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少子化対策、どうすりゃいいの。現金 VS 現物! 親子の生活に貢献できるのはどっち?

少子化の加速が、止まりません。2020年の出生数は84.1万人と、戦後最少を更新。21年は、いよいよ80万人を割るかもしれません。


そんな日本の、これからの人口推移の予測はこんな感じ。富士急ハイランドのジェットコースターも真っ青🎢

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画像参照元:拙著『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ』


ただ、私は「少子化」が悪いとは、これっぽっちも思っていません。社会にとって大切なのは、子どもが多いことじゃなくて、子どもが幸せなことだからです。

だから、少子化の議論をする時は、「なぜそうなっているか」に着目します。そこを深堀していくと、「本当は子育てしたいのに、できない」という、現役世代の切実な悩みにぶち当たります。この急激な少子化は、それだけ、人が悩み、苦しんでいるということ(構造的に、どんな先進国でも少子化にはなりますが、日本はその度合いが異常)。

だから、まずは現役世代の、とりわけ、今まさに苦しんでいる親子の悩みに、真摯に耳を傾けるべきです。そこが解決したら、少子化も「結果的に」改善するはず。だって、幸せな子育てができそうと思えるなら、子どもが欲しいという人はたくさんいます(※1)。

※1:詳細は、下記のnoteにしたためております。ぜひ、ご笑覧ください

とはいえ!ヒト・モノ・カネ、私たちのリソースは有限😭 個人も、そして、政府も。本当だったら、片っ端から全部みんなの悩みを解決したいけど、優先順位をつけねばなりません。

じゃあ、まず私たちが取り組むべきことはなんなのか? ここで、しばしば話題になる論点があります。

現金給付と現物給付、どちらが、少子化対策としてより費用対効果が優れているのか(=より多くの親子の悩みを解決できるのか)です。

現金給付とは、その名の通り、国民に対して直接現金を配ること。例えば、児童手当、育休給付金、出産育児一時金、就学援助等がこれにあたります。

現物給付は、現金以外のもので、国民生活をサポートするもの。例えば、保育園や病児保育室の設置、親子のケアのためのソーシャルワーク、教育に対する投資、等々です。

子育て支援界隈では、長く大激論が交わされてきましたが、未だ決着をみず……! 私も、親子支援の最前線で働いている者として思うところはありますが、マクロな視点での答えは、持ち合わせていませんでした。

 🍎   本議論の大前提  🍎

現金給付と現物給付、どっちも大切に決まっていますっ! そもそも、日本政府は諸外国と比べて子育て支援にお金を使わな過ぎなので、「現金か現物か?」とかいってないで、両方ちゃんとやって😭  って感じ。また、この議論は、ミクロで各家庭を見たとき、答えは異なります。現金が今すぐ必要なご家庭だってあるし、それより子育て支援サービスが必要な場合もあります。今回はあくまで、「マクロ」で社会をみた場合の話です。


そんな中、出会ってしまった。『子育て支援の経済学』

子育て支援の泰斗である東京大学の山口慎太郎教授が、最新の研究成果をわかりやすくまとめてくださっています🙌 本書に、この問いに対する答えが、簡潔に書いてあるではないかっ!

現金 VS 現物、どちらが(マクロな視点で見た時)より親子の生活に貢献できるのか……!? 

ズバッと答えに入る前に、そもそもなぜ今、日本がこんな深刻な少子化に陥っているのか、考えてみます。その原因は、様々な要因が複雑に絡み合っていますが、ジェンダーギャップ(男女差別)が深く関わっています。

私もnoteや拙著で100万回指摘してきた通り、ジェンダーギャップは、少子化を加速させます。なぜかというと、女性に家事育児の負担が、あまりに偏り過ぎているからです。

具体的にどれくらい、どんな負担が女性に偏ってるの? と思った方は、こちらのnoteをご笑覧ください。

そして日本は、このジェンダーギャップが、あまりに酷い。「子育てしたいけど、こんな状況じゃ、ツラすぎる、無理だ、嫌だ」という女性の気持ち。この気持ちに、どれだけの男性が本気で寄り添えているでしょうか。

実際、男性が家事育児をしっかり担えば担うほど、出生率は高くなる傾向があります。さもありなん!(同胞たる男性諸君。下図に刮目してくれぃ)

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画像参照元:『子育て支援の経済学』


とはいえ、こういった「パパの家庭進出」を推し進めるには、国の文化や、各家庭・夫婦の問題も絡むので、政策で著しい効果を短期的に出すのは、難しいかもしれません。

でも、このデータは、大切なことを示唆してくれています。つまり、少子化対策として政策で狙い撃つべきは、妻の負担軽減、ということ。本来、男たちがやるべきことをやらないなら(やれないなら)、まずは政策でテコ入れすべし、というわけです。なんだか、男性としては、とても申し訳ない気持ちだけど……😢

💡

では、ここまでの議論を踏まえて、改めて、あの問いに戻ります。現金 VS 現物、どちらがより親子の生活に貢献できるのか……!?

答えは、現物支給です。こちらの方が、少子化対策として高い費用対効果が見込めます(いうまでもなく、国や地域によって状況は異なります)

この日本の根深いジェンダーギャップは、少々の現金給付ではどうすることもできません。家計は少し助かっても、女性の負担は減らないのです。なぜなら、男性の行動原理が変わらないから……😇

でも、女性の家事育児の負担の一部を社会が担うことはできます。特に着目すべきは、0~2歳児の保育・幼児教育の機会拡大です。

下記、少々長いですが本書から引用します:

ドイツの保育所整備の費用対効果について、現金給付と比較する形で概算を行った研究がある。それによると、保育所整備は現金給付より5倍も大きな効果を上げるそうだ。もちろん、これは非常にざっくりした試算にすぎないが、かなり大きな違いなので、女性の子育て負担軽減に直接効果がある保育所整備が有効であるという議論を支持しているといえるだろう (『子育て支援の経済学』p.72)


下記の図の通り、0~2歳児の多くは、幼稚園にも保育園にも通っていません(0~2歳児で約191万人。3歳以上ですら、約14万人)こういったご家庭では、多くの場合、女性が家事育児を背負わされています。

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画像参照元:駒崎弘樹公式ブログ『保育園にも幼稚園にも行ってない約14万人の「無園児」の実態が研究で明らかに!』

そんなにツラいなら子どもを保育園に預ければいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、現在日本には「保育の必要性認定」というものがあり、親が共働きだとか、祖父母が近所に住んでないだとか、一定の要件を満たさないと、子どもを保育園に預けられません。

問題は、それだけではありません。弊会代表の駒崎がこちらのブログで指摘している通り、幼稚園にも保育園にも子どもを通わせていない家庭は、低所得世帯や多子世帯、外国人世帯等が多く含まれています。

本来無料で保育園や公立幼稚園に通える低所得世帯までこういった不登園児になっている理由は、母親が就労していなくて公立幼稚園が近くにないパターン、保育料以外の費用(課外活動費や給食費など)が負担になっている、親がメンタルヘルスの問題を抱え、入園手続きや通園ができない、などが推測されます。こういった親子は社会から孤立してしまい、追い詰められ、虐待などに繋がってしまうリスクが高いのです。

保育園や幼稚園は、親の家事育児の負担を軽減できるだけでなく、子どもにとってのセーフティネットにもなります。低所得世帯でも、給食があることで栄養をカバーできますし、不適切養育世帯ならば、虐待やネグレクトの兆候を、いち早く気付き、必要な社会資源に接続することだってできます。

💡

ゆえに、私たち認定NPO法人フローレンスは、「国民皆保育」を政府に対して提言してきました。

「保育の必要性認定」を廃止し、共働きだろうが専業主婦家庭だろうが、全ての子どもが保育施設に通えるようにすべきです。

フランスの事例のように、3歳以上児の保育園を義務化とし、0〜2歳については、週1〜週6まで、その家庭に応じた利用を可能とします。各園には保育ソーシャルワークを導入し、保護者の子育ての相談にのったり、リスク家庭を早期に発見できるようにします。

ただし! 全ての子ども達が保育園に通えるようにしようというのだから「保育の質」は極めて重要です。諸研究が指摘している通り、保育の質が悪い施設に子どもが通うと、むしろ、健全な発達を妨げてしまいます。

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画像参照元:日経新聞2019年9月23日「幼保無償化の論点(中)」


だからこそ! 現物支給なのです!! 保育やソーシャルワークの人材、そして、施設設備にガンガン投資をして、全ての親子が、安心して通える保育施設を早急に整えてほしいです。

この施策は、現在偏りに偏っている女性の家事育児の負担を減らし、社会との繋がりによって「孤育て」を解消し、さらに、子ども達の健やかな発達を後押しします。

ちまたで話題のベーシックインカムも結構ですが、社会で子育てを支え合える「ベーシックサービス」こそ、今の日本には必要だと思います。

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念の為。「でも財源が……」なんて屁理屈は通りませんよ。

過去50年にわたるアメリカの133の公共政策を評価した最新の論文によれば、もっとも費用対効果が高いのは、子供の教育と健康への投資と結論づけられています(※2)

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※2:Hendren, N., & Sprung-Keyser, B. (2020). A unified welfare analysis of government policies. The Quarterly Journal of Economics, 135(3), 1209-1318.


社会の発展を思うなら、何を差し置いても、親子のために投資すべきです。日本は、ずっとここを蔑ろにしてきました。そのツケが、少子化という形で現れています。

最後に、とはいえ、です。同胞たる男性の皆さま。まさか、自分たちの愛する家族のことを、国にどうにかしてもらおうなんて、思ってませんよね。

そもそも、こんな事態になっているのは、私たち男性の責任です。国の政策を待たずして、まず私たちが変わらないといけないと思います。少子化問題解決のカギは、「パパの家庭進出」です。

最後にもう一回、この図を貼っときますね! 日本の未来を変えるのは俺たちだ! やったりましょー🔥

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前田晃平
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