来春から始まる本格的なジョブ型雇用シフト 首相も明言
こんにちは、電脳コラムニストの村上です。
先日、岸田首相がニューヨーク証券取引所で講演した内容は、今後のわたしたちのキャリアにも大きく影響を与えそうです。
すでに一部の業界や職種では導入されているジョブ型雇用ですが、特に大企業においてはまだまだ日本型雇用(いわゆるメンバーシップ型)が標準的です。戦後長らく運用されてきたものですから、その変革が容易ではないことは想像に難くありません。
ジョブ型雇用というと「解雇規制を緩和することになり、労働者に不利だ!」という声をよく聞きます。実は「世界一厳しい日本の解雇規制」というのは幻想であり、どうにも話が混線してしまっている感じがします。
つまり明確にされていない部分が大きいため、経営者からすると「予見可能性が乏しい」と見えます。この法理は2004年の労働基準法改正で初めて法律の条文になりましたが、それでも合理的な理由がなく、社会通念に反する解雇は無効」という原則にとどまっています。実務上の線引きについてはいまなお見通せず、これが解雇規制の厳しさと映るのでしょう。
また、解雇は社員の生活を驚かすことから、裁判所は配置転換や再教育を重視して解雇は認めない判断を重ねてきました。新卒一括採用から定年退職まで働いてもらうという、主に大企業が行ってきた「メンバーシップ型雇用」。この制度ではどんな職務につくのか、どこで働くのかといった社員の働き方の根幹まで「総合職」という名のもとに会社が一方的に決めてきました。だとすれば、解雇せずとも配置転換はできるだろう、と言われるのは当然の帰結です。よって、これは自縄自縛の面があるとも言えます。
一方、中小零細企業では解雇は日常的です。「産休を求めたら普通解雇」や「有休を申請したら普通解雇」なども実例としてあり、年間4500件ほどが労働局のあっせんや裁判所の労働審判に持ち込まれています。そのほとんどが解決金の支払いで終結しており、裁判にまでいくことはまれです。また、この裏側には恫喝に近い形で一方的に解雇されているなど、泣き寝入りのケースも多く隠れているでしょう。
ジョブ型の導入はルールの明文化につながり、労使双方の予見可能性を高める可能性があります。これに加えて企業の枠を超えて労働条件を統一する拡張型協約を推し進めたり、転職市場を盛り上げることで労働移動を円滑にしていくこと。また、リスキリング(再教育)や万が一の場合のセーフティネットの充実を図ること。ぜひこれらを「岸田ノミクス 3本の矢」として強力に推し進めていただきたいと願っています。
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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)