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世界的に加速しているEVシフトと躍進する中国の新興企業の存在感

気候変動・脱炭素・climate tech等のテーマについて国内外のニュースをウォッチしている中で今月(4月)に印象に残ったのは、世界的に加速しているEVシフトについてです。そしてその中で躍進する中国の新興企業の存在感でした。

18日に開幕した上海国際自動車ショー、26日に国際エネルギー機関(IEA)が公表した電気自動車(EV)に関する年次報告書「Global EV Outlook 2023」、そしてその後報じられた数多くのニュース記事・コラムを通じてなにか大きな変化が起きているかもしれない、と感じた人も多いのではないでしょうか。

世界的に加速しているEVシフト

以下、いくつか印象に残った記事と引用をご紹介します。

IEAが23年のEV販売見通し引き上げ 5台に1台に [4/27 ロイター]

国際エネルギー機関(IEA)は26日公表した電気自動車(EV)に関する年次報告書で、今年世界で販売される自動車の5台に1台程度がEVになるとの見通しを示した。米国でグリーン産業を支援し、EV購入を補助する「インフレ抑制法」が導入されたことなどを考慮し、見通しを引き上げた。
今年の世界のEV販売台数は前年比35%増の1,400万台となり、乗用車市場に占める比率は2020年の4%から18%に上昇する見込み。

[4/27 ロイター]
source:IEA EV Outlook Report 2023

One in five cars sold in 2023 will be electric, says International Energy Agency [4/26 Financial Times]

*世界の電気自動車販売台数の見通しは2030年には世界の販売台数の35%が電気自動車になると予測(1年前の予測値は25%)。この変化の大部分は、昨年導入された政府のEV目標、特に米国のインフレ抑制法の増加によるもの。インドとインドネシアではバッテリーカーの販売台数が3倍に、タイでは2倍に増加し、現在では販売台数の3%以上が電気自動車となっている。

[4/26 Financial Times]
[4/26 Financial Times *2030年は推定値] 
Global EV Production: BYD Surpasses Tesla [4/20 Visual Capitalist]

上海モーターショーで「日本車のガラパゴス化」が鮮明に…! この残酷な現実をトヨタはどう受け止めるのか(近藤 大介氏) [4/25 現代ビジネス]

日本の自動車メーカーが戦慄するようなデータがある。マークラインズの発表によれば、今年第1四半期(1月~3月)の中国市場における新車出荷台数のシェアは、以下の通りだ。
-中国メーカー: シェア53.0% / 前年同期比出荷台数+5.5
-ドイツ系メーカー: シェア19.1% / 前年同期比出荷台数-8.9
-日本系メーカー: シェア15.9% / 前年同期比出荷台数-31.9
-
アメリカ系メーカー: シェア9.4% / 前年同期比出荷台数-8.8

[4/25 現代ビジネス]

躍進する中国の新興企業の存在感

「中国でのEVシフトはすごい」という話は以前から話題になってましたが、先日目にしたThe Economistの記事『How to make it big in Xi Jinping's China(習近平の中国で大成する方法 - 国内で最も価値のあるスタートアップ調査)』によると、習近平氏率いる中国政府の政策的なシフトが起きていることを改めて認識することができました。

エコノミスト誌が調査した過去5年間(2017年と2022年)の比較を眺めると、ユニコーンと呼ばれる時価総額10億ドル以上のスタートアップ企業の顔ぶれに大きな変化があることが伺えます。
かつて中国のスタートアップを牽引したアリババ、テンセント、百度のようなEコマース、フィンテック、エンターテインメント、教育関連のスタートアップは影を潜め、EV、バッテリー等のモビリティ、グリーンエネルギー、半導体、スマート製造、ソフトウェア、AI、バイオテクノロジーに焦点が移っていることが分かります。

4/24 The Economist

中国が外国の技術に依存しないようにするという習近平国家主席の目標に沿ったもので、国家が支援する資金も浸透する中で、ユニコーン企業の拠点地もかつての都市部を中心としたものから内陸部含む地方に広がっているようです。

4/24 The Economist

アメリカの調査会社・シンクタンクであるホロンIQの調査によると、2023年1月2日時点において世界的な気候変動分野のユニコーン企業は83社存在するとのことです。そのうち米国のスタートアップは45社と群を抜いて多いのですが、一方で中国のスタートアップが19社も存在することを改めて確認しました。

Global Climate Tech Unicorns 2023/1/2 Holon IQ

2022 East Asia Climate Tech 100 |2022 10/20 HolonIQ

「中国のEVシフトがすごい!」と言う際、比亜迪(BYD)のみならず、蔚来(NIO)、小鵬(Xpeng)、理想(Li)、哪吒(Neta)、長城(GW)、吉利(Geely)、奇瑞(Chery)……といった振興EVスタートアップの存在も今後は無視できなくなる時代が来るかもしれません。またその背後に控えている蓄電池、風力・太陽光等のグリーンエネルギー関連のスタートアップ等、中国政府が全力で支援しているスタートアップ群、そしてそうした急成長のスタートアップを生み出すエコシステムについても、意識しておいたほうがよいのではないか、そんな気持ちにさせられました。以下は今年1月時点の中国発Climate Tech分野のユニコーンですが、黄色でハイライトした13社はEV、EV充電、モビリティ等の関連企業となります。認識できる企業名はいくつありますでしょうか?。

中国のClimate Tech分野のユニコーン(Holon IQ 2023年1月時点のデータより抽出)

知らず知らずのうちにClimate Tech関連企業は米国、欧州の動向に注目が集まりやすく、中国で起きていることは見落としやすいことを今回改めて感じました。今後はぜひ定点観測的に注目していきたいと思います。EVの普及と併せて蓄電池関連の企業の躍進にも注目しておきたいと思います。

米調査会社ブルームバーグNEFが集計した。市場をけん引するのは、国を挙げて再生エネの導入を進める中国だ。22年には21年比2.3倍となる5.6ギガワットの蓄電池を新たに導入した。全体の34%を占め、地域別で世界最大となった。
日本は全体の2%にとどまる。15年まで各地で実証実験が行われ、世界最大の市場だったが、商用化で出遅れた。日本の再生エネは発電した電気を需要の有無にかかわらず決まった値段で買い取る固定価格買い取り制度(FIT)で普及したため、電気をためる用途で使われる蓄電池の需要が伸びなかった。

4/30 日本経済新聞

cover image: Canva


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