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ソーシャルインパクトボンド:3つのフィクション

未来を描いていくと、それを実現するための、現実への介入が求められます。それなくして、未来を具現化することはできないからです。この具現化する行動を支える上で、資源が求められます。脱資本主義社会が実現するまでは、どうしても資本が必要になる場面がでてきます。その際に、ペイメントバイリザルト(Payment by Result)という仕組みが使えるかもしれません。

ペイメントバイリザルト

下記は、2013年にまとめた資料で、事例などはイギリスやアメリカを中心とするもので、やや古いのですが、基本的な仕組みについてご理解いただく上でお役立ていただけると思います。

ここ数年、ソーシャルインパクトボンド(Social Impact Bond)という言葉が広がってきました。2〜3年前くらいから、日本でも導入について盛んに議論され、パイロットケースの実施が日本財団を中心に進められてきました。そして、この1年くらいで、ようやく市民権を得てきたように思えます。以前は、企業の方や、行政の方とお話しても、聞いたことがないと言われてきたソーシャルインパクトボンドについて、先方から尋ねられることが増えてきました。

ソーシャルインパクトボンドは、ペイメントバイリザルトの一部として考える必要があります。ペイメントバイリザルトは、サービス事業者に対して成果報酬型で対価が支払われる仕組みです。英国ではサッチャー政権下の国民保健サービス改革の中で、公共医療サービスに市場原理を導入する目的で採択されました。医療保険コストの削減、医療機関のサービス改善に対するインセンティブを与えることが主眼でした。

イギリスでは健康以外の領域でも多数取り入れられ、教育省ではニートの学業や就労支援、司法省では刑務所出所者の就労支援、コミュニティ地方自治省ではホームレス支援や課題を抱えた家庭の状況改善支援、雇用年金省では就労支援などで事例がつくられてきました。

成果に直結した報酬体系であり、行政側としては、これまでかかってきたコストが削減された中から一定割合の金額を報酬として支払うため、コスト面でのリスクがぐっと低くなります。一方、サービス提供者も、一定金額の委託業務ではなく、結果にもとづき報酬が変動するため、成果を求めて努力するインセンティブがあります。

ソーシャルインパクトボンド

しかし、成果がでるまで、3〜7年などの期間を要するという課題があります。成果がでなければ、報酬が発生しないため、サービス提供者にはランニングコストを自前で賄う必要がでてきます。

このランニングコスト問題を解決する仕組みが、ソーシャルインパクトボンドです。ペイメントバイリザルトの形で得られる成果報酬の権利を債権化(ボンド化)し、そこに投資してもらうことによって、ランニングコストを得るという考え方です。

海外事例を含めた詳細は、上記の資料にまとめていますので、ご興味ある方はぜひご覧ください。

この日本国内の状況を、2020年に入って改めて調査してみました。パイロット版としての導入はいくつか見られますが、実際の業務として導入されているところは、まだまだ多くありませんでした。

日経新聞にもこんな記事がありました。


しかし、いくつかの県レベルまたは市区町村レベルにおいて、事例が生まれ始めてきています。

僕が関わっている一般社団法人ライフロングウォーキング推進機構でも、ある某県某市の方々と、この導入について検討を進めているところです。

3つのフィクションとトレイルラン感覚

SF的時間軸で脱資本主義社会の到来を描きながら、その過渡期として、どのようなサービスの座組みをつくっていくことができるか。未来を見据えながら、足下の動きを探っていくことも、並行して進めていきたいですね。

4年前にはじめてトレイルランに参加し、外に意識を向け、センサーを開放状態にしながら、山道を走り抜けるという体験をしました。それまで、道路をランニングするときにはイヤホンで音楽を聴きながら、内省的時間を過ごしていました。しかし、トレイルランは、外に感覚を開きっぱなしで、情報を収集しながら、一歩間違えば滑り落ちてしまうような悪路を走り抜けるという、開放的時間でした。

この感覚が、SF(Science Fiction)とTF(Technology Fiction)とUF(Used technology Fiction)の時間軸を同時に考える感覚に近しいものだと思っています。今年の白馬トレイルランには行けそうもないのが残念ですが、その分、未来を考え、現在を走り抜けたいと思います。


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