ポジショニングはなぜ大切か、人間理解の視点で考えてみる
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ポジショニングはなぜ大切か、人間理解の視点で考えてみる

学部での講義や、市中のセミナーなどでマーケティングを学ぶと、まずは4P、3C、STPといった概念から入るのではないかと思います。新しいメディアやデジタルの手法が台頭し、いわばHowの部分は日々アップデートされるマーケティングですが、この種の概念は、依然重要な根幹として位置付けられています。

筆者は先日、そんな学びの最中にある若いマーケターから「なぜポジショニングは大事なのか?」という質問を受けました。

ポジショニングがなぜ大事か?

ポジショニングが大事であることは、筆者にとって自明というか、前提であり、改めてそれがなぜか、ということを考えたことがなかったのですが、彼の質問に答えるべく以下のように考えました。

(1)人間はメンタルモデル(=名前の意味を通じて物事)を通じて物事を認識する

私が家で飼っているレオナルドや、ペットショップにいるシャムや、道端の黒づくめ。これらの髭があり四つ足で歩きにゃーとなく動物のイメージをひっくるめてネコという名前が与えられています。

リアルに生きている彼らの中に、いろいろな共通点や属性が見出され、それらイメージの集合がネコとという言葉の意味=メンタルモデルになります。

一旦ネコという言葉という言葉が成立すると、そのメンタルモデルは拡張・変化します。例えば、サザエさんのタマや、私の夢に時折出てくる三毛猫は実在の猫ではありませんが、ネコという言葉が指し示す対象となり、これらの出現によりネコのメンタルモデルは実在の猫の特徴や属性の枠を飛び出します。

さらにゴーイングマイウェイな気分屋さんを指して「ネコみたいな人」などという話法もあります。これはネコのメンタルモデルがネコという種の枠も飛び出て、さらに多様なイメージ・意味を帯びた、ということです。

このように考えると(1)イメージの集合としての言葉(2)それに与えらえた名前(3)メンタルモデル=その意味、は3点セットになって、人が物事を認識するときの大切なフレームワークになっています。そして上に述べたように、メンタルモデルは拡張して変化し得ます。

(2)人間は恣意的に定めた参照点を基準に、相対的に意思決定する


最後通牒ゲームをご存知でしょうか?
これは3人で行うゲームで
・AさんがBさんに1万円預ける
・Bさんはその1万円をCさんと分配できる
・Bさんは分配割合を提案し、それをCさんが承諾したら分配が成立する
・承諾しない場合は、1万円をAさんに返さなければならない
・提案できるチャンスは1度のみ
と言うルールです。
このゲームには論理的な正解があるのですが、皆さん、わかりますか?

答えは
Bさん:9999円
Cさん:1円
と言うものです。なぜならば、Cさんは承諾しなければゼロ円になるところ、Yesと言うだけで1円手に入るので、断る理由がない、と言うものです。

・・・そう言われれば筋は通っているのですが、一方でもし自分がCさんであれば、この提案は拒否しますよね。筆者でもそうします。

拒否という判断の理由は、Cさんが現状のゼロ円ではなく、Bさんが獲得する9999円を参照点としているからです。
不公平な分配を受け入れるくらいであれば、利得を失っても拒否した方がまし、ということですね。

これはすなわち、論理的には

・現状(=ゼロ円)を参照点として、現状の自分と一円もらった自分を比較すべき

でるところ、

・恣意的に相手の取り分(=9999円)を参照点として、一円もらった自分と9999円もらった相手を比較してしまっている

ということ。人間の選好は相対的に決められるのです。

さて、上に述べた(1)メンタルモデルを通じて物事を認識する(2)何かを選ぶときには恣意的に基準設定・恣意的な比較対象を設定してしまう、という2つの人間理解に基づいて、ポジショニングを考えてみましょう。

筆者はドミノピザでマーケティングを担当していたことがありました。ドミノがどんなポジショニングをとり得るか、ということを考えてみると

(1)自社をデリバリーピザと定義し、ピザーラ・ピザハットなどを主要競合と設定し、個性的なメニューやデリバリー速度を差別性に勝負する

(2)自社をピザにとどまらないデリバリーフードサービスと定義し、全ての宅配フードサービス主要競合と設定し、出来立ての味と満腹感を差別性に勝負する

(3)自社をアメリカンフードサービスと位置づけ、ファーストフードを主要競合と設定し、本格的な味わいを差別性に勝負する

(4)自社を便利なフードサービスと位置づけ、コンビニを主要競合と設定し、出来立て商品の本格的な味わいを差別性に勝負する

などの選択肢があります。これら各選択肢で太字でマークアップしてある2箇所のうち、初めの方が、どのようなメンタルモデルで勝負するか、後の方がそのために強調していくイメージ(=差別性)である、ということになります。

人は恣意的に参照点を決めるので、何と比べるのか、何を基準に比べるのか、は十分な理由ときちんと設計されたコミュニケーションがあれば、そのようなメンタルモデルを消費者に持ってもらえる(=認知変容してもらえる)可能性はあります。あとは、その市場性、現状からのジャンプ幅(=認知変容の難易度)に応じて、選択肢を選んでいく、という次第。

つまりポジショニングは、恣意的に判断する・メンタルモデルで認識するという人間の性質に基づいて組み立てられている考え方である、ということです。

質問してくれた若者は、この説明でどうやら納得してくれたようでした。

みなさんはいかがでしょう?多少理屈っぽいですが、このように考えると、ポジショニングの大切さが改めて腹落ちしないでしょうか?

上の文章は、人間の性質をベースに、ポジショニングの大切さを繙いてみたものですが、人間理解は、かようにマーケティングのWhyの解明に役に立つと思います。

自分自身の探究という意味でも、消費者理解という意味でも、自分が携わるマーケティングに命を吹き込みたいという願望からも、筆者は人間理解に取り組み続け行かなければならない、と考えます。

読者の皆さんはいかがでしょうか?


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富永朋信(プロフェッショナルマーケター・「幸せをつかむ戦略」著者)
9つの事業会社でマーケティングやってきました。うち、西友、ドミノ・ピザなど4社でCMO。現在は株式会社Preferred Networksの執行役員CMO、イトーヨーカ堂・セルム顧問、日経XTrendアドバイザリーボード、厚生労働省年金局広報検討委員、内閣政府広報アドバイザー等。