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企業の会計・財務責任者のみなさん:あなたの会社のネット広告の取引は、大丈夫ですか?

日本では、ネット広告は増えている

 皆さん、最近テレビ・コマーシャルで、覚えているものは何ですか?このような質問は、昭和の時代では、よくある会話で、そしてこの会話は、弾んだものだ。しかし、近年では、質問された側が「えーっと」と、しばらく考え込んだ挙句に、「最近テレビあまり見ないかなら」という返事が返ってくることがある。
 それもそのはずである、私たちは、広告を様々なメディアで触れており、昔なら、「広告=テレビCM」という時代ではなくなったからである。


減らない、ネット広告の事件

 ところで、この急速に成長したネットの広告については、まだ環境整備されていないことがある。それは、ネットの広告の取引だ。

上記に示したこの記事は、昔の記事ではない。2023年5月31日の記事である。ネットの広告では、「クリック水増し詐欺」が、まだ存在している。実は、このことは、企業の宣伝・広告担当者の問題ではなく、企業の会計・財務担当者の問題であると言っても良いだろう。そこで、今回は、会社の取引の透明さを追求する会計・財務担当者にも分かるように、簡単に何が問題なのかを説明したい。

ネット広告には、第3者のチェック機能がない

 テレビの広告の取引と、ネットの広告の取引の大きな違いが、広告の取引に第3者が関与するか、しないかがある。
 テレビ広告の場合は、広告主がテレビ局に広告を発注し、広告がテレビで放映される。そして、テレビの視聴率データや、テレビ広告の放映実績は、第3者に確認することが可能である。ビデオリサーチや、CM総合研究所などが、これら第3者として、データを提供し、テレビ広告の透明さを高める活動を行っている。これらのデータを確認して、広告主は、テレビ局に広告費を支払う。
 インターネットの広告は、広告主が、インターネットの媒体社に広告を発注し、バナー広告やキーワード広告が、媒体社のWebサイトで掲載される。そして、広告配信期間が終わると、媒体社のWebのログデータなどから、配信回数やクリック数の報告を受けて、広告主は、媒体社に広告費を支払う。問題は、この文章中に、「広告主」「媒体社」以外が登場しない。つまり、第3者が登場しない。厳しい見方をすれば、媒体社の提供した、広告配信実績は、正しいのだろうか?別な広告主向けの広告レポートと違っていても、わからないかもしれない。
 この問題を、会計・財務的に考えると、このネット広告の取引は、透明なのだろうか。ミスを防ぐ方法も、悪意のある取引を防ぐ方法も少ないのである。この取引を、このまま放置しておくことは、企業の会計の透明性の視点から問題はないのだろうか?

猫でもネット広告はクリック可能で、悪意のある猫も作れる

 テレビ広告とネット広告の大きな違いのもう一つは、ネット広告の多くの契約が、クリック数に依存した契約であることだ。バナー広告を、1回クリックしたら、x円を、広告主は媒体社に支払うという契約方式が、テレビ広告と異なる。バナー広告の主な目的が、広告主のWebサイトにお客様を誘導することにあるから、このような違いが発生している。
 このクリック課金という方法は、テレビ広告よりも合理的な契約ではあるが、クリック課金にも問題があり、クリックされないバナー広告を媒体社のサイトに置かれると、媒体社の収入がなくなる。
 バナー広告がクリックされるには、いくつかの条件が関係する。

  • バナー広告の置かれているWebページには、多くのお客様が集まる

  • バナー広告自体、クリックしたくなる広告

このように整理すると、バナー広告のクリックのためには、媒体社の責任範囲と、広告主の責任範囲があり、それが上手くマッチすると、クリック数が増える。
 そして、中には良くないことを考えるネットの媒体社も存在し、Webページにお客様がいなければ、自分たちで訪問し、誰も押したくないバナー広告なら、自分たちでクリックしよう、と考える媒体社もいる。
 この事例は、媒体社に悪意のある形で書いたが、同様なことは、広告主でも実行可能なのです。広告主が、意識的にバナー広告をクリックし、一時的に媒体社に、過剰に支払いを実行し、そのお金を、広告主に還流することも、簡単に行える。

商慣習の尊重ではなく、正しいネット広告の取引の確立が必要

 一般に、広告の領域は、商慣習や過去からの経緯で、取引が行われているケースが多い。しかし、

の記事の件は、実在している。仮想の事例ではなく、あなたの会社でも発生している可能性がある。この問題の存在を知っていながら、会社のネット広告の取引をそのまま放置することは、もはや問題である。会社の会計の基準に照らしたときに、ネット広告の取引は問題がないのか調査する。そして問題があれば、どのようにすべきか。この課題は、実は会社の会計・財務の仕事としては、待ったなしなのだ。
 これから、もっとネット広告費は増えるだろう。そのためにも、透明性があり、会計監査がきちんと行える、ネット広告取引の手法を手法を確立することが重要だろう。

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本間 充 マーケティングサイエンスラボ所長/アビームコンサルティング顧問
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