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デザインとアートの接近をみる

従来の枠組みが壊されても、すべてがボーダーレスになるわけでもなく、なんらかの新しい区切りはできていくーーそれでも、枠組みが壊されたり、新しい繋がりができるシーンには期待で心が躍るものです。

現在、ミラノのデザイン関係者たちは16-21日の6日間に渡り実施されるミラノサローネ国際家具見本市やデザインウィークの準備で大わらわです。

2月に行われたプレス発表については上の記事に書きましたが、デザイン関係者の1人であるぼくも、さまざまな渦のなかにいます。

今年の大きな変化について感想を一言で表すと「やっと、皆が繋がってきた」。

これまでミラノサローネ国際家具見本市と市内で数々に開催されるイベント(フオーリサローネ)との連携が弱くーお互いが反目しあっているのではないか?と外部からは見えることがありましたー、またこのデザインウィークの前週に開催されるアートフェア(MiArt)と翌週のイベントの間には何の関係もありませんでした。

それが数年前からデザインウィークという括りでサローネとフオーリは接近をはじめ、今年、MiArtのクリエイティブディレクターもフオーリサローネのテーマの設定に参加したと言うのです。

特にMiArtとの連携は、こんなにもお互いの開催時期を近づけておきながら無関係であるのが不思議なくらいでした。「少しはお互いに手をのばしあったら?」とお節介にも外部の人間に思わせるくらいに、です。

今日、サローネや関係組織の主催でミラノにあるホテル・プリチペ・ディ・サヴォイアにおいてイタリアのメディア向けの昼食会がありました。そこで同じテーブルにいたジャーナリストにこのあたりの「対話」について意見を求めたら、「少なくてもコンセプトにおいては、もうそうせざるを得ないタイミング」と一発でコメントが返ってきました。

彼女の「少なくてもコンセプトにおいて」との言葉は展示当事者があまりに多く(サローネ自体でおよそ1500の展示企業と600に及ぶ若手登竜門のサテリテに参加するデザイナーや教育機関、フオーリサローネの1000近くのイベント主催者が当事者にあたる)、それぞれの当事者が「デザインとアートの対話」を特別に意識するはずもない現実を指しています。

実際のビジネスの現場では「これはデザイン範疇」「あっちはファインアート」と区別を言い合うのは相変わらず続くでしょう。

しかしながら、上述のように大きなところで枠組みが意図をもって変わりつつあるわけです。人々のリアルな感覚に枠組みが沿うように重い腰をあげてきた、と言えるかもしれません。

昼食会の後、デザインやアートに強いPRエージェンシーのオフィスに出かけ、このテーマについてさらに議論をしてみました。個々の商品開発や企業方針のレベルにどれだけ「新しい世界観」が落とし込まれているだろうか?と。あるいは、そうした世界観を推進しようとしているか?と。

この文脈にあっている事例をいくつか示唆してもらい、ぼくの来週のデザインウィークの探索方針がおよそ決まってきました。そして、20日からスタートするヴェネツィアビエンナーレ(アート)にも行かねば、です。

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冒頭の写真(©ミラノサローネ)は2月のサローネのプレス発表のシーンです。代表のマリア・ポッロが舞台上で話しています。彼女自身、ブレラ美術大学の出身であり、舞台美術の仕事を経験した後に家業の家具メーカーに入ります。そして2020年、30代後半でサローネの代表に就任しました。それから、さまざまに新しい試みを行っています。

デザインとアートの世界の接近に彼女自身がどこまで関与しているのかは分かりませんが、その接近を阻止するのではなく背中を押す側にいるであろうとは想像できます。


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