急成長フェーズでの採用の考え方

(※ 社内報なので、社内向けの言葉使いなどわかりづらい点はある等ご了承ください)

急成長フェーズでは、通常の採用ではNGとされるような採用が正解となるケースがある。なんの意識もしないと定石とされる方法をとることでのミスが発生する。本来定石だが、急成長フェーズでは意思決定ミスにつながりうるケースに対して考え方の修正をする必要がある。

前提として、20%成長を目指す会社ではなく、毎年何倍も成長するような急成長を目指す会社の採用の考え方である。

20%成長のような漸近的な成長を志向する場合は、この考え方が逆にアンチパターンになる点は注意して欲しい。

例として、「マッチするジョブがないのだが、非常に優秀な人を採用すべきか」みたいな問いでは、急成長企業では"Yes"だが、安定成長企業では"No"となる。

時間軸の考え方

正しい:  「半年後、1年後、1.5年後をみすえて採用する」
間違い:
「今の組織や事業のフェーズの前提で採用する」

急成長するベンチャーで現在の大事なイシューたちの多くは直近の数ヶ月で生み出された(気づいた)ものになるはずである。なので今この瞬間に課題だと思ってることは数ヶ月後には大きく変わっていることを留意しないといけない。漸近的な会社の成長ではここまでドラスティックなイシューチェンジはそうそう起きない。

1年前のLayerXを考えてみると経費精算のGTMチーム(※新規ユースケースを開拓するチームのこと)がようやく立ち上がった頃。当時はバクラクカードもリリースされてないし、バクラク電子帳簿保存は注力プロダクトではなかった。エンプラやパートナーは正式に部になっておらず探索し始めであり、OKRの上位3つにあがるようなイシューではなかった。(※現在これらは会社の重要イシューになっており、現在の売上成長の大半が1年前なかったイシューから生まれています)

採用、とくにゲームチェンジできる幹部の採用は基本的には1年以上かかる。「今ある前提で、今のフェーズで必要な人を採用しよう」というやり方では採用が間に合わない。

当社が1年前の前提で採用してたら今頃どうなっていたか…?間違いなく、今の成長に大きなキャップがかかっていたはずだ。

半年前には「まだ〇〇さんはフェーズ的に早い。今はマッチしないのでと採用しない」と判断した、その半年後になって「〇〇さんみたいな人が欲しい」と言い出したケースが何回あっただろうか。そのタイミングでそういう人を採用したいと思っても、採用するのに1年以上かかってしまう。

採用は自社の都合で決まらない。あまり自分たちの事業のペースや自分たちの都合を候補者に押し付けない方がいい。

時間軸は常に、半年先・1年先・1.5年先を意識して採用をする必要がある。このとき今の会社には全くない課題を想定した上での採用をする必要があるのが、定石との大きな違いだ。漸近的な成長の会社でも同様に先を見通した採用計画を作ると思うが、前提となるイシューチェンジは想定に入れない。急成長企業はイシューチェンジをできる限り想像した上での、余剰のある採用をしないといけない。

どの時間軸まで見通すかは、採用したいポジションの採用リードタイムに依存するが、幹部採用や事業にインパクトを与えてくれるスペシャリストの採用には1年以上のリードタイムを見込んでおくべきである。

当社ではそういった余剰の採用投資ができるように大型調達(※累計130億円以上の調達)をしている。

組織を作る順番

正しい:  「組織はマネージャーから作る」
間違い: 
「メンバーを十分に採用し、その後マネージャーを採用し、組織化する」

メンバーの数が増えてからマネージャーを採用しよう、登用しようとなりがち。「今のフェーズではマネージャーはいらないから」という論理。この論理は根本的に間違っていて、チームを作る時はマネージャーから採用・登用し、その上でチームを作ってスケールさせていくのが正しい順番である。

メンバーの数が十分に増えてからという採用の仕方は例外なく、組織崩壊を起こす。将来の組織図を見通しながらキーマンから採用していく、または内部でキーマンとなりそうな人を育成・登用していくことを早め早めにやる必要がある。

マッチするジョブの有無

正しい:「今この瞬間ポジションはないのだけど、今この人を取らないと半年後、1年後、1.5年後に致命的な機会損失を生む可能性があるから採用する」
間違い: 「今この瞬間にマッチする適切なポジションがないので、とても優秀なのだけど採用を見送る」

急成長ベンチャーの最大のリスクは、単一施策の失敗ではなく、機会損失である。

過去弊社ではこの失敗をしてしまった。「今この瞬間にマッチする適切なポジションがないので、とても優秀なのだけど採用を見送る」という判断をしてしまった。その人の給与が当時の弊社の給与水準にたいして乖離があることも「見送るのが安全」という判断を後押しした。今振り返ってもLayerXの中でワースト3に入る意思決定ミスだったと思う。

現在その人はとある急成長企業の幹部になっており物凄い活躍をしている。(※さすがです) 当社では今でも「〇〇さんをあの時採用していればこの仕事を任せれたね、これも任せれたね」といった話が何度もでる。大変後悔している判断だ。採用リスク(※)を恐れたおかげで大きな機会損失をおかしてしまった。

(※ 採用リスクに関して注釈。ここでいう採用リスクはカルチャーのアンマッチの話ではない。カルチャーのアンマッチは許容すべきではない。あくまで今のフェーズでやる仕事がないのではないか、フェーズの割にスペックが高すぎて持て余すんじゃないかみたいな懸念のことを指す。そしてそういったリスクは取るべきという話である)

優秀な人が我々の都合のいいタイミングで転職活動をしてくれるわけではない。我々の都合ではなく、候補者の時間軸にあわせるという原理原則を忘れてはいけない。

語弊を恐れずにいうと、急成長フェーズにおいては早すぎる採用をしてしまってもどうとでもなるが、採用すべき人をスルーしてしまうと致命的な機会損失を発生させてしまう。採用を失敗しないに越したことはないけども、ミスを過剰に恐れると機会も逃してしまう。そもそも本当に優秀な人なら、どんな状況でも自分でやるべき仕事を見つけてきてワークするものである。

榎本(CPO)や松本(代表取締役CTO)がいるのに名村さんや小賀さんを採用するの?といった議論が過去あった。 渡瀬(CFO)がいるのに横田さん(現取締役)を採用するの?やることある?みたいな議論もあったけど、全くの杞憂でしたよね。

そしてそういった余剰の採用投資ができるように大型調達は重要である。

固有の知識の有無

正しい:「この人は自分にない能力を持っていて、チームでお互いに補完すると事業にとって大きなプラスがある。そういう人を評価する」
間違い:「自分が持っている力や知識、特性は持っていて当然。その上で+アルファがある人を評価する」

これもやってしまいがち。特に幹部採用の時に起こりがちである。幹部採用を面接する、迎えいれるチームは自社のやっているドメインに相当詳しい自負を持っている。そもそもそうであってほしいと私も思う。

故に、その固有の知識を外部の人にも過剰に求める。そして面接時に「そんなことも知らないのか」という態度をとってしまう。「こんなこと(=その会社の事業ドメインの固有の知識)もしらないようでは当社の幹部は務まらない」という判断をしてしまう。この考えでは実力のある幹部を採用できない。重要なのはコンピテンシーを見極めること。その人が今の環境でどうやってその環境特有の固有の知識を深掘りし成果を上げていったかを客観的にみる必要がある。自社固有の知識は、オンボードが終わるまでは自分たちがカバーするぞという態度の方がうまくいく。優秀な人であれば固有の知識は入社後に十分キャッチアップしてくれる。

また幹部採用は採用したら終わりではなく、その幹部が実力を発揮しやすいように周りもフォロワーシップをもって迎え入れることで大きくチームは飛躍する。今のチームにないもの、成長に重要だけどまだできていない経験を持っている、補完関係にある人を積極的に迎え入れよう。

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