出生動向基本調査」でも行われていて、ニュースなどでよく「結婚したいのは9割」という報道がされますが、あれも実は、選択肢がふたつです。

「結婚するつもり」か「一生結婚するつもりはない」。

そう突き付けられれば、特に「結婚したい」という気持ちがなくても「結婚するつもり」が多くなるのは自明の理です。

それについてはこちらの記事に書きました。

ところで、このNHKの調査でもっとも興味深いのは、この結果に対するいろんな人の意見です。

「30代で必ずしも結婚する必要がないのが9割もいるなんて世も末だ」という意見をいうAさんがいます。Aさんはあわせて「こういう意識が国を滅亡させる。結婚して子どもを産み育てのが当たり前に決まっている」とまで言ってのけます。

一方で、「結婚するのが当然だと思っているのが27%もまだいるのが異常だ」という反対意見を言うBさんもいます。Bさんは「結婚するのが当然だという押し付けをする老害世代がいるから苦しむ人がいる。結婚して当然という回答が0%になるべきだ」と、一見フラットな意見を言っているようで自分のべき論を押し付けるし、反対者はゼロになるべきだとまで言います。

AさんもBさんも結婚に対する意見は真っ向対立していますが、実は同じタイプの人間です。「自論こそが正義であり、それ以外は認めない」というスタンスは一緒ですから。

「自分はこう思う」という意見を持つことは大事ですが、「正しいか間違いか」の二項対立論に陥り、自分と違う考え方はすべて間違いで、駆逐しても構わないのだという風潮が当たり前になることが一番危険ではないでしょうか。

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荒川和久/独身研究家・コラムニスト
長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。