前田晃平 / 内閣官房
【図解】 文明の崩壊。 昨今の異常気象と正面から向き合ってみる
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【図解】 文明の崩壊。 昨今の異常気象と正面から向き合ってみる

前田晃平 / 内閣官房

最近、天気がおかしくないですか?

あらゆるメディアのニュースは未だに新型コロナウイルスで持ちきりですが、その陰で異常気象による被害が日増しに拡大しています。今年7月に九州各地や岐阜、長野、山形の各県を豪雨が襲いましたが、気象庁で異常気象分析検討会の会長を務める中村尚・東京大学教授はこう述べました。

「明らかに異常だった」

いわゆる、地球温暖化、気候変動の影響です(※)。新型コロナ対策で右往左往する人類を尻目に、世界中で変わらず猛威をふるっています。台風、豪雨、旱魃、山火事…

※ : 記事中にある通り、専門家の多くは個々の異常気象を温暖化と直結させることには慎重です。しかし、今年7月の異常気象分析検討会では「今回の一連の大雨では、地球温暖化の進行に伴う長期的な大気中の水蒸気の増加により降水量が増えた可能性がある」と関連性が明記されました。

この話になると、声には出さずともこう感じる人は少なくないと思います。「被災地の人は大変だと思うけど、あんまりピンとこない」と。正直、私もそうでした。

こういう声なき声がたくさんあることを踏まえて、国連はとてもわかりやすく情報発信をしています。

曰く「環境が脅かされると、経済にも大きな損害を与えます。例えば、昨年日本を襲った台風19号による想定被害額は約1兆6000億円でした」

曰く「1998年~2017年の間の自然災害による経済損失額は世界全体で2兆9080億ドル(約330兆円)に上り、損失の大きさを国別で見ると日本は3位に位置しています」

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出典:(SDGs レポートVol.4)気候変動が経済に与えるリスクと対策


しばしば環境問題は私たちの日常生活を支える経済と対比されがちですが、実はどっちも大事なんだよ、ってことですね。被害額、マジやばいじゃん。

しかし、それでもなお、こう感じる人は少なくないと思います。「そうはいっても、ピンとこない」と。正直、私もそうでした。なぜなら、実際に被災しない限りは日常生活に目立った変化を感じることがないからです。

気候変動が引き起こす自然災害は人だけでなくあらゆる動植物に対して、極めて広範囲に深刻な被害をもたらしています。しかも、現在進行形で。「それはわかっているけれど、目の前の生活の方が大事」そう無意識に考えていた私。日常の中で環境問題に関するアンテナはほぼ圏外といっていいレベルでした。ある一冊の本に出会うまでは。

ジャレド・ダイアモンド教授の「文明崩壊」です。


本書は、古今東西の人類の歴史の中で消滅した、あるいは、消滅しかかっている文明社会にスポットライトをあて、その消滅の原因を考古学、地質学、生物地理学などの複合的な視点で考察しています。

本書の主張は極めてシンプル。文明が滅びる理由は当然その文明の数だけあるが、実はその根っこには共通点がある。それが、人類による自然・生態系の破壊である。それが様々な災害・人災に繋がり、生活に必要な資源が枯渇する。最後はその限られた資源を人間同士で奪い合い、殺し合って終焉を迎える、と。

このシンプルな筋書きを、これでもか!これでもか!っていうくらい徹底的にエビデンスを積み重ねて、下支えしています(本書の大部分は仮説の科学的検証手法とそこから得られた結果の分析と解釈に当てられています)。

本書が取り上げた文明は当初どれも栄えていました。それが危機に転じてもなお人々はこう考えていました。「なんか周りの環境が少しづつ変わっててヤバそうだけど、ピンとこない」と。そして、行動を起こさなかったのです。今の私たちと同じように。そして、ほんの数十年後に社会そのものが消滅してしまいました。

ここで、かつて栄華を極めた文明が実際に崩壊した例をみてみましょう。ただ、細かく書いていくと大変な文章量になるので、ここは私の独断と偏見で図解してみます。詳細が気になる人はぜひ本書を読んでね!


イースター島の盛衰

パスクア島(通称、イースター島)は、南太平洋に浮かぶ小さな島です。一番近くの島・大陸から2000km以上離れているというまさに絶海の孤島。ここは、モアイ像で有名ですよね。

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ここは人類の文明の盛衰を俯瞰する上で、とても大きなヒントを与えてくれます。人々は外の世界と交わる機会がなく、そして、何か島で問題が起こっても別の場所に逃げ出すことが出来ない状況だからです。まさに我々にとっての地球と同じです。地球環境がボロボロになったからといって別の惑星に逃げ出すことはできません(今のところは)。

西暦900年頃に初めて人類がほんの数人でこの島にやってきた時、パスクア島は亜熱帯性雨林に覆われている島でした。とても豊かな生物多様性を持っていました。

それが、1722年に欧州人が初めて本島を発見した時、そこには樹木がただの一本もありませんでした。荒涼とした大地と、痩せ細った人たちがいるのみ。なのに、そこには明らかに周囲の環境と不釣り合いな巨大なモアイ像が屹立していたのです。

このギャップは、外国人の好奇心を掻き立てました。ここにいる人たちの技術レベルとこの島の資源でこんな大きい像を作るのは不可能だ、これは宇宙人の仕業なのではないか、と。

しかし実際はもちろん、島の人々の祖先が作ったものでした。西暦900年に人類が島に到達してから、欧州人が島を発見するまでの約800年の間に、いったい何があったのか?

極めてシンプルにいうと、人類は島の自然と生態系を破壊することで急速な発展を遂げることができたけど、人口が増えすぎ&資源が枯渇して、生活が維持できなくなってしまったのです。図解するとこんな感じです。

【文明の崩壊】note内画像

パスクア島の人々が森林伐採をせっせとやっていた時、小さい島のことですから、いつかそれがなくなることは自明だったと思います。それでも、止めることはできませんでした。最後の木を切り倒した人は、その時に何を思ったことか…

かつて島の人々の祖先は海で隔てられた2,000kmを超える距離をカヌーで超えてやってきたのに、終末期にはそれを作るための樹木がなくなり、漁をすることすらできなくなりました。近海で辛うじて取れた甲殻類などは食べ尽くしてしまいました。陸地の大型動物も同様でその多くが絶滅。樹木がなくなり丸裸になった大地には栄養がなくなり、まともに作物が育たなくなりました。そして、最終的には人間同士で限られた資源を巡って殺し合いが始まってしまったのです。

このプロセスを知らずに、社会が崩壊した後の島の状況を目の当たりにした欧州人たちにとって、モアイ像の存在は摩訶不思議だったに違いありません。

本書では他にもたくさんの文明社会の崩壊のプロセスを綿密に描いていますが、パスクア島のごとく、自然資源を使い果たして生態系を損ない、膨れ上がった人口を維持できなくなって、最後は人間同士殺し合い、というパターンはほぼ共通しています。


私たちは大きなイースター島に住んでいる

こういう話をすると必ずこういう反論があります。「現代に生きる私たちは彼らとは違う。遥かに高度な文明を持っているし、それを支える科学技術がある」

確かに。今の私たちはパスクア島の人々とは違います。その科学技術を活用して彼らとはまさに桁違いの環境破壊を日々行っているし、殺し合いといってもお粗末な鉄器で殴り殴られをやっていた彼らと違い、ボタンひとつで何百万人を一瞬で虐殺できる核兵器を持っています。

そして本当に悲しいことに、我々の自然破壊の影響はすでに世界中で顕在化しており、大きな被害を出し始めています。気候変動が地域の自然資源や生態系、農業に大きな打撃を与え、貧富の差を作り出し、人間同士の殺し合いに発展しています。

レオナルド・ディカプリオ主演のドキュメンタリー「地球が壊れる前に」が気候変動の地球への影響を克明に描いています。オススメ!


また、国によっては既に気候変動で地球上から消えそうになっているところもあります。例えば、モルディブは海面上昇で海の底に沈もうとしています。

モルディブ大統領(当時)が国際社会に気候変動を解決するべく行動を促すプロセスをまとめたドキュメンタリー映画「南の島の大統領」も超オススメ


そしてもちろん、これは発展途上国だけの話ではありません。つい先日、アメリカ西海岸で大火事がありましたが、これも気候変動の影響であるとオバマ元大統領はじめ多くの専門家が警鐘を鳴らしています。


にも関わらず、私たちの多くはまだピンときてません。気候変動を止めるための国際会議は関係各位の努力で着実に前進しつつあるものの、足並みは揃いません。というか、国際社会どころか、最近日本でも与野党のリーダーを決める選挙がありましたけども、環境問題のことに言及した候補っていらっしゃいましたっけ…?

ただ、この国内外の政治家の姿勢は私たちひとりひとりの行動によって決まっています。「国民はそんなに関心ないでしょ、それより目の前の経済優先!」というわけです。もちろん、経済は大事。当たり前です。しかし、記事の冒頭で紹介した通り環境問題は経済にも甚大なダメージを与えています。現状は、誰にとっても不幸なんです。このままでは完全に文明崩壊ルートです。

この絶望ルートを変えるには、私たちひとりひとりが真摯にこの問題に向き合うしかありません。実際、レイチェル・カーソンの「沈黙の春」以降、私たちの社会は変わってきました。

私たちの持つ一票で政治家の行動を促し、日々の商品選びで企業活動を変えることができます。それが結実した例もまた本書でたくさん紹介されています。

私たちはパスクア島の人々と同じように、地球がめちゃくちゃになったからといって別の惑星に引っ越すことはできません。私たちは地球という大きなパスクア島に住んでいるのです。

でも私たちは当時の人々と異なり、古今東西の文明が自然破壊によって滅びていったことを知っています。この学びを活かして、もうすぐ1才になる私の娘にも、そして将来の孫たちにも豊な環境を残したいなと切実に思うのです。


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内閣官房こども家庭庁設立準備室参事官補佐。政府「こども政策の推進に係る有識者会議」メンバー。前職 : 認定NPO法人フローレンス代表室長、Recruit HLD新規事業開発室PM。著書『パパの家庭進出がニッポンを変えるのだ』▶︎http://amzn.to/2QTNtCn