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ポリアモリーをやってみたら、自分のロジックが壮大に崩壊した話。

あなたはポリアモリーという概念を知っているだろうか。

1990代のアメリカで広まった概念で、それを牽引したデポラ・アナポールという学者が書いた「ポリアモリー -恋愛革命-」は、2004年に日本語版が発売されるも即完売。現在は中古でもかなりの高額で取引されている。

そんなポリアモリーとは、

・複数の人と
・同時に
・性愛関係を築く
・ライフスタイル


のこと。

前述の書籍には「出版社からのコメント」として、こんな文章が添えられている。

現代社会では、核家族化に加え、少子高齢化でますます孤立しがちな世帯や高齢者が増えていく。ゆるい家族であるポリアモリーのようなスタイルは、こうした孤立化の歯止め(セーフティネット)にもなる。

愛や家族こそ、私たちの社会を成り立たせる基盤であり、近代的な恋愛結婚観(ロマンティックラブ)や家父長制は、まさに近代社会を成り立たせてきた。その意味で、ポリアモリーは、ポスト近代、持続可能(サスティナブル)でエコロジカルな未来社会を築く基盤になると言っても決して過言ではない。

昨今ビジネスの世界で頻繁に叫ばれている「サスティナブル」という表現が19年前にこんな場所で語られていた。

突然だが、僕がそんなポリアモリーを実践し始めたのは6年前。

そして先日、日本でポリアモリーについて語り合うポリアモリーウィーク・ジャパン2023に登壇してきた。

今日はその際の話を、実際の登壇スライドを踏まえながら振り返ってみる。

■嘘と誠実

僕が連載している「誠実なクズとしてのポリアモリー」というマガジンがある。

当日は、このタイトルをつけてから現在まで。自分の心境の移り変わりについて解説した。

6年前、僕はポリアモリーというライフスタイルに誠実性を感じていた。理由は「ポリアモリーという関係性は嘘を前提としていないから」だった。

僕は当時「嘘をつく」という行為に嫌悪感を抱いていた。嘘をつきたくないし、嘘をつかれたくない、と思っていた。

だからポリアモリーをはじめてから、パートナーには「恋愛関係において嘘をつかないでほしい」と頼んだ。

しかし実際、その場面が訪れた際、僕はひどく動揺した。

自分のパートナーが「他の男性とデートしてくる」と言って出かけた日、僕は寝られなくなった。

大手を振って送り出した以上、詮索するわけにもいかないし、ただモヤモヤして、締切も迫っていない原稿に手をつけていた(ビールを片手に)。

いわゆる嫉妬とは少し違うような気がして、例えるなら受験の合格発表を明日に控えたような「緊張感」だった。

徐々に慣れるような気もしたが、「これは精神衛生上よくない」と判断し、僕は翌日パートナーにこんな話をした。

するとパートナーは訪ねた。

僕は答えた

「適当に嘘でもついてほしい」

と。

■ロジックの前提が崩壊

壮大な前言撤回だった。

あれ程まで「嘘をつく」という行為に嫌悪感を抱いて「嘘をつきたくないし、嘘をつかれたくない」などと言っていた自分が、気がついたら相手に嘘をつくことを懇願していた。

ポリアモリーは嘘をつかないから誠実。

と思っていた自分のロジックが崩壊した。

「誠実なクズとしてのポリアモリー」

なんてタイトルをつけておきながら、自分自身がポリアモリーについてわからなくなっていた。誠実についても、クズについてもわからなくなっていた。

それまで「誠実 ≒ 嘘をつかないこと」と思っていた自分の前提が崩れ「じゃあ、誠実ってなんなんだ」と再び考えはじめた。

改めて考えてみると、パートナーが僕の依頼を受けて嘘をついてくれるとしたら、それは誠実な嘘と言えると感じたし、

逆に僕が「自分はポリアモリーなんだから!」と相手に嘘をつくことを強要したとしたら、それは「クズ」だと感じた。

つまるところ、話はポリアモリーの定義に戻り、何よりも大切なことは「当事者間の合意」だった。

■聞かなければ、聞かない。

実践当初、「ポリアモリーは嘘のない誠実な世界」と思っていた僕の考えは徐々に変化し、その過程でポリアモリーの中にも色んなパターンがあることを知った。

例えばフランスでポリアモリーを研究しているFranklin Veauxはこんなマップを書いている。

この中で、僕の状況に当てはまるものがあった。

Don't Ask.Don't Tell.

つまりは「黙認するポリアモリー」というスタンスだ。

実際、例の一件以来、僕はパートナーに予定を聞いてしまう癖を改めようと考えていた。

これがまさに"Don't Ask.Don't Tell."で「ポリアモリー ≒ なんでもオープンにするのが正しい」わけではない、ことを知った。

「嘘をつかないこと」が誠実だと思っていた6年前から、今は「聞かないこと」が(僕とパートナーの間では)誠実に変わりはじめている。

■実践で前提は変わる

いかがだったろうか。

「そんな簡単なこと、ポリアモリーなんてやらなくてもわかってるよ」

という声が多数かもしれない。

でも僕はやらなければ、わからなかった。

ポリアモリーを実践するまではロジックだけで解ったふりをして、それを自分の都合のいいように解釈をして、自分の中に孕んでいた矛盾と向き合えていなかった。

それに気づけただけでも、ポリアモリーを実践してみてよかったと思う。

積み重ねた幾重ものロジックは、たった1回の実践でその前提が変化することを知った。

これから先、いつまでポリアモリーを実践するかはわからないが、きっとこの数年間と同じように、自分は少しずつ変化していくのだと思う。


(ちなみにポリアモリーウィーク・ジャパン2023の本番は来週からスタートします)

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小島 雄一郎
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