プロジェクトマネジメントは「おまけ」ではない
プロジェクトマネジメントという仕事に、どんな印象をお持ちだろうか?会議の設定をしたり、期日までに各チームの成果物の提出を確かめたりする、いわば「高級雑用係」というイメージの読者も多いだろう。受け身で定型業務が多く「楽そうだね」という印象さえあるかもしれない。
しかし、コンサルタントとして大規模なプロジェクトに関わると、プロジェクトマネジメントは実に本質的な役割であり、その巧拙がプロジェクトの成否を左右することを実感する。
まず、プロジェクトマネジャーは、プロジェクトの基礎をつかさどる。誰がどんな役割を担い、どんな手順で物事が進むといった基本ルールを作り常に周知徹底する役割がある。プロジェクトが複雑であればあるほど、この基礎がゆらぐと手戻りが頻出し、メンバーがお互いに疑心暗鬼になって、全体の生産性はダダ下がりという結末を迎える。果たして、このようなプロジェクトにご経験はないだろうか?
さらに、プロジェクトマネジャーはバイアスをできるだけ排した審判として、チーム間の調整を図り、それぞれの負う成果に対して説明責任を求める立場にある。この役割が機能していないと、何か問題が起こったときに、リーダーは責任の所在さえ分からないという事態に陥ってしまう。特にフリーランスや外部パートナーなど指揮命令系統の違うメンバーが混在する大型プロジェクトでは、審判の果たす役割は非常に大きい。
このような期待値を鑑みると、プロジェクトマネジメントは決して軽視されるべきではなく、高いコミュニケーション能力と判断力が求められる仕事であることが分かる。ところが、プロジェクトマネジメントに対する誤った過小評価に基づいて、ジュニア過ぎる人材があてがわれたり、本人や周りのチームに期待値が正しく伝えられていなかったりする例にはいとまがない。
今日、会社の仕事は自動化によって定型業務の割合が減り、プロジェクトで動く部分が多い。ひとつの組織で、常に複数のプロジェクトが動いているのが普通の状態だろう。であれば、領域の専門知識は最低限でも、プロジェクトを采配する能力にたけた人材を専門人材として育成することは理にかなっている。まだ例は少ないが、DX人材とセットでプロジェクトマネジャーの育成を図る企業もあるようだ。
プロジェクトマネジャーに公的な資格はないものの、会社や業界をまたがって持ち運び可能なスキルなことは確かだ。企業にとっては、この能力の希少性を理解し、若い世代からプロジェクトマネジャー人材を戦略的に育て、願わくは長く自社で活躍してもらうようキャリアパスを敷くことが、プロジェクトの成功確率を上げ、隠れた戦略的差別化につながる。
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