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来春から始まる本格的なジョブ型雇用シフト 首相も明言

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

先日、岸田首相がニューヨーク証券取引所で講演した内容は、今後のわたしたちのキャリアにも大きく影響を与えそうです。

岸田文雄首相は22日(日本時間23日)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)で講演した。日本企業にジョブ型の職務給中心の給与体系への移行を促す指針を2023年春までに官民で策定することを明らかにした。

「年功序列的な職能給をジョブ型の職務給中心に見直す」と述べた。専門的なスキルを給与に反映しやすくして労働移動を円滑にし、日本全体の生産性向上や賃上げにつなげる狙いがある。

すでに一部の業界や職種では導入されているジョブ型雇用ですが、特に大企業においてはまだまだ日本型雇用(いわゆるメンバーシップ型)が標準的です。戦後長らく運用されてきたものですから、その変革が容易ではないことは想像に難くありません。

ジョブ型雇用というと「解雇規制を緩和することになり、労働者に不利だ!」という声をよく聞きます。実は「世界一厳しい日本の解雇規制」というのは幻想であり、どうにも話が混線してしまっている感じがします。

日本は解雇法制が世界一厳しく、経営の構造改革を進めにくい――。日本経済の停滞を嘆くこの通説が覆りつつある。経済協力開発機構(OECD)の2019年調査によると、日本は37カ国の平均よりも正社員を解雇しやすい国だ。労働経済学者の研究では不当解雇の解決金も国際的にみて高くない。解雇をめぐる議論は、なぜ混線してしまったのか。

日本では、どんな場合に正社員を解雇できるのか労働法に具体的に書かれていない。解雇権の乱用は許されないという「解雇権乱用法理」の個別事例が判例で積み上げられてきただけだ。

日経電子版

つまり明確にされていない部分が大きいため、経営者からすると「予見可能性が乏しい」と見えます。この法理は2004年の労働基準法改正で初めて法律の条文になりましたが、それでも合理的な理由がなく、社会通念に反する解雇は無効」という原則にとどまっています。実務上の線引きについてはいまなお見通せず、これが解雇規制の厳しさと映るのでしょう。

また、解雇は社員の生活を驚かすことから、裁判所は配置転換や再教育を重視して解雇は認めない判断を重ねてきました。新卒一括採用から定年退職まで働いてもらうという、主に大企業が行ってきた「メンバーシップ型雇用」。この制度ではどんな職務につくのか、どこで働くのかといった社員の働き方の根幹まで「総合職」という名のもとに会社が一方的に決めてきました。だとすれば、解雇せずとも配置転換はできるだろう、と言われるのは当然の帰結です。よって、これは自縄自縛の面があるとも言えます。

一方、中小零細企業では解雇は日常的です。「産休を求めたら普通解雇」や「有休を申請したら普通解雇」なども実例としてあり、年間4500件ほどが労働局のあっせんや裁判所の労働審判に持ち込まれています。そのほとんどが解決金の支払いで終結しており、裁判にまでいくことはまれです。また、この裏側には恫喝に近い形で一方的に解雇されているなど、泣き寝入りのケースも多く隠れているでしょう。

ジョブ型の導入はルールの明文化につながり、労使双方の予見可能性を高める可能性があります。これに加えて企業の枠を超えて労働条件を統一する拡張型協約を推し進めたり、転職市場を盛り上げることで労働移動を円滑にしていくこと。また、リスキリング(再教育)や万が一の場合のセーフティネットの充実を図ること。ぜひこれらを「岸田ノミクス 3本の矢」として強力に推し進めていただきたいと願っています。

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タイトル画像提供:Fast&Slow / PIXTA(ピクスタ)

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