中高年インターンの衝撃。必要なのは「リスキリング庁」
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
本コラムでも度々話題に上げている「リスキリング」。従来までの成長産業がシュリンクし、次なる成長産業に労働移動を促して国全体の生産性を上げていく取り組みです。政府も強力に推進する方針を打ち出しています。岸田首相は、2022年10月3日の所信表明演説で、「人への投資」に5年間で1兆円を投じると表明し大きな話題となりました。
この方針を受けて各省庁もいろいろと知恵を絞って施策を打ち出してきました。以下の厚生労働省の取り組みは想像を超えるもので、私はびっくりしました。
人口カーブ的にボリュームゾーンである中高年のリスキリングは大きな課題です。成長分野のひとつであるデジタル分野への移動を目指す人に、インターシップを含めた雇用機会を創出することはとても理にかなっていると思います。
本施策の詳細なスキームがわからないのですが、どうも企業には派遣社員として有期で雇用してもらい、受け入れ先の指導役には「メンター」費用を負担するということらしいです。OJTなどで手がかかるだろうからお金払うわ、ということなのでしょうか。
国家レベルでのリスキリングの取り組みをいち早く打ち出したシンガポール。そもそも500万人程度の小さい国ですので、資源も人的資本も限られている中で成長するためには「アジアのハブ」となる戦略をとりました。物流の中継地点として、積極的に外国企業を誘致してアジア本社をおいてもらう。そのための専門人材もどんどんきてもらう。このようにして今のような大発展を遂げました。ただ近年では「外国人に職を奪われているのでは?」という世論が大きくなり、移民や労働ビザに対するポリシーを変更して自国民優遇の姿勢をとっています。そして誘致したグローバル企業が求める専門性に合致する人材を国内で育成することで、マッチングをしようとしています。
ということで、リスキリング先進国と言われがちなシンガポールですが、背景や雇用制度が大きく異なるため、日本が参考にできる部分は限られています。
どちらかというと、ドイツやフランスのような解雇規制も厳しく、製造業が中心だった国々のほうが参考になるかもしれません。
ドイツにも日本のハローワークに相当する機関があります。失業者への支援はもちろんのこと、在職中の人にもAIを活用したキャリアカウンセリングを行っています。これには「失業可能性診断」も含まれており、現有スキルや経験からどの成長産業に行くのが良さそうかなどのアドバイスもしてくれます。
フランスは「伴走型リスキリング」に力を入れています。国内のEdTechスタートアップと連携して、毎週専門家との1on1や実践型オンラインコースを受講。最終試験に合格すると学士・修士レベルの学位が取れると共に、6ヶ月以内の就職を保証しています。
重要なのはリスキリングを学びだけに留めない点です。縦割り意識の強い省庁においては、学び直し・仕事等々とそれぞれを縦割りにせず、学び直しから仕事につき、経験を積んでまた学びなおすという社会エコシステムの運営を念頭においてほしいですね。そのためには、官庁・企業・大学などが深く連携することが肝でしょう。デジタル庁やこども家庭庁があるのならば、リスキリング庁をつくり厚生労働省や経産省や文部科学省の枠を超えた仕組みをつくるべきなのかもしれません。
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タイトル画像提供:EKAKI / PIXTA(ピクスタ)
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