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公務員離れは「雇用」ではなく「マネジメント」の問題ではないか?

止まらない学生の公務員離れ

学生をはじめとした若年層が国家公務員を志望しなかったり、早期退職する傾向が止まらないという。23年度に1万8386人だった国家公務員総合職の採用試験の志願者は12年度に比べて27%減少した。採用10年未満の退職者も18年度から3年連続で100人を超えたという。

日本経済新聞の記事では、このような現状を紹介したうえで、解決策として欧米のようなジョブ型の導入を勧めている。国内でうまくいっていない課題に対して、海外の成功事例から学び、取り入れることで解決しようというアプローチだ。
特に、金銭的な報酬よりも、社会貢献を重視する学生が一定数いることをあげ、『仕事の魅力や処遇を民間並みに高めれば、中央官庁に人材を呼び込める可能性はある』と述べている。
しかし、この問題は果たして雇用が原因で起きているのだろうか。

急速に変化するマネジメントのセオリー

「10年ひと昔」という言葉があるが、まさにその通りで10年も経つとマネジメントの常識が大きく変わってもおかしくない時代になっている。今から10年前の2014年だと、男性の育児休業が注目を集めて「イクメン」「イクボス」という言葉が出始めた頃だ。特定の席を決めない「フリーアドレス」やオフィス外でも働ける「テレワーク」、仕事をしながらバケーションも楽しむ「ワーケーション」など、「働き方改革」の動きが本格化し始めたのもこの頃だ。

当時の「働き方改革」は、主に子育て世代の夫婦が育児と仕事の両立ができるように支援しようと、マネジメントの常識を変えようとしていた時期だった。その後、コロナ禍が起きて、「フリーアドレス」「テレワーク」「ワーケーション」は一気に普及することになった。
同時に、クラウドを活用したSaaSが本格的に導入されはじめたのもこの頃だ。マイクロソフトの Office365 が日本国内で一般家庭向けにリリースされたのも2014年である。今や、クラウドを活用したSaaSなしではビジネスが成り立たない人も多いのではないだろうか。

このような時代の変化に合わせて、マネジメントの常識も変わってきた。対面以外でのコミュニケーションや人間関係構築のスキルが求められるようになったり、クラウドを活用することで業務プロセスの生産性も大いに向上した。時短勤務や育休も珍しいものではなくなり、必ずしもオフィスに毎日いなくてはならないという職場も減少している。

そして、若者、特に優れたポテンシャルとバイタリティを持つトップ層の学生はこのような時代の流れに敏感だ。加えて、最近の学生はアルバイトをしない。アルバイトをするくらいならば、大企業やスタートアップ企業で有給インターンシップに努める。つまり、学生時代から社会に出る準備を始めている。
私自身も大企業で働くインターンシップの学生と一緒に働くことがあるが、その優秀さには驚かされる。また、私の会社でも学生に業務委託することがあるが、仕事に対する意識の高さと学習意欲には関心させられる。
今の学生は、時代の流れをよく掴んでいるし、その中で自分の将来をどう切り開いていくのかをイメージできている。

そのような学生に対して、雇用する企業や官公庁といった組織は魅力あるキャリアと職場環境を提示できているだろうか。時代遅れの組織だとみなされてしまうと、当然のことながら、上位層にいる学生から順に見放されていくことになる。また、もし採用できたとしても、数年と経たずに見限られてしまう。

SNSがこれほど普及する前は、どこかに就職すると、ほかの組織での働き方がどうか、キャリアがどうなっているかはブラックボックス化していた。そのため、自分の組織の中のことしかわからず、比較対象は同期や先輩などの組織内の人に留まった。
しかし、SNSが普及し、外部の情報に容易にアクセスできるようになると、自分の所属する組織を客観視することができるようになる。そのとき、他と比べて良い組織だと思ってもらえない組織は人材をリテンションすることが難しい。

これまで優秀な人材が採用できていたのに、時代の流れとともに難しさを感じるようになった組織は雇用を見直す前に、マネジメントを見直すべきだ。そして、時代の変化に合うようアップデートすることが求められる。
ダーウィニズムではないが、それでも時代の変化に適応できない組織は衰退する定めから逃れることは難しい。

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