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10連休中に、母がテレビCMを見て、「そらあかんわ」と言う。「50代、60代の肌への基礎化粧品やて。化粧品の宣伝って、大体、60代止まりやわ。人生100年時代やのに、90代、100代のあなたに、ってやらんならあかんわ!」。なるほど、である。

確かに、90代向けお化粧品の宣伝は見たことがない。70代を超すと、病院や介護といった一部の業界を除いた多くの企業にとって、ひょっとして、消費者として目線から落ちてしまうのではないか。実際、テレビCMも、“人生経験豊富な大人”向けというより、勢い“お年寄り”向け、といったカテゴリーになり、いきなりオムツや入れ歯剤のCMばかりが対象になってくる気がする。

以前、友人が言っていたことを思い出した。「うちのおじいちゃん、デイサービスに行かないっていうんですよ。俺はまだまだしっかりしているのに、お遊戯やお手玉って、何やらすんだってんだよ」。これも、対象者を年齢だけで切ったいわゆる“お年寄り”というカテゴリーに括り過ぎた結果の一つではないか。

首相主導で立ち上げられた人生100年時代構想会議では、人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるための政策のグランドデザインが検討され、すでに、昨年人づくり革命基本構想がとりまとめられている(厚生労働省HP)。

一度定年した後、新たなキャリアを、という発想も出て来ている。しかし、それでもせいぜい80歳程度までの15年や20年のこと、なのではないか。では、80代は?90代は?人生100年時代に向けて、80代、90代、100代が画一的ではなく、幸せな選択肢を豊富に持つ時代でなければならない。現在の仕組みには、もしかすると、その用意や意識が足りな過ぎるのではないか。

「長生きすることは、なんだかんだいって、幸せなことなんだけどね」というCMが何の違和感もなく入ってくること自体、やはり、人生100年時代の意識が低いことの証なのだ。「長生きすることは絶対に幸せなこと」にならずして、人生100年時代も何もあったものではない。

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