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何もすることのない徳之島〜ファストの象徴の飛行機がもたらした超スロー体験

九州の地域航空が、いよいよJAL・ANAの壁を越えて協力する。次の記事は、「大手2社が系列を超えて共同運航するのは初めて」ということを報じている。正直、この2社の共同運行が初めてということに驚いた。

何もしない5日間

共同運行は、なんとも喜ばしいことである。なぜなら私自身、数年前に徳之島で台風に見舞われ、お盆の繁忙期であったことも重なり、そのまま5日間、徳之島から出られなくなった経験があるからだ。なかなか振替便が取れず、苦労した。共同運行があれば、もっと早く便が見つかったかもしれない。

徳之島から戻ったらすぐにスイスに行く予定だったのだが、その出張もキャンセルすることになってしまった。そして私が代わりに得たものは、「何もしない5日間」であった。

美しい砂浜に出ると、そこにはひとっこ一人いない風景が広がっていた。

徳之島のビーチ。さながらプライベートビーチだ

そして、車を走らせども走らせども続く、サトウキビ畑。何の目的もなくこの島にいることの、なんと豊かなことか。

サトウキビ畑はどこまでも続く

便利を手放すと、地球と人とつながる

この5日間は、その直後の海外出張を諦めるまでは災難でしかなかった。しかし、出張を諦めたら、もうパラダイスにしか見えなかった。ここには、見て回る観光地はそれほどないが、そこにはただただ、いつもある自然と、その自然の流れに従って生きる島の日常があった。

飛行機は便利な乗り物である。しかし、時には自然には敵わない人間社会のちっぽけさを思い知らせてくれるツールにもなる。

ハプニングとサプライズを面として提供するスローな航空業界へ

飛行機は、カーボンニュートラルの観点では悪者になりやすい。しかし、見方を変えると、人々を都市生活から分離し、スローな体験に没入させる可能性を秘めている。

もっと、航空会社は「ハプニング」を意図的に取り込んだ商品を増やしたらどうだろうか。出張から帰ってすぐに仕事に戻るのではなく、あえての寄り道を提供してくれたら、スローになれる人も増えるに違いない。例えば「ワーケーション割」とか銘打って、一週間いろいろ連れ回してもらえるのも面白い。

効率性を重視していた時代は、速く飛ぶことに意味があった。サステナビリティの時代は、できるだけ人々のスピードを下げて、豊かな日常を生み出すことが、航空業界の価値になるのではないか。

九州の共同運行をきっかけに、みんなで五日間をどこで過ごすか分からないワーケーション割をやってみてほしい。それが、航空業界を変えるきっかけになるかもしれない。

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