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欧州が強く進める環境対策

もしトラが現実になった場合、恐らくかなりの確度で米国はパリ協定から再び脱退していく公算が大きいのであろう。そうした動きを捉えてか、23年10月から12月、世界のESGファンドから四半期で初の純資金流出となったと言えるのではないか。

しかし、欧州は突き進む。私見では欧州のまとまりや統合のためには、すでにグリーンが欠かせないものになっているからで、逆に言えば、これなしには欧州のまとまりや統合には向かえないということではないか。欧州にはエネルギーポートフォリオの問題もあり、戦争が近くで行われているという問題もある。環境問題に活路を見出し、世界のリーダーとして経済成長分野に貢献させたいと考えるのは自然な流れである。

欧州議会は企業持続可能性デューデリジェンス指令CSDDD案を採択。企業とその上流・下流のパートナーに対し(供給、生産、流通のパートナーを含む)、人権・環境に及ぼす悪影響の防止、停止、軽減を義務付けるものである。これに合わせ、企業は移行計画を導入し、自社のビジネスモデルをパリ協定に合わせる必要がある。仮にデューデリジェンス義務違反で生じた損害があれば、それに対して責任を負うことが義務付けられる。被害者に完全補償をしなければならないし、指令不履行の場合には全世界純売上高の最大5%の罰金を科される可能性もあるという厳しさ、である。まだ正式に承認されるには時間が必要だが、徹底した目標を設定することになることは間違いなさそうだ。

アメリカが現実的な判断に基づいた投資をし、欧州は理念に基づいた投資をし続ける場合、金融市場はどう受け止めるべきか。いくつかの個別投資の場合には、あるいはアメリカの判断が正しいことになってしまう可能性が大きいが、地球が陥っている問題を冷静に考えるならば、政治や選挙、票やマネーの動きに揺らがせることなく、ESG関連のビジネス投資が進み、ファンドを含めたESG投資も進む必要があることは明らかであろう。日本は個別国の動きに振り回されることなく、まずはGX投資が進むとともに、粛々とESG投資が累積していくことが待たれる。

べき論でいえば、ESG投資は政争の具であってはならない、のである。

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