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米10年金利はどこまで上がるのか

「米金利がどこまで上がるか」は2021年の金融市場を見通す上での要諦になりそうです。実体経済対比で進む株高も、昨年大幅に進んだドル安も全ては昨年3月にFRBが一気に▲150bpsの利下げを敢行し、10年を筆頭とするあらゆる年限の金利が歴史的低水準で張り付いていることに起因していると考えられます。現状、米金利の中でも最も注目される10年金利は昨年3月以降、1.0~1.2%のレンジで推移しています。コロナ以前、米国の潜在成長率は3%強という試算もあったことを思えば、超低金利と言って差し支えありません。

しかし、現状と3か月後、6か月後もしくは1年後を比較して「景気が悪くなる」と思っている向きは少数でしょう。10年金利を筆頭に市中金利は普通に考えれば上がるはずです。この点、異論は少ないと思いますし、実際そうなってきています:


問題はどれくらい上がるか、です。この点については色々な考え方があり得ます。例えば米国の潜在成長率との関連からイメージを作るとどうなるでしょうか。米10年金利と米議会予算局(CBO)の推計する名目ベースの潜在成長率の推移を見てみましょう。CBO推計によれば、直近5年(2015~19年)の潜在成長率は平均+3.5%でした。これに対して同期間の米10年金利は平均2.2%です。また、直近3年(2017~19年)では平均+3.8%に対し、平均2.4%でした。つまり、コロナ以前から米10年金利は潜在成長率より▲120~140bpsほど低い水準が常態化していたことになります。コロナショックの深手を考えれば、当面の米10年金利はこの目線以下で考えた方が良いのでしょう。CBOの推計する2021年の潜在成長率は+2.8%なので、そこから▲120~140bpsほど低い1.4~1.6%が10年金利に対する1つの目線になるでしょうか。

10年-2年スプレッドからのイメージ
利回り曲線(イールドカーブ)の形状からイメージを得る方法もあります。米10年金利と米2年金利の差(スプレッド)を見ると、現在は約100bpsまで拡がっており、これは3回利上げしていた2017年に近い水準である。ちなみに正常化プロセスの号砲と解釈された2013年5月22日のバーナンキ元FRB議長の議会証言(通称バーナンキショック)の頃は160bps程度でした。つまり、「これから正常化プロセスが始めよう」という局面では160bps程度だったという見方もできます。とすれば、10年-2年スプレッドは150~160bpsくらいまでの拡大が限界かもしれません。

一般的に2年金利は政策金利と相関が強く、10年金利はインフレ期待や景気の先行きと相関が強いと解釈されます。政策金利は2023年末までゼロ金利維持で意見集約されており、この前提は堅いでしょう。とすると、「10年-2年スプレッドが150bps」を上限とした場合、10年金利に残された上昇余地はあと50bps程度という話になる。足許から言えば、やはり1.50%、頑張って1.60%程度というイメージになりそうです。年内にバーナンキショックのような段階まで到達することはないとすれば、1.50~1.60%が限界というのは腑に落ちます。例えば、もっとありそうなシナリオとして年内の10年金利の上限を1.50%に置いた上で、為替市場を中心とする資産価格の予想を策定するという基本姿勢はそれほど的外れではないように思えます。

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