
SpotifyからなぜK-popの曲が大量に消えたのか
今朝起きたら、Spotifyから大量のK-popの楽曲が消えていた。Twitterを開くと、世界中の音楽ファンやアーティストがお気に入りのアーティストの曲が配信されなくなったことを知り、TLは騒然としている。一体何が起きたのか、現時点(アメリカでは現在2月28日の11時)でわかっていることをまとめます。今のところ日本語での情報は出ていないので、新しい発表が出たら追記します。
(追記:28日21時現在、SpotifyとKakao Mから新たな声明文が発表されましたが、お互いの主張を否定する形のもので、依然として交渉の実態は把握されていません。)
速報:Kakao MはSpotifyの声明文を否定し、Spotify側がライセンシングの契約を更新しなかったと主張。
— 竹田ダニエル (new) (@daniel_takedaa) March 1, 2021
「カカオMは独自の声明で反論し、カカオM側からの要請があったにもかかわらず、契約を更新しないことにしたのはSpotifyの方だと主張した。」 https://t.co/jKP4aIDSyM
「世界的な音楽配信サービス大手であるSpotifyは、Melon、Genie、Flo(플로)などと並んで、韓国でもサービス展開を(2月1日に)開始した。一方、Melonは韓国で最も人気のある音楽配信サービスであり、国内の楽曲を豊富に取り揃えている。親会社のKakaoMは、IU、MONSTA X、SEVENTEEN、LOONA、MAMAMOO、THE BOYZ、GFRIEND、(G)I-DLE、ASTROなどのヒット曲を含む、数千ものK-POPソングを配信している。
3月1日、カカオMが配信していた楽曲が世界的な音楽プラットフォームから削除されたと報じられ、ファンもアーティストもこのニュースに衝撃を受けた。」
1)消えたのは超人気アーティスト含む大量の楽曲
具体的に、どのようなアーティストの楽曲が消えたのか。想像を遥かに超える、大量の人気アーティストの名前が連なっている。
artists that had their stuff on spotify deleted, a thread
— ً (@lemonphobic) February 28, 2021
wei
kim wooseok
the boyz
d1ce
bibi
minseo
iu
victon
pink fantasy
epik high
cherry bullet
oneus
e'last
cravity
giriboy
june
kim sunggyu
bae173
moonbyul
dpr live
wh3n
woo!ah!
hyolyn
code kunst
drippin
jannabi
jukjae
世界的人気アーティストのIUのディスコグラフィーを見ても、最近の作品が消え、過去のアルバムでも一部楽曲のみが残されているような状況だ。
現段階ではアメリカだけでなく、カナダやUKなどでも同じ状況が報告されている。さらに削除されている楽曲は、全てKakao Mがライセンシングを行っているものばかり。つまり、Kakao Mをディストリビューターとして利用し、Kakao Mを通してリリースされた楽曲がSpotifyから撤去されているのだ。
「SM、YG、JYP、Big Hitなどの大手事務所からリリースされているものは基本的に影響を受けていないようだが、小規模なレーベルからリリースされたものは(Kakao Mのディストリビューションを利用していることより)削除されている楽曲が多い。一方で、例えばGFriendのディスコグラフィーはBig HitではなくKakao Mを経由して配信していたため、ほとんどが消滅しているようだ。」
2)なぜこんなことが起きたのか
現段階で推測されているのは、今まで韓国で主流サービスだったMelonとの競争を制限するために、Spotifyが楽曲を「入手」できないようにKakao Mが制限をかけたのではないかということだ。こちらのスレッドを訳しながら、紹介します。
「Kakao Mは独自のストリーミングサービス「Melon」を運営しており、韓国の音楽・ストリーミング業界をほぼ独占している。数年前に韓国でサービスを開始したAppleMusicは、韓国の音楽を使用するライセンスを求めていた。AppleMusicは韓国でサービスを開始した数年前、韓国音楽のライセンスを求めて三大代理店(SM, JYP, YG)と音楽契約を結んだが、Kakao Mから音楽を入手することができなかった。そこでAppleはKakao Mの音源を仕方なく手放してサービスを開始し、現在の韓国でのシェアはめちゃくちゃなことになっている。
そしてSpotifyは2021年に韓国でサービスを開始したが、Spotifyの特徴は、韓国人がVPNで海外のサービスを利用する場合、AppleMusicよりもはるかに簡単に利用できるということ。Spotifyのストリーミングサービスは無料だし、VPNの使い方さえ知っていれば、海外のSpotifyを利用して韓国のKakao Mの暴政を避けることができる(実際、現在のSpotify韓国サービスにはKakao Mでディストリビュートされた音源が配信されておらず、韓国人が韓国の公式Spotifyを利用する際には韓国人が韓国のミュージシャンの曲を再生できない、なんて馬鹿げたことになっている)ので、もちろん韓国人は海外のSpotifyのサービスを利用することになる。結果として、当然Melonを利用する人が減る。正式にSpotifyのサービス展開が始まり、韓国の公式サイトができて大々的に宣伝されるようになれば、その良さがより多くの人に知られるようになり、Melon独占権が薄れていくということでもある。
そこで、Kakao Mは全世界のSpotifyで彼らの音楽ライセンスをブロックすることにしたのだ。」
3)アーティストの困惑の声
アーティストや音楽関係者からも、困惑の声が上がっている。
Epik HighのTabloはツイッターで、最新アルバム『Epik High Is Here』がSpotifyで配信されなくなっていることをファンに伝えた。「どうやら我々のディストリビューターであるKakao MとSpotifyが、僕らの意思に反して新しいアルバムを世界中でアクセスできなくしたようだ。これが誰のせいかはさておいて、なぜ企業が芸術よりも欲を優先する際には、いつもアーティストとファンが苦しまなければならないのか」と現状への不満を表明した。
Apparently a disagreement between our distributor Kakao M & Spotify has made our new album Epik High Is Here unavailable globally against our will. Regardless of who is at fault, why is it always the artists and the fans that suffer when businesses place greed over art?
— 에픽하이 타블로 | Tablo of Epik High (@blobyblo) February 28, 2021
一方、EN Managementの創始者であるEddie Nam(Epik HighやEric Namなどのアーティストのマネジメントを担当)は「マネージャーとして、友達として、そしてファンとして、Epik Highのアルバムが世界中のSpotifyから消えていることは絶望的だ。一刻も早く解決策が必要だ。」と訴えている。
Epik High’s albums, “Epik High Is Here” and “Sleepless in __________” are both unavailable on Spotify globally. This is heartbreaking as a manager, friend and fan. There needs to be a solution ASAP.
— Eddie Nam (@eddienam) February 28, 2021
4)最後に
インディペンデントアーティストはCDを作らなくとも簡単に世界中に楽曲を流通させることができるのは、Spotifyのような配信サービスが存在し、Kakao Mのようなディストリビューションサービスが存在しているからだ。たくさんのアーティストが大手事務所やレーベルに所属しなくとも、世界中のファンを獲得できるような、「民主的な」時代になったと言われる事も多い。一方で、このように企業の判断一つで大量のアーティスト、そして数えきれないようなファンに大きな影響を与えてしまうことは、「音楽」という商品をサービスとして扱っている限りはつきものだ。K-popが世界的に求められるようになった今、韓国での音楽サービスの激戦が世界中に与える影響を実感する出来事になりそうです。