厚生年金保険料の引き上げ ミドルクラスにとってキツイ負担増
厚生労働省は、2027年9月をめどに高所得会社員の厚生年金保険料の上限を引き上げる調整に入りました。
現在は月収65万円の水準を超えると、月収が80万円でも100万円でも厚生年金保険料(自己負担分)は5.9475万円で固定となって、変わらないという内容です。これを収入に合わせてより多くを収めてもらい、年金財政を健全化させる狙いがあります。
一番高い区分を75万円、79万円、83万円、98万円のいずれかに引き上げる方針が示されており、加入者と事業者の保険料負担はそれぞれ月9千円~3万円ほど増す試算です。
厚労省の試算では上限が75万円になった場合、該当者の保険料負担が月9000円増え、20年納付すれば将来受け取る厚生年金は月1万円増になるということです。年金をもらう期間が18年になれば計算上はプラスになるようです。
しかし、ミドルクラスにとっては物価上昇などで今の負担増の方が気になるところです。子育て中の家庭で育ち盛りの子供が多い場合、生鮮食品やガソリン代の値上げ、住居費や住宅ローンの上昇などはインパクトがあります。もちろん、教育費無償化など様々な恩恵も増えてはいるかもしれません。高齢になれば、自然と教育費や食費など支出は減るので、将来よりも今の負担を軽減してほしい方が多いようにも感じます。
年収798万円以上(賞与を除く)の人が対象ということで、年収798万円は高所得者ではないという意見がSNSでも広がっています。また、中小企業の事業主にとっても大きな負担増になりそうです。
103万円の壁撤廃による減税は年末に123万円案でまとまりました。その内容を見ると、所得税の基礎控除10万円アップで年収800万円の方が受ける減税額は年間2万円程度です。厚生年金保険料の負担増の方がずっと大きくなります。
その後も再協議されており、2月中旬をめどに150万円まであげる方向性で議論されています。壁が引き上がるだけではなくその中身にも注目されます。
基礎控除部分に関しては多くの人に影響を与えます。しかし、税額が最低ラインの方の給与所得控除を上げるという内容に留まれば、ミドルクラス以上の方には関係ありません。
社会保険料も扶養の方、負担しなければならない方、税金も非課税で働ける方、そうではない方と不公平感が強くなると分断が進むのではないかと懸念されます。ミドルクラスの消費が伸びないと日本経済も失速してしまいそうなので、この層を救うような政策も必要なのではないでしょうか。