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FXで、すっかからかんになる理由

証券会社に勤める友人から、外国為替証拠金取引(FX)口座に入金する7割のお客さまが、入金した全額を失うってしまうという話を聞きました。

数値の正確性に確証はありませんが、FX投資をした人の内、多くの方が投資に失敗してしまうということだと理解しました。

この記事では、資産形成に成功した話が紹介されていますが、過去に経験した失敗談はやはりFXでした。

「失敗はたくさんしています。07年に外国為替証拠金取引(FX)で大負けしたのが典型例です。1カ月で600万円損し、懲りずに5万円もする情報商材を買って翌年も挑み、さらに100万円負けてFXからは完全撤退しました。こうした失敗の積み重ねが今の経済的自立につながっています」

このようにFXで痛い目を見た体験談は、巷に溢れているのでしょう。そこでFXはなぜ失敗しやすいのか原因を考察してみます。

刺激に慣れて賭け金を上げ、底に触れる

私は、賭け事が大好きというわけではありませんが、大学時代、リスク論のゼミ旅行の行先がラスベガスだったこともあり、その後もマカオ、ソウルなどのカジノに行き、経験を通じて学んだことがあります。

アジア圏では、二分の一の確率で賭け金が倍かゼロになるバカラや大小といった丁半形式のゲームに人気があります。最低賭け金は3000円程度で、腕の良し悪しは関係なく、純粋に運のみで勝敗が決するのが特徴です。3000円は、上手く行けば6000円になり、運が悪ければ無に帰します。

学生の頃の記憶ですが、3000円あればランチが何回食べられるのかと考えてドキドキしながら勝敗を見守っていました。そして、よっぽどの事がなければ、勝ったり負けたりしながら、時間が経過していきました。

そうすると、最初のドキドキが失われていきます。そして、3000円から5000円、5000円から1万円と、さらなる刺激を求めて賭け金を上げいきます

長い目で見ると、勝ち続けることも、負け続けることもできません。そして、賭け金を上げると、勝ち負け双方の振れ幅が膨らんでいきます

そして悲しいことに、この振れ幅の先にある上限、天井は決まっていないのですが、下限である底は明確に定義されていることです。一般的には、持ち金がなくなれば終わりです。加熱した場合は、借金のできる限界の金額が底になります。

数年前にカジノに行った時の話ですが、使うのは10万円だけと決め、チップに換金して遊びました。大小を数時間プレイして、ふと気が付くと手持ちのチップは80万円になっていました。そこで帰っても良かったのですが、気が大きくなって80万円をフル投下して負け、終了しました。入金した金額が、すっからかんになった経験談です。

FXでは、入金したお金を証拠金として賭け金を倍増させられることが、振れ幅をさらに大きくして、すっからかんへの道を加速させています

自分だけが答えを知っているはずがない

FXは丁半賭博とは異なり、確率論では語ることはできないと考える方がいらっしゃるかもしれません。

例えば、ドル円の将来の動きが自分には予測できて、ドル安に振れるので、現在円を買えば確実に勝てるなど、自信を持っている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、理論的、経験則的に価格を形成する情報は、既に現在の価格に織り込まれているため、他人が入手できない情報を特別に保有していない限りは、未来の価格を見通すことはできないと考えるべきです。

また、企業成長と高い相関をみせる株価と異なり、二国間の実質の金利差や国際情勢など、複雑な要因によって価格が形成される為替の価格を見通すことは難易度が高くなります。

つまり、自分は、為替の未来を知り得ないという謙虚な姿勢が必要です

さらに、人には自分に都合の良い情報や自分の考えを裏付ける情報だけを集めて、反対意見を探そうとしない傾向があるため、間違いに気付くことができないリスクもあることへも留意したいです。

「勝つこともあれば、負けることもある」という当然の前提を受け入れて、許容できるリスクの範囲内での活動に制限しなければ、すっからかんへの道を突き進むことになります。

損を取り戻すために泥沼にはまる

人間の一般的な性質として、「利益の喜び」と「損失の痛み」を天秤に掛けると、損失から受ける苦痛のほうが、はるかに大きく感じることがわかっています。この損失回避バイアスがあるため、適切なタイミングで損を確定させ、取引から撤退することを、我々は許容できません

また、一生懸命働いて稼いだお金が、目の前で蒸発していく状況に対して、冷静な対応できる人は多くありません。

何とか損を取り戻すために、より大きな利益の獲得を目指すことになります。そうすると、必然的に証拠金を担保としたレバレッジを効かせ、減っている原資に対して耐えられない振れ幅が襲い掛かり、結果的に為す術を失い、すっからかんの状態に陥ります。

対策としては、予測に反した動きをするならば、自分が見落としている情報があるはずなので撤退するという方針で「1割値下がりしたら損切りする」とルールを決めたり、振れ幅を抑えるためにレバレッジの倍率を抑制するなど、バイアスに流されない仕組みを構築しておくことが肝要です

上記3つの理由を考察しましたが、FXで負けないためには人間が持つ特性に逆らい、強い抑制が求められることがわかります。FXは、自制できる自信がない人は手を出すべきではない金融サービスなのです

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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