産業競争力強化法で税制優遇
岸田文雄首相の基調演説要旨 OECD閣僚理事会 - 日本経済新聞 (nikkei.com)
日本でも産業政策の国際競争に勝ち抜くべく「新たな事業の創出及び産業への投資を促進するための産業競争力強化法等の一部を改正する法律案」の審議が進んでいることは注目に値します。
法律の概要としては、「戦略的国内投資の拡大に向けた戦略分野への投資や生産に対する大規模で長期の税制措置や研究開発拠点としての立地競争力を強化する税制措置」と「国内投資拡大につながるイノベーションや新陳代謝の促進に向けた中堅企業やスタートアップへの集中支援措置」の2本柱となっています。
まず「戦略的国内投資の拡大」では、内外市場獲得が特に求められる商品の生産販売計画を主務大臣が認定すれば、その生産販売量に応じて税額優遇措置が受けられたり、政府が事業活動における知的財産等の活用状況を調査し一定の知財を用いていることが確認されれば、イノベーション拠点税制の優遇を受けられたりすることができます。
また「国内投資拡大に繋がるイノベーション及び新陳代謝促進」では、(1)中堅企業関連、(2)スタートアップ関連、(3)企業横断的な取り組み、といった3項目に分かれ、「中堅企業者」については、成長につながる事業再編やグループ化に対する税制優遇や設備投資減税の拡充。スタートアップ支援では、①産業革新投資機構(JIC)の有価証券等処分期限を2033年度末から2049年度末に延長、②ディープテック(社会課題の解決に向けて必要な先端技術)スタートアップの事業開発活動(商用の設備投資等)を補助、③LPS(投資事業有限責任組合)へ暗号資産を追加し、暗号資産への投資によるWeb3.0スタートアップへの資金供給を可能とする、④スタートアップがストックオプションを柔軟かつ機動的に発行できる仕組みの整備、の主に4つで構成されています。
そして企業横断的な取り組みの支援では、産学連携研究開発に関する標準化と知財を活用した市場創出計画を認定し、INPIT(工業所有権情報・研修館)・NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が助言するなどの措置が盛り込まれています。
33年ぶりの高水準の春闘賃上げや32年ぶりの国内設備投資額という潮目の変化が起きている中で、賃上げと経済活性化を伴う良いインフレを定着させるためには、国内投資により供給力を強化し、日本経済を成長軌道に乗せていくことが不可欠です。
そのためにはこうした戦略的投資の拡大と、国内投資拡大につながるイノベーションや新陳代謝の促進に向けた取り組みが重要といえるでしょう。