3月22日 東日本 電力不足の恐れ
22日、関東でまた強い寒の戻りが予想されています。
そうなるとまた東日本の電力需給ひっ迫が懸念されます。先日(3月18日)の突然の節電のお願いの反省もあってか、東京電力のHPには既に節電のお願いが掲載されています。ただ、まだメディアなどに取り上げられていないので、今からお伝えしたいと思います。(メディアはこういうネタこそ早めに報じるべきではないかと思うのですが。。)
連休明けの平日ということで、工場のラインの立ち上げや冷え切ったオフィスの暖房などで電力需要は急増することが予想されます。気温が1℃低下すると、100万kW、すなわち大型の火力あるいは原子力発電所1基分くらい電力需要が増加します。寒さがどこまで厳しくなるかで需給のひっ迫度が大きく変動します。
たいていの場合、寒い=お日様が出ない、です。東電管内には既に16GW(1600万kW)の太陽光発電設備が導入されていますので、晴れればその発電量はかなりの戦力になります(東電管内の電力需要はだいたい冬は最大で5000万kWくらい)が、曇りあるいは雨や雪だとそれが戦力外になってしまいます。再エネ大量導入時代には、再エネがどれくらい発電してくれるかの予想精度がカギなのですが、発電量の予想は基本的には天気予報です。メガソーラーだと、同じ発電所の中でもパネルの場所によって雲がかかっているか否かも変わるというくらいで、予想精度を高めることにも限界があります。
そうなると、再エネの発電がどうであろうと調整できる電源が必要ですが、「調整役に回される=恒常的には稼げない」ということなので、そうした設備は自由化の下では廃止されていきます。政府の委員会で経済学の先生が「総括原価の下で投資して作った発電所を勝手に廃止するのがいけない」みたいなことを仰ってますが、稼働率が低ければ会計的に減損圧力がかかるわけで、当然の帰結。そもそも、自由化して電気代が下がる大きな要因は、安定供給に必要な余剰を削ることによって生まれることにあり、規制の下でメタボになった事業を、競争によってスリム化する、すなわち、停電を避けるための余裕を削ることにより生み出される効率性が大きいわけで、仰ってること意味不明。
こうした発電設備が足りない事態に備えて「電気を貯めとけよ」と仰る向きもあるでしょう。大量に蓄電池が導入されればそれも可能ですが、いま唯一大量に電気を貯められるのは「揚水発電」という上下2つの池を使う発電方式です。発電に余裕がある時間帯に、下の池から上の池に水を揚げておいて、電気が足りない時間に水を落として発電します。水を揚げるのにエネルギーを食ってしまうので、3割ぐらいエネルギーをロスしてしまう技術ですが、「同時同量」のタイミングが命の電力供給に必要な大きな蓄電池だと思ってください。
東電は多分今日のうちに上の池を満水にしておくと思いますが、それを22日に使い切ってしまった場合、その後数日がきつくなります。いま東電管内では一日で約7000万kWhくらいの発電ができる揚水発電の能力があるのですが、それを使い切ってしまった場合、夜中(22時から翌朝5時の7時間)までの電力需要の低い時間帯に上の池に水を揚げておこうとすると、約1400万kWの余剰発電能力が必要になります。そもそも自由化で余裕を削り、しかも地震で多くの発電所が停止してベース電源が減ってしまっている今、そんな余力はとてもありません。ちなみにこれまで日本でここまで大量の太陽光発電を急速に導入してもなんとか系統運用がうまくいってきたのは、原子力発電所の電気を夜に貯めて日中に使おうと揚水発電が建設されていたためです。(そういえば、揚水発電のコストを原子力発電のコストとしてカウントすべきだと言ってた会計の先生がいましたが、その人がいま揚水発電のコストを太陽光のコストにすべきと言っているのを聞いたことが無い。)
地震で多くの発電所が停止している状態では、夜中の需要低下時間帯でもそれほどの余力は期待しづらく、翌日に備えた蓄電をしながら、夜中の供給をするのはキツイ・・ということです。桜も咲いた後のこんな冷え込みが早く過ぎ去ってくれることを祈りつつ、万が一の事態に備えて、早めにお伝えさせて頂きました。
当然現場は、デマンドレスポンスといってこういう需給ひっ迫時には工場の稼働を止めていただけるようなお客さまへのお願いや、自家発電設備を持つ事業者さんにその活用をお願いするなど取れる手は尽くしています。
「明日洗濯しようかな」と思っている方などはできれば今日のうちに済ませていただけるとありがたいなと・・。ささやかですが集まれば大きくなります。
ついでに申し上げちゃいますが、政府の審議会の資料をみると、こうした需給ひっ迫は来年の冬も予想されています。また、今回の地震で損傷した発電設備の復旧が、電気の消費が増える夏に間に合うのかも心配です。日本の自由化、関係者は猛省すべきだと声を大にして言いたい。
日経も報じましたね。