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多くの誤解がある社会保障

社会保障の効率化では、以前から医療費が重要と言われてきました。2018年5月に公表された政府推計の見通しどおりに社会保障給付費が増えると仮定すると、その4割程度が医療費の増加で説明できるからです。それに対して、政府はどのようなことをやろうとしてきたのでしょうか。

例えば、現在は新型コロナウィルスの感染拡大で抑制されていますが、高齢者の方々の過剰診療という問題がありました。このため、過剰な診療を抑制したり、市販されている薬は医者から処方されても保険適用外にすること等が検討されてきました。ジェネリックの利用率をさらに高めるなど、余地はまだあるでしょう。

また、今回のコロナ・ショックの給付金で海外に後れをとったのは、マイナンバーが銀行口座と紐づけされていないことでした。マイナンバーの銀行口座との紐づけを義務化して資産を把握できれば、75歳以上の後期高齢者でも裕福な人は医療費の負担を増やして、1割負担を2割負担にできます。収入が少なくても、巨額の金融資産を保有している高齢者は生活に困らないわけですので、そういう方には医療費を多めに負担してもらうというところにもメスを入れる余地はあると考えているようです。

このため、今後は医療提供体制を充実するとともに、医療費を中心とした社会保障の効率化を行うことも重要でしょう。結局、安易に増税したり過度に財政不安を煽りすぎると、余計に消費者の財布の紐は締まってしまいますので、却って財政に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。

年金についても、私たちが日ごろ払っている消費税が公的年金の原資になっていることは、一般にはあまり浸透していません。

サラリーマンの場合、年金保険料をほぼ強制的に払わされていますが、そうではない人の中には、「どうせ、歳を食った時に貰えないだろうから払わない」という人がいます。

しかし、年金保険料を払わなくても、日頃から消費税で払っているわけです。それなのに年金保険料を払わなければ公的年金の受給資格を失ってしまうわけですので、これはもったいないと思います。

さらに、よくいわれる2022年問題というのも誤解があります。団塊の世代が後期高齢者入りする2022年には社会保障給付費が急激に増えるといわれていますが、そんなことはありません。団塊世代の年金だけで考えるとそうなるのですが、医療費等も全て含めると、シニアの人口の伸びが非常に重要になるのです。

実は、2020年代というのは、シニア全体でみた人口の伸び率が低下する局面なのです。このため団塊世代が後期高齢者入りしても、そこだけで医療費が一気に上がるわけではなく、むしろ人口の伸びの鈍化が押し下げに効いてくるため、社会保障給付費が伸びにくくなるという側面もあるのです。

例えば、財務省の推計などで75歳以上の医療費を計算する場合、75歳以上のすべての人を平均した一人当たり医療費を前提に数字を出しているので、75歳になると急に上がるような印象を受けますが、実際には75歳で急激に上がるわけではありません。

このように、社会保障の効率化というのはまだ余地がありますので、安易に増税を行うのではなく、いろいろなやり方を工夫してほしいものです。

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