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低炭素社会への移行計画は上手く行くか

欧州委員会は温室効果ガス排出量削減目標を満たすためのEUの政策として、EU域内排出量取引制度ETSの対象業種を現在よりも拡大し、さらに環境規制の緩い国からの輸入品に対して高い国境炭素税を課すことも視野に入れた案を発表した。

EUは2030年までに温室効果ガス排出量を18億トン削減する目標を掲げ、その達成に法的拘束力を持たせた。もっとも、目標を達成するまでの過程ではEU加盟各国の抵抗にあう可能性が高く、最終的な政策提案が骨抜きにされる可能性がないではないが、再生可能エネルギー開発を促進することが最終的にEU全体の合意を可能にするものと期待される。

EUの炭素国境調整メカニズムはその導入を阻止しようとする動きがもちろんあるだろうが、それを意識し、メカニズムの対象は鉄鋼、セメント、電力、肥料に限定し、当初は排出枠を利用して温室効果ガス排出量格差を相殺することも認められる公算が大きい。ソフトな形での導入となることで、日本を含めた貿易相手国からの一方的阻止を緩和させる可能性もある。

また、EU域内排出量取引制度も拡張される。生産者とサプライヤーが拡張のターゲットになるが、最終的には消費者に転嫁される可能性も残される。

低炭素社会への移行をうまく行えるかどうか。どの国、地域でもこの問題をどうファイナンスしていくかを考える必要があるが、EUでは化石燃料の生産および供給コストを押し上げる形で調整を進める。エネルギーと暖房という二つに軸足を置き、Fit for 55計画を策定した。この二つのセクターはEUの温室効果ガス合計排出量の75%前後を占めていることから、目標達成への道筋を強める。こうした計画は温室効果ガス排出量が大きいセクターに課税し、税収を利用して新たな低炭素技術に投資するものである。いわばエネルギー貧困のリスクが高い層に対して支援を提供するためのものである。気候変動対策基金は移行コストの影響を特に強く受ける低所得の家計支援を目的としたものであり、配慮を欠いていない。

2024年6月までには、国家エネルギー気候計画NECPに則った気候変動計画を欧州加盟国が委員会に正式に提出することになっている。また、気候変動対策基金からの支出は2025年には開始し、32年には終えることにもなっているなど、計画的でもある。こうした計画を横目に、他国もうかうかしていられないことだけは確かなのではないか。

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