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株価は財務情報だけを取り込んで形成されているのか?~ESG投資ムーブメントが侮れない理由~

 最近、ESG投資という言葉を、本当によく耳にします。数年前は、ESG投資ムーブメントなんてすぐ終わると揶揄されることもありましたが、それも今は昔のようになろうとしています。今回は、ESG投資とは何かをおさらいしつつ、なぜESG投資ムーブメントが侮れないかを先行研究をもとに考察します。

ESG投資ムーブメントが起きている理由

 持続可能な社会をつくるために達成すべき目標として『SDGs』とい言葉を聞く機会が増えました。同時に、その目標を達成するための手段としての『ESG投資』というキーワードも注目されつつあります。ESG投資とは、環境・社会に優しく、ガバナンスを遵守している、持続可能な社会つくりに貢献している企業に積極的に投資をしていこうというものです。そして、ESG投資家というのは、投資にESGの視点を入れることを掲げた国連責任投資原則(PRI)に署名した機関投資家を指します。署名した機関投資家には、私たちの国民年金を運用しているGPIFも含まれるなど、株式市場に影響力のある機関投資家の署名が続いています。そして、その署名した機関投資家が運用している送金額は1京円(!)を超えると推計されています。それぐらい、ESG投資というのが、投資の世界で浸透しつつあるのです。でも、これが私たちの生活にどのような影響を持つのでしょうか? 

  既に投資を行っている人は、ESG投資と付く金融商品や、ESG評価が高い企業の株などを、闇雲に購入するのではなく、本当に社会に優しい企業なのかを厳選する視野が必要になると思います。というのも、下記の記事にもある通り世界中でESG投資関連金融商品というのをウリにした、本当はESG投資とは言えないような金融商品が出回り始めているからです。これに対しては、日本を含む欧米各国が対策を検討しています。


ESG投資と株価の関係

 また、これまでの学術研究を見てみると、ESG評価が高い=社会に優しい企業であっても、必ずしも株価が上がりやすいわけではないのが報告されています。ただし、マイナスの働きをするわけでもなさそうです。

  そもそも、株価とは株式を発行している企業が、将来的にどれぐらい配当やリターンを還元してくれるかを、現在価値に引き戻したものと定義されます。株価が上がりそうな企業を探すためには、将来の業績に期待できる企業を探すことが重要なわけです。私も含め、将来の業績を予測するために、その企業の過去の業績や会計情報を見て分析をする人が多いと思います。しかし、そうした会計情報だけで、将来予測を正確に行えるのでしょうか?実は、この問いに対して衝撃的な検証結果を提示した書籍が注目されています。それは、ニューヨーク大学スターンスクール・オブ・ビジネスのバルーク・レブ教授達が執筆した『The End of Accounting and the Path Forward for Investors and Managers』という書籍です。

 この中では、1950年代までは、株式市場で評価される時価総額評価の約90%は会計情報で説明ができたが、2013年には50%にまで低下している、というものです。これが何を意味するかといえば、企業の過去の情報である会計情報だけでは、株価予測をするには当てはまりの精度が下がってきているということです。では、どうしたらよいのか?そこで注目されるのが「非財務情報」です。そして、「非財務情報」の最たるものが「ESG項目」なのです。持続可能な企業経営姿勢や、不祥事を未然に防ぐ体質をもつかなどは、会計情報だけではなかなか判断できません。そして、不確実性が高い社会だからこそ、会計情報に現れない企業のレジリエンスを測るためにも「ESG項目」について、投資家は目を見張らせないといけないのでしょう。

 いまは企業によっては、ESG情報開示ルールがバラバラな状況ですが、金融庁の動きを見るに、来年以降から劇的に改善される予兆もあります。今後も、一人のビジネスパーソンとしてもESG投資ムーブメントには注目したいです!

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崔真淑(さいますみ)

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