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DXからCXへ。知っているようで知らない アプリマーケティングの世界

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

もはや使わない日はないとも言える、スマートフォンのアプリ。インストールしているアプリの数の平均は19.3個(MMD研究所)との調査結果もあります。50個以上インストールしているヘビーユーザーも9.4%いるとのことで、スマートフォンにおけるインターネット利用の中心はアプリになっているとも言えます。

私自身、iPhoneが日本に上陸した2008年当初からスマホのサービス開発に携わっており、当初は「Webにするか、アプリにするか」で散々議論をした記憶が残っています。今ではノーコードツールなども出現してかなり開発環境が進化したのでアプリをつくるハードルは下がりましたが、それでも開発や運用のためにかかるコストはアプリのほうが大きいでしょう。また、アプリはユーザーに「インストールしてもらわなくてはいけない」点で獲得のハードルも高く、Web以上のメリットがなければ継続して利用していただくことは難しいです。しかし、それをクリアすれば日常的に使っていただけるロイヤルユーザーとなりますので、チャレンジする甲斐は十分にあります。

開発のハードル以上に難解なのが、アプリを広めるためのマーケティングです。というと、低単価でどれだけインストール数を稼げるか?という話になりがちなのですが、それはユーザー獲得(入口)の1つだけを語っているにすぎません。ユーザーの利用状況を細かく押さえて計測し、絶えず改善している継続的なプロセスを会社としてどのように仕組み化するか。よって、決してマーケティング部門だけの話ではなく、会社として顧客とどう向き合いより良いサービス体験を提供するのか。その中心にアプリが存在する時代になったのです。

しかしながら、このような広範囲なビジネス知識が求められる世界ですので、これまでそのノウハウは秘伝のタレとしてなかなか世に出てきませんでした。もちろん部分的に触れている書籍はたくさんありますが、体系的にすべてを網羅したものはあまりなかったと思います。先日、旧知の友人である業界の第一人者で「アプリ先生」としても知られる坂本達夫さんが、まさにこれに応える本を出しました(たつおさん、ご恵投ありがとうございました!)。

この週末に読みましたが、まず内容が濃いです。ユーザー獲得についてはもちろんのこと、アプリが顧客体験の中心になった時代にビジネスの収益化をどう考えればよいのかという経営者目線でのポイントもしっかり押さえられています。また、アドネットワークの歴史などの解説は、いまあるアドテクノロジーを深く理解するために非常に役立ちます。

計測と運用にも多くのページが割かれており、かつ実践的な内容です。現代のアプリマーケや広告運用は取得できるデータが豊富になった分、KPIをどう設定すればよいかに悩む担当者も多いと思います。これをビジネスの収益化という点で数字の数々を流れとして捉える解説がわかりやすいです。

また、「アドフラウド」(詐欺、不正広告)対策についても解説がされているとこがポイント高いです。業界の闇とも言える部分について恐れることなく触れているのは、業界の健全化がすべてのステークホルダーの利益になるという著者の信念を感じます。

事業者にとってアプリを活用するメリットは、新たな購買ニーズを開拓し、売り上げを伸ばせることだけにとどまらない。アプリを通じて実店舗で利用できるクーポンを配布したり、チャットで質問に答えたりなど、ユーザーの顧客体験(CX)を高めるコミュニケーションの場としても活用できる。

「アプリを開発したからといって爆発的に顧客が増えるわけではないが、既存顧客にとって居心地のいい環境をつくれるという点では、アプリ開発はどの企業もチャレンジする価値がある」

日経電子版

アプリはすでにIT業界関係者だけのものではなく、小売や飲食事業者にとっても活用すべきものです。奇しくもコロナ禍がそれを加速させ、顧客体験の一部にネットが必ず含まれてきています。そのためには、体験の中心となるアプリをどのようにビジネスに内包していくかをじっくりと考える必要があります。ぜひ、今日紹介した書籍などを参考に始めてみてください!

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※ タイトル画像は筆者撮影

情報開示:記事で紹介している本は著者より献本いただきました。

#日経COMEMO #NIKKEI

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