欧州金融政策変更はまだ必要なしか
ユーロ圏のインフレ率は3月に大幅低下した。総合インフレ率は8.5%から6.9%に大幅減速したのだが、これは概ねエネルギー主導の低下だった。
ただし、このままインフレ率が収まっていくのかというとそうでもないのではないかと考える。理由は三つ。第一に、食品価格からのインフレ圧力が続くであろうこと。食品価格上昇率そのものは、FAOの食品価格指数がドルベースで21%も低下するなど国際価格が昨年3月のピークから著しく下落していることから減速を始めると見られる。しかし、サプライチェーン全体で見たとき、具体的には食品の製造業者や小売業者が引き続きコスト上昇分の転嫁によって利益率の回復を図ることを踏まえると考えられることから、食品価格のインフレは硬直的である可能性があると見るべきだからである。さらに、南欧の干ばつによって、不作となった果物、オリーブ油、乳製品などの価格上昇もありうる。第二に、サービス価格の上昇率が依然高いこと。娯楽・文化といった賃金集約型の項目の上昇を一因に、2月の4.8%から3月には過去最高の5.1%へ加速したところである。第三にサービス価格の上昇を下支えするものとして、賃上げ圧力が継続するであろうことだ。ユーロ圏の労働市況が活況であること、一部の賃金はインフレ率に連動してあがる仕組みになっていることや、各業種の賃上げ要求にはそれまえの物価上昇が考慮されることから、インフレ上昇後の賃上げの可能性は大きい。
以上より、総じて3月のインフレデータはECBの政策には影響をしなかったことがわかっている。問題は4月のデータだが、これも上記で述べた点が継続的に期待されるとすれば様変わりはしていないはずである。そうだとすれば、コアインフレ率が過去最高水準で高止まりすると考えられるため、ECBは引き続き少なくとも25bpの利上げを行うであろうと考える。足元では欧州にも金融システム不安の状況があるが、現状のように当局は歯止めをかけている段階であれば、金融引き締め策自体の大きな足かせにはならないのではないか。