混迷するイタリア政治
ドラギ政権が次回予定される選挙まで任期を全うすると想定していたが、首相の辞意を受け、前倒し総選挙が決まった。イタリアはドイツ程でないにせよ、ロシアからのエネルギー供給を受けられずにインフレ圧力が増し、景気の先行きにも懸念が浮上しているのである。そんな中でイタリア政治は流動的となっている。
ドラギ政権は20日の信任投票で形式上、過半数を確保したが、連立政党を含む主要政党(五つ星運動、同盟、フォルツァ・イタリア)が投票を棄権したため、収拾不能な状況に陥り、政権は事実上、崩壊した。ドラギ首相が21日に辞表を提出したことを受け、マッタレッラ大統領は上下両院を解散する大統領令に署名した。政府は9月25日に前倒し総選挙を実施することを決定。
議会解散から選挙までは通常、2カ月程度が必要とされ、地元メディアは投票日として10月2日との観測も伝えていたが、それよりも更に前倒し、ということになった。
現在、世論調査では右派がリードしている。今から投票日までの間、状況は大いに変化する可能性もあり、各政党が選挙を前にいかなる合意を試みるかも、依然として不透明だ。例えば、中道政党が連合を結成することもあり得るし、民主党が五つ星運動と手を組むかも知れないなど、判然としない。
イタリアの政治的な不透明感は、ECB会合にも難題を突き付けた。ECBにとり特異な政治的問題に起因するスプレッドの拡大を抑えるのはますます難しくなるだけに、政治的な不透明感は、様々なツールの発動を含め、より複雑なものにする。加えて、条件面など一部の要素に関するコンセンサスがまだなければ、昨今の展開を受け、その形成は一段と困難になるかもしれない。
前倒し選挙を経て新政権が発足するまで、ドラギ氏は暫定政権を率いる。この間、暫定政権は財政政策を通じた景気の下支えが十分できず、年後半の成長にリスクが及ぶ可能性もある。イタリアの政情の新たな不安定化を受け、財政ルールの改革といった欧州全体の取り組みや、統合深化の進展は一層難しくなることも考えられる。
最終的にはイタリアのデフォルトリスクにはならないため、ワイド化したイタリア国債は投資妙味になる、可能性は大きいが、当面のリスクの増大には注意が必要だ。