人のふり見て我がふり直せ

EUでは、域内で事業展開するアパレル事業者に売れ残った服や靴などの衣料品を破棄するのを禁じる法案に大筋合意し、2年後から施行することが決まった。さすがルールメイキングの得意な欧州、という感じだ。極めて正しい。地球環境のためのみならず、そもそも新品のものを破棄するのは無駄だしもったいないのは確かだからだ。

こうした動きは世界中に何らかの影響を与えることになる。欧州での事業展開がない場合でも、アパレル事業者から見れば、リサイクルに目が行かないはずがない。

但し当たり前のことだが、リサイクルのためには回収する仕組みが必要だ。回収して分別し、素材ごとに粒子レベルまで粉砕・分解し、新しい商品に仕立てて行くには、賢い工夫のみならず、欧州で行うようなルール(規制やペナルティを含む)か、あるいは価格による調整しかあるまい。価格による調整とは、リサイクル材とバージン材を比較したときに、バージン材を買うことが明らかに高いか、リサイクル材が明らかに安いか、となる仕組みづくりによってもたらされる。現状はリサイクル材にはリサイクルのためのコストが上乗せされるわけで、普通にいけばリサイクル材の価格が高くなってしまう状況にある。これでは消費者はリサイクル材を選好できない。

欧州のようなルールが有効か。ルールの設定についても遵守した企業は税優遇があるなど補助を出すのか、遵守しない企業にはペナルティを与えるのか、も工夫が必要だ。そもそも、ルールではなく、コストをかけてでも環境配慮やリサイクルなどの観点で良いものを作った場合に得になる仕組みを作るべきか。そこもどうするか。

翻って日本は。欧州の決断を前に日本も立ち位置を含めて考えを整理する必要がある。日本はもとより着物文化が根付いており、着物は“仕立て直し”ができるリサイクルに平仄が合う文化であったはずだ。着物が主役の座を降りたのと同様、日本ではリサイクルの発想も主役を降りた感があるが、DNAはあるのかもしれない。リサイクルをいかに収益に結びつけるか、いかにリサイクルを根付かせるか。日本企業もさることながら、日本政府が真剣に考える時である。

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