たくさんの「桃太郎」や「わらしべ長者」が買い合う社会
「桃太郎」が、「人生でお金のことをどう考えたらよいかを伝えている」という記事を見つけた。お金の意味や価値の本質を考えるのに役立つという。物語は、おじいさんとおばあさんの偉大さや感謝の気持ちから始まる。その後、青年になった桃太郎は社会の悪である鬼退治に向かう。その際、おじいさんとおばあさんから授かったきびだんごを、自分だけで食べずに、犬と猿と雉に渡してお供にしていく。ここでは、人への思いやり、人生における学び、行動する勇気の大事さを、それぞれの動物に例えながら伝えてくれる。
桃太郎は、この動物たちへの適材適所な先行投資を経て、見事に鬼退治を実現するのだ。そして、宝物、つまり世間からの「信用」を持って帰り、幸せに暮らすという物語だ。改めて説明されると、昔話の奥深さに驚くばかりだ。登場人物のみならず、社会を含めた幸せが描かれていると思う。
この記事には、わらしべ長者の話も載っているが、その話からは、今の世界にこそ必要な心構えを感じさせてくれる。まずは、前向きに諦めない姿勢だ。そして、「つかんだものを離すな」というお告げにも関わらず、「困っていることを解決できるなら譲る」というシンプルな行動に出る心の持ち様だ。最終的に物々交換を通じて、大きな富を掴んだという結末からは、改めて、解決を積み重ねていくと、結果として「大きな価値を得ることができるのだ」という「心のゆとり」をもらった気がする。
ふと、次に目に止まったのは、銀座、不屈の一番街という記事だ。コロナ禍を通じて生まれた「共に手を取り合う」という新しくて古い価値観の話だ。昨年8月、土佐料理のお店を持つ竹内氏の「銀座全体で宅配をやりませんか」という呼びかけから始まった。当時、銀座では各老舗が一国一城の主としての意識を強く持っていたが、竹内氏が対話を続ける中で、16店の老舗が賛同してくれて宅配が始まった。定期的に商品別の売れ行きや販売傾向などのデータも共有して改善を図っていった。「ライバル店のデータを知ることは、これまでは考えられないことだった」と竹内氏は話す。
老舗は、それぞれが凄腕の動物たち(職人たち)と共に力を発揮している「桃太郎」だと思う。銀座では、たくさんの桃太郎が集まり、触れ合い、刺激を受け合った。敵味方ではなく、知恵を出し合い、新たな魅力を生みだそうとしているのだ。こうしたやりとりを通じて、一人の桃太郎が生み出す価値とは比べ物にならない大きさの価値が生み出せるのではと感じている。シェア争いではない、凄技の組み合わせによる新たな価値の創出が始まりそうだ。
たくさんの桃太郎が、力を合わせて、大きな力を発揮する挑戦を探していると、「バイ・ふじのくに」という記事を見つけることができた。静岡・山梨両県の県民が互いの県産品を買い合う運動のようだ。それぞれの県の自慢のできる地場産品を多数揃えて、デパートで物産展を開いている。「スーパーで何気なくお得な商品を買う」ではなく、「相手の県のことを思い浮かべながら買い物を楽しむ」といった状況が生まれている様だ。恐らく、財布の紐が緩む消費が起きているのだと思う。
実際、2県での「買い合い」を行うことで、そうでない場合と比べて、1.5倍ほどの経済波及効果が生まれるそうだ。ここでの桃太郎は、自慢できる地場産品の生産者であり、わらしべ長者は「買い合い」の主人公である両県の県民であるような気がしている。
こうした活動は、誰かが新たな構想をぶち上げて、粘り強く進めることが必要なのだろう。勇気を持って、自分の会社や自分の県といった区分けから飛び出して、波及効果を起点とした活動を行うことを目指している気がする。波及効果の結果として、自分の会社や自分の県が潤うという形だ。正に、桃太郎やわらしべ長者からの学びと通ずる本質がある。
「人生100年こわくない・定年楽園への道」というシリーズの記事を見つけた。定年後にも仕事を続けられる成功の秘訣は、日頃から「ギブファーストで接する」ことだという。自分の能力を理解してくれている人が、転職の時には重要な存在になり、そうした人とつながる上で、ギブファーストの姿勢が必要になるのだ。日ごろから付き合う中で、相手が何か困っていることがあれば、それに対して解決してあげるか、または誰かを紹介する。こうした姿勢が大事なのは間違いないと思う。
最後は、「カリスマの直言」というシリーズでのさわかみ投信会長の澤上氏の言葉が目に止まった。「ここらあたりで「より人間っぽい」「情のある生き方」といった価値観へのシフトを社会全体で意識していいんじゃないかな」だ。私も正にそう思う。もっと、澤上氏の言う「安らぎを覚える価値観へのシフト」を進めたいと思う。顔の見える誰かのためにやる/応援する、周囲や社会に優しいことを続ける。こうすることで、自分にとっても良い結果は必ずついてくる。そんな心持ちに溢れる社会がありたい未来だと信じている。
ギブファースト、「売り勝つ」ではなく「買い合う」。まずは自分から実践していく。