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感動するモノはつくり手の気配を纏う

2022年はたくさんの感動するものづくりの現場を訪れた年でした。22年最後のnoteは、これまでの経験から感動するモノがなぜ感動するのかを考えてみたいと思います。

原風景が見えるものづくり

モノに触れたり、何かを食べたり飲んだりしたときに、言葉にできない程の感動した経験ってないでしょうか。
「うわーこれマジやばい。。。」的な感じです。

個人的にそういう経験が人生の中で何度かあります。決してそのモノ自体のことを詳しく知っていたり、背景やストーリーを深く理解しているわけでなくてもなんとも形容しがたい感覚や感情に襲われる瞬間です。

個人的にそういったモノに触れたり、食べたり飲んだりしたときにそのものづくりをしている原風景が見える気がします

もちろん妄想です(笑)

それがあっているかどうかはさておき、そんなモノとの出会いは確実に自分の人生を豊かにしてくれる出会いだと思います。

そういう原風景を感じるものに出会ったときに感動をする経験を何度も出来る事は最高に幸せなんだと思います。

Minimalのチョコレートも誰かにそんな感動をするモノになれるように創業から8年間1歩1歩努力しています。

新政酒造を訪ね秋田へ

秋田県秋田市にある新政酒造の建物

初めて飲んだ時に感動した日本酒があります。それは秋田で日本酒を醸し170年の歴史をもつ新政酒造

新政酒造と佐藤さんとは、最初のカルティエのイベントコラボから今年で5年ほどのお付き合いになりますが、新政と佐藤さんを知れば知るほどその奥深さに引き込まれます。

國酒日本酒は日本が世界に誇る伝統文化の粋であり、コンテンツ。その歴史を継承し、進化させていくという考えが根底にあるからこそ、他からみるとおよそクレイジーな事でも当たり前にできてしまう、そしてそれを成り立たせてしまう凄みあります。

新政のお酒を飲むと言うことは、歴史と伝統と風土と革新を飲んでいることだと思えてしまうのは本当に格好がいいです。

以下記憶に残った代表的な取り組みを。

・秋田内の鵜養という地域に酒米の栽培から自社で取り組む
→その地域一帯の農家と話し、地域に根ざしながら、自社栽培でつくっています。その場所に訪れ、空気に触れると、その地域の歴史共になんとも言えない神聖な気持ちになります。あの地の空気に触れるとお酒がさらに格別になります。

秋田県内で新政酒造が米をつくる鵜養

・日本の発酵文化のために自社で木桶工房をつくる
→新政はもう間もなく全量木桶で生酛づくりになるそうです。自社で木桶がメンテナンス出来たり、作れたりしますが、そもそもあと少しで新政自体は木桶は作る必要がなくなるそうですが、大阪に一人しか木桶職人がいない現状で、日本の発酵文化全体のために木桶が作れなくなるのは良くないため、自社のスタッフを派遣してその技術を受け継いだそうです。自社もそうですが、発酵文化全体という視点でそれをやれてしまうのが、悔しいほど格好がいい。

圧巻の新政酒造の木桶

・全量生酛造りにする意味と革新
→言わずもがな新政のお酒はすべて生酛造り。歴史と文化という意味で全て人の手に戻すという行為そのものに美意識があり、しかし、そのプロセス全てに美味しいお酒を造るための合理性と知恵と経験の裏打ちがありました。そして、その中で佐藤さんの視点で革新性が加えられて今の新政のラインナップが成立していると理解できました。

新政酒造:せいろで米蒸す

印象的な言葉としては、
「今の新政のラインナップの原形は、2008年にはほぼほぼ決まっていた」という事。

佐藤さんが蔵に戻った一年後、そして今から15年くらい前に今見ても革新的なお酒たちが生まれていたのか。15年繰り返してあの狂気的で熱狂的なファンがいるのか。など、色々腑に落ちました。世の中には本当にクレイジーな人達がいるなと思える有意義な時間でした。

偉そうに書きましたが、佐藤さんも新政の皆さんも決してそれを声高に言うわけではありません。

日本酒そのものにそのつくり手達の美意識や哲学が投影されて、飲む人にその気配を伝えていると思います。

そういう人達と同じ目線で話をし、考えを伝えられるようにもっともっと精進しないといけないなと大変勉強になりました。

大和桜酒造を訪ね鹿児島へ

訪問した日の桜島

もう一つ僕が22年に感動したお酒があります。
それは鹿児島で焼酎を醸す大和桜酒造
新政酒造と同じく嘉永年間(1848~1854年)に創業で約170年間の歴史を持っている焼酎蔵です。

鹿児島のいちき串木野市に蔵を構えており、鹿児島に約120ほどある蔵の中で下から3番目に小さな蔵とのことでした。

新政酒造と同じくMinimal で取り扱いさせてもらっている焼酎で、22年12月に蔵に訪問させて頂きました。

Minimalではチョコレートやガトーショコラに合うお酒をセレクトしています。大和桜は22年10月から取り扱いを始めさせてもらいました。

それまで大和桜との縁は全く無い中で、ラインナップに焼酎を探すために本当に色々な焼酎を飲む中で、大和桜を飲んだ時にまさに「原風景が見える」体験をし、その味わいに感動しました

焼酎を扱うなら、ぜひ大和桜を扱いたいと思い、大和桜酒造の鉄幹さんを新政酒造の佐藤さんに紹介してもらったところから縁が始まりました。

大和桜の鉄幹さん(真ん中)とMinimal代々木上原店長(左)と

大和桜の芋焼酎を飲んだ時に「なんて、洗練されてキレイなのに複雑なんだ」と驚きました。
それを訪問時に鉄幹さんに伝えたところまさにそういう焼酎を目指していると仰っていたことがとても感動しました。

以下記憶に残った代表的な取り組みを。

・すべて手仕事。71の甕仕込みの大和桜
→大和桜は芋を洗うことはもちろん、麹も自ら手仕事で造り、そして、土中に埋めた甕で焼酎を醸していました。蔵の中にある甕を人生で初めてみましたが、71ある甕が並んだ姿は圧巻でした。甕を地中に埋めているのは、地熱が25度ほどであり、一番快適な温度であるという昔ながらの知恵でした。そして、シングルディスティル(単式蒸留)という芋焼酎の代名詞という方法で蒸留します。その工程の説明で、「スピリッツといわれるように、まさにつくり手の気質が酒質にでる」と仰った言葉に納得しました。

大和桜酒造の圧巻の甕

・5代目鉄幹さん自ら毎日6時から3時間芋を洗う
→芋焼酎は芋を一度だけしか洗わない。その工程を当主自ら必ずやってらっしゃいました。10月~12月の焼酎を仕込む時期に毎朝3時間欠かさず行っていらっしゃるそうでした。語弊を恐れず言うとそれに合理的な意味は無いが、当主がすべての芋にさわり、芋の状態を見ることに意味があり、そこに気配が宿るということだと思いました。その姿を実際に見てなんと言えない身震いしました。

毎朝欠かさず自ら芋を洗う5代目鉄幹さん

・米が育たない鹿児島で日本の土地を使った醸造酒のような蒸留酒
→鹿児島で芋焼酎が盛んになった背景に、米が育ちにくいと言うことがありました。そのため、芋を原料にしてお酒をつくれないかとできたのが芋焼酎。糖化酵素がない芋を原料にするためにまるで日本酒をつくるように醸したの蒸留酒が焼酎であり、それは土地そのものを醸した日本を代表する飲み物であると教えてもらいました。だからこそ面白いし、意味があると考えて焼酎つくりに想いを込めていることが言葉の節々から理解できました。

大和桜の紅芋に使われる品種の紅さつま

印象的な言葉としては、
「Passion is not Fashion」
という言葉でした。
ものづくりの情熱は、誰かに見せるためのものでも、誰かが見ている時に格好をつけるためでなく、ただそこに向き合い、良いモノをつくりたいという、内から来るものであるという大和桜のものづくりを表している言葉でした。

一口飲んで感じた感動が腑に落ちた時間でした。

気配を纏うものづくりを目指して~新政酒造とのコラボチョコレート

限定発売:生チョコレート -新政酒造 陽乃鳥-

最後に原風景が見えるものづくりに近づけるのように22年Minimalの挑戦を紹介させて下さい。

それは今2022年12月末~まさに発売している新政酒造さんとのコラボ生チョコレートです。(限定数なので売り切れていたらすみません。)

初めて飲んだ時に感動した日本酒を造っている新政酒造。
そんな新政さんと日本酒とチョコレートのコラボレーション商品を2021年から年一回限りでつくらせてもらっています。

その3回目となる今回は、22年10月に新政酒造さんが日本酒を醸している秋田現地に行き、僕自身が白麹つくりに参加させてもらいました。

そして、そこで仕込んだ白麹から作った糖化液と、新政酒造の貴醸酒「陽乃鳥」を使った生チョコレートが上記の商品です。

これは多くの人が想像する生チョコとは全く別物な、面白いものになったと思います。
少しだけ解説すると、今回の生チョコは2層になっています。

2層の生チョコレート

▼上層は、「カカオパルプ(カカオの果肉」と「白麹甘酒の糖化液」を使ったパート・ド・フリュイ。
今回僕とMinimalパティシエが秋田にお邪魔して実際の白麹つくりから参加して、新政酒造の蔵人の方から「白麹甘酒の糖化液」の作り方を教えて頂き、Minimalの工房で自分達の手で仕込みました。通常白麹は焼酎で使われることが多く、クエン酸系の酸味が特徴です。この「白麹甘酒の糖化液」はとても甘酸っく、カカオの果肉のパルプの酸味と相性がよく、パート・ド・フリュイは食感と酸味が強く感じられます。

▼下層は、「タンザニア産チョコレート」と「陽乃鳥」を使った日本酒生チョコレート。
日本酒を仕込む際の仕込み水の一部をお酒に置き換える貴醸酒は酒で酒を仕込んだお酒。新政「陽乃鳥」は、甘みと酸味のバランスが素晴らしい大好きな日本酒。ここに、チョコレート感とリンゴ酸系の果実味をもつタンザニアのチョコレートを合わせることで、甘みを強調しながらも、上部のパート・ド・フリュイの酸味を受け止める土台ができました。

2層を一緒に食べると、まずパート・ド・フリュイの食感があり、そこから溶けていくチョコレートと合わさって、酸味・甘みそして日本酒感が順に口の中に広がって、未体験の複雑で楽しい移り変わりを体験できます。

そして、このような構成になった背景には、意味があって、世の中にない新しいものづくりをするという姿勢を大事にしようと新政の佐藤さんと話をしたことがあります。

▼背景にある設計思想
チョコレートと日本酒の共通である「発酵プロセスによって特徴的なフレーバーが生まれる」というプロセス全体を体現する商品を目指しました。上層の「カカオパルプ」と「白麹甘酒の糖化液」は発酵のモトです。普段は発酵プロセスで見えなくってしまうモノを商品として表現しました。そして、下層は発酵プロセスの結果としてできあがるチョコレートと日本酒を合わせ、上下をもって、チョコと日本酒両者の発酵プロセスを見える化して、食べてもらうという、とんでもなくクレイジーな生チョコレートなのです。

発酵プロセスをまるごと食べる生チョコレート

こんな構成で、チョコレート職人が白麹から糖化液をつくり、作った生チョコレートは世界初ではないかと推測します。

感動するものづくりの道のりはまだまだ果てしなく長いものですが、一つ一つ進んでいくプロセスにわくわく感や驚き、学びがあるモノだと思えた生チョコレートとなりました。ぜひお手にとって見て下さい。

つくり手の気配や佇まいを一緒に味わっている

ものづくりを志して、一番の夢は、「原風景がみえるチョコレート」をつくり、誰かに感動を与えることです。

新政酒造や大和桜酒造にいき、なぜ僕がそれぞれのお酒を飲んで感動したのかを直感的に理解できた気がします。

人を感動させるモノの裏には、それをつくった人がいて、そのつくり手の気配や佇まいを纏っていると思います。

そして、味わう人は、その気配や佇まいを感じるからこそ感動するのでないでしょうか。

大量生産の時代を経た今の時代だからこそ、手仕事でつくり手の気配を纏った本物が人に感動を与えます

僕たちMinimalもそんな気配を纏えるものづくりをこれからも追求していきたいと思った2022年年末でした。

※Minimalのチョコレート&SNS

コラボ生チョコレートは以下からぜひ。限定なので売り切れたらすみません。

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最後までお読み頂きましてありがとうございます。このnoteは私がブランド経営やモノづくりを行う中で悩み失敗した中からのリアルな学びです。何かお役に立てたら嬉しいです。良い気づきや学びがあれば投げ銭的にサポートして頂ければ喜びます、全てMinimalの活動に使いたいと思います^_^