今こそ、人、モノへの投資が必要な理由
人への投資、企業価値を左右 スコア上位の株価7割高: 日本経済新聞 (nikkei.com)
バブル崩壊以降の日本経済は、マクロ安定化政策を誤ったことでデフレが長期間放置されてしまいました。そして、設備や人への成長投資が十分になされなかったこともあり、経済成長が長期停滞を続ける「失われた30年」という状況が続いています。
実際、主要国の実質総固定資本形成の推移を見ても、1991年比で米国が2.7倍、英国が1.7倍、ドイツが1.4倍に伸ばしているのに対し、日本は逆に0.9倍以下に減少しています。
また、企業内教育に重点が置かれてきた日本では、企業外での教育が手薄であることはよく知られており、実際に先進国で比較するとOJT以外の人材投資/GDPが少なく、低下傾向にあることがわかっています。
このため、 設備や人への投資を促して経済の長期停滞から抜け出すためには、経済全体や企業それぞれの成長期待が高まることが必要であり、それによって設備や人への投資が拡大すれば、需要拡大を通じた生産性向上により賃金も上がり、経済成長の好循環につなげることができるでしょう。
ウクライナ危機以降も、新興・途上国を中心に世界的に人口が増加し、世界的に一次産品の需要が拡大する中、生産やサプライチェーンの混乱などにより、一次産品も含めて需給のひっ迫がさらに進行しています。このため、国際的な供給途絶リスクをできるだけ抑制し、持続的に経済成長をしていくためには、経済の国内自給率向上を通じて経済の強靭化を高める経済安全保障の考え方がこれまで以上に重要になっています。そして、これまでの資源循環経済に経済安全保障の考え方も加えた成長志向型の資源自立経済を確立できれば、必要な技術や制度・システムを海外展開につなげることも可能となるでしょう。
こうした中、日本の製造業賃金はシンガポールや韓国よりも低い水準になっていることがわかります。ただ、人件費だけで考えれば、依然として生産拠点としての優位性は人件費の低いタイやフィリピンなどの新興国に分があります。このため、日本が立地競争力を得るには、コモディティ化した製品というよりも、そうした新興国では供給できない高い技術に裏打ちされた製品を生み出す国になることが求められます。そのためには、高度な研究開発を可能とする人材投資も必要でしょう。
為替動向にかかわらず、気候変動対策や経済安保、格差是正等の将来の社会・経済課題解決に向けてカギとなる技術分野や戦略的な重要物資、規制・制度等に着目し、国内の強みへの投資が今まで以上に必要となってくるといえます。