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フランスとイタリアの大喧嘩の背景

ブレグジット関連の報道で埋め尽くされているため話題となっていませんが、現在欧州では新たな問題が勃発しています。それはフランスとイタリアの外交関係の悪化が看過できない事態に差し掛かっているということです。これについて以下のコラムにまとめさせて頂きました

イタリアとフランスの大げんかの理由と行方「大使召還」、世界大戦後で前例のない事態に・・・

https://toyokeizai.net/articles/-/265989

先週7日、フランス外務省はイタリアの度重なる内政干渉を理由に駐イタリア大使の召還を発表、「フランスは数か月前から、再三の糾弾や根拠のない批判、荒唐無稽な主張にさらされてきた」と強い語気の声明を出すに至りました。通常、大使召還は国交断絶の一歩手前と解釈されることが多いだけにEU加盟国同士、しかもコア国であるイタリアとフランスの間でそのような事態が起きることはEUにとって危機的かつ経験のない出来事と言えます。今回の動きについても「大戦以降、前例のない事態」と声明文では指摘されており、早晩収束するのかどうか予断を許しません。

声明の契機となった具体的な出来事が明らかにされているわけではありません。しかし、極左政党「五つ星運動」の党首であるディマイオ副首相(兼経済発展相)らがマクロン仏政権に対する抗議デモ「黄色いベスト運動」の幹部と会合を持ち、支持を表明したことなどが原因と目されます。最近では副首相自らが抗議デモ運動のリーダーや欧州議会選挙出馬予定の活動家らと面会してはツイッターなどで支持を表明、果ては集合写真なども公開するなどフランス政府を挑発するような言動が目立っていたという経緯があります。遂にマクロン政権の堪忍袋の緒が切れたということでしょう。声明文で「意見の相違はさることながら、選挙目的に関係を悪用するのは別の話」と指摘されているように、一連のディマイオ副首相の立ち回りは5月の欧州議会選挙で自身が属するポピュリスト会派が支持を得るためのパフォーマンスとの見方がもっぱらです。

金融市場から懸念すべき展開は、こうした対立が結果的にポピュリスト勢力を利することになり、欧州議会選挙で反EU会派が躍進、債券市場を中心に混乱の度を深めるという懸念でしょう。実際、大使召還騒動を受けてイタリア債利回りは跳ねています。現時点ではイタリア一国にとどまっていますが、ECBが量的緩和(QE)を停止している以上、外的なショックにユーロ債市場全般が脆弱になっているという事実は忘れるべきではないでしょう。

また、為替市場の観点からは、FRBがハト派姿勢を強めてきたにもかかわらずドル相場が全く下がってこない背景として、ユーロ圏の政治・経済情勢に「全く良い所が見当たらない」という現状があると思われます。為替は常に「相手がある話」であり、このままでは敵失でドル相場の堅調が維持される状況が続きかねません。

イタリアの現政権では良識派と目され(それゆえに苦労している)コンテ首相は両国間の対立が「直ちに解消」されることを期待すると述べていますが、同首相が副首相2名に挟まれてレームダック化していることは周知の通りです。欧州議会選挙が近づくに連れて両国の対立が激化する恐れはやはり否めないでしょう。ブレグジットに目を奪われがちですが、EU内部での「仲間割れ」からも目が離せません。

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