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モノゴトを判断するモノサシ「五感分別」

人は、1日に35,000回も、意志決定をしているそうです。
もちちん「人生の岐路」「社運を賭けた決断」が、日に35,000回もあるわけがなく(笑)、朝起きてベッドを出る出ない、歯を磨く磨かない・・・みたいなほぼ無意識領域の意思決定や、朝食を食べる食べない、服はどれを着る・・・などなど、日常的に行っているちょっとした意思決定を大量に含んだ、すべての合計回数が35,000である、という話しですが。

では、その大量の意思決定は、35,000種類のバラバラな意志決定軸による都度都度の判断なのか?
そうと言えばそうなのかもですが、やはりそこには、一定程度の「共通の軸」があると思うのです。守屋はその共通の軸を、五軸、「損得、善悪、苦楽、勝ち負け、好き嫌い」で捉えています。
今回は、その五軸、「五感分別」について、掘り下げてみたいと思います。

五感分別とは?

五感分別(ごかんぶんべつ)
人が判断をする際に用いる、損得、善悪、苦楽、勝ち負け、好き嫌いの5つのモノサシの総称。造語。

ざっくりいうと、損得は行動に効き、善悪は発言に効力を発揮し、苦楽は閾値を超えると感度が更新され、勝ち負けは力の込め具合に影響し、好き嫌いは距離と頻度を左右します。

これは守屋の造語なのですが、言葉として未成熟なので少し補足をしたいと思います。
なお、人の判断軸ですが、より解像度を上げて説明すると、「市場、新規事業、ステークホルダーなどの判断軸」であり、心理の言葉というよりは「ビジネス心理の言葉」だったりします。その前提を踏まえたうえで、以下。

①損得…行動に効く

わかりやすいモノサシである一方で、人は損得で判断していると思われたくないため、奥深くにある本音を隠すことも多い。合理的な判断が下されやすいB2Bビジネスにおいては、重要で最頻出の項目でもある。損得を基軸に考えれば、顧客を儲けさせた分以上に稼ぐことはできないということは自明。つまり、自社(自身)の損得を考える以上に、相手の損得について考えるということが大事

②善悪…発言に効く

損得同様わかりやすモノサシである一方、ビジネス上は建前で発言されていることも多い。一見、善悪を基準に発信しているように見えて、本音では損得のモノサシが用いられていることもある。とくに、会議の場やIR資料などでは、実体とは異なる建前的な表現がなされることが常

③苦楽…閾値を超えると感度が更新される

苦しいか楽かは、タイミングや慣れとともに変動していく動的基準。一時苦しいと感じていたレベルも、慣れると対応可能な値に変わる。ラクだと感じていた値は慣れれば当たり前となり、むしろ元に戻ったときに、苦しさを感じるようになる。顧客や従業員、取引先は、商品・サービス、処遇、取引条件などあらゆるものが、閾値を超えることで慣れの域に達し、感じ方が変化する。例えば、昔は数日後に届いたとしても何も感じなかったのに、Amazonで翌日に届くプライムサービスを使い続けると、他が遅く感じるようになる。

④勝ち負け…力の込め具合に影響する

勝ち負けに対して、良い執着を抱くと「良循環」となり、悪い執着を持つと「悪循環」となる。顧客に対する価値発揮や自分自身との戦いなどに対して執念を燃やして勝負にこだわることは、事業成功においてとても大事。一方、競合を意識するだけの勝ち負けや評価だけに左右される勝負は、勝っても負けてもあまり意味がない。この良循環と悪循環は僅差でありながら大差。たとえば、ライバル企業との競争は顧客価値を創出するが、顧客不在の企業闘争は顧客離反を引き起こしたりする。

⑤好き嫌い…距離と頻度に影響する

良い好き嫌いは、自らに素直で自然体であるために、個としてのパフォーマンスを高め、ポジティブな状態を創り出すことにつながる。一方、悪い好き嫌いは、自らに意識が向き過ぎていて、組織としてのパフォーマンスを落とす方向に力が働いてしまう。これは、勝ち負け同様、良い好き嫌いと悪い好き嫌いは僅差であり大差。何が良くて何が悪いという正解はなく、自ら問い、自ら答え、自らおこなうことで正解を創っていくことが大事

事業差分による分別差分

この5つの判断は、B2BビジネスとB2Cビジネスでは、軽重が変わる傾向があると考えています。

B2BビジネスはB2Cビジネスに比べると合理的で、経済的な価値や社会的な評価、そして競合との競争に勝ることに重きを置いています。たとえば、「これだけコストダウンできます」と合理的な「得」を示すことができれば、社内で稟議書も通しやすくなるなど、損得のモノサシはB2Bにとくに効いてくるものだといえます。
また、B2Bにおいては勝ち負けも重要です。B2Bでは、勝つためにあらゆる手を尽くすといっても過言ではありません。加えて、大義名分やコンプライアンスなど、善悪もそこそこ求められます。
一方で、苦楽や好き嫌いのモノサシはそこまで影響されません。「仕事だから」という理由で超えていける部分だともいえます。

続いて、B2Cビジネスに目を向けると、B2Bビジネスとは違ったモノサシの軽重があると思っています。たとえば、個人になると、苦楽でいえば「ラク」でないと購買意欲は湧かないでしょうし、なんと言っても好き嫌いが重視されるようになります。
一方、勝ち負けなど競争原理はそこまで強くなく、善悪や損得についても少なくとも企業のような合理性、経済性に基づくものとは毛色が違うと思っていますす。

B2BビジネスとB2Cビジネスの分別差分イメージ図

それらを図示すると、上記のようになります。
もちろん、これは守屋が想像したB2Bのビジネスシーン、B2Cのビジネスシーンからの、守屋の感覚での強弱図です。

モノゴトは静的で一面ではなく動的で多面なので、時とともに移ろうものだと思います。たとえば、勝ち筋を見出すことが出来ず、資金繰りにも行き詰まりを見せていたときは、なりふり構わずに損得に拘り、善悪はホドホドであったのに、勝ち筋が見えて資金調達に成功すると、より前面に善悪を出したりすることがあると思います。これは、どちらの意思決定が正しいのかという話しではなくて、その意志決定が最善であったと思えるように、そのときも今も、そしてこれからも、「意志をもって自らが切り拓いていくこと」が大事だと思っています。

モノサシは常に変動するもの。だからこそ、安易に他人のモノサシに頼らずに、自ら問い、自ら考え、自らおこない、自らのモノサシで、モノゴトを判断していってください。
そのために、「五感分析」が、いくぶんなりともご参考になりましたら幸いです。


この投稿は、

日経新聞 テック展望2023 「人間に近づくAI・ヒューマノイド SFの世界はすぐそこに」を読んで、「ヒトが持つモノサシ」について考えてみました。

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