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渡航中止勧告地域になったミラノの「学校生活」

昨日、3月6日、日本の外務省がイタリアのロンバルディア州を「渡航中止勧告:渡航はやめてください」(レベル3)の対象としました。同日現在、イタリア全体の新型コロナウィルスの感染者は3916人、死亡者197人、治癒した人は523人です。死亡者の平均年齢は81歳で持病があったという傾向があります。

そこで、今回危険度が高いとされるミラノを首都とするロンバルディア州をみると、2,612人が感染者、つまり全国の感染者の67%にあたります。

このなかで感染者の多い県を拾っていくと次のようになります。括弧は人口です(ロンバルディア州は10,060,000人でイタリアの人口のおよそ1/6です)。

ローディ739人(46,000人)、ベルガモ623人(122,000人)、クレモナ452人(73,000人)、ミラノ267人(3,200,000人)、ブレシア182人(1,300,000人)、パヴィア180人(546,000人)

上記にレッドゾーンと呼ばれる隔離地域があり、それらはローディ県の10の市です。というのも、イタリアにおける感染が急速に拡大していると認識された大きな契機が、2月20日のローディ県コドーニョでの感染者確認だったからです。

その他の州でもほぼ同時期に感染者がみつかり、事態の深刻さが一気に表面化したのですが、前述の数字で分かるように、ロンバルディア州の感染数が突出しています。新聞報道によれば、今日か明日には、ベルガモをレッドゾーンに入れるかどうか、クレモナの監視体制をより厳しくするかなどの決定がされる予定です。

地図で各県の位置を見れば分かるように、ミラノはかろうじて、まだ最悪の状況を回避している、あるいはなんとか持ちこたえている。そしてミラノが最大の人口を抱え、かつイタリア経済の中心であることからも、ミラノがレッドゾーン化とならないことが大きな課題になっています。

こういう状況(正確に言えば、このように状況が悪化することを防ぐ、あるいは見通し)で、ロンバルディアのすべての学校は2月24日から2週間の休校措置がとられ、今週には休校の範囲がイタリア全土に広がり、かつ期間が3月15日までと延期されました。イタリアでも日本でもマスメディアやソーシャルメディアなどで紹介されている、ミラノの高校の校長の生徒に向けたレターは休校の最初の日、2月25日に掲載されたものです。

一方、休校措置の1週間後、哲学者のウンベルト・ガリンベルティが動画で、子供たちにこの機会を使って学ばせることは何か?を語っています。これについて、今週、サンケイビスのコラムでぼくは紹介しました。人生は不安定であることを知らせることが大切だ、とガリンベルティは語っています。

さて、ミラノの高校の最終学年に通う18歳の息子が昨日、大いに嘆いていました。「もう、コロナが盛りだくさんでウンザリ!」と。なぜかと聞いてみると、先生たちからの課題がコロナだらけなのです。

数学の先生は、感染状況を統計的に分析しろ、と。イタリア語の先生は他国の感染状況を比較して論じろ、と。科学の先生は、ウィルスの変異について調べろ、と。歴史の先生は、20世紀前半に世界に広まったスペイン風邪の経験から今回の事態に対処できることは何かを論じよ、とか。

そりゃあ、うんざりする、とぼくもすぐ思いました。1人1人の先生は、「この事態で学べることは?」とポジティブにテーマを考えたのでしょうが、生徒にとっては「コロナ漬け」です。これは気がめいります。

上で紹介した校長先生や哲学者も、19世紀の小説家・マンゾーニ『いいなずけ』の中にあるミラノのペストの描写を読むように勧めています。実は、小学生の頃から、何度かこの本を子供たちは読まされており(子ども向けに簡単になっているのも含め)、息子によれば、結構、飽き飽きしている本だと言います。「また、マンゾーニかよ」と(確かに、そういう本ってありますよね、ぼくの時代だと夏目漱石とかかな?)。で、こんなにたくさん、新型コロナウィルス絡みの勉強をしないといけないとなると、古典を読み返す気にはなれない、というのです。ぼくも、これには同情します。

大人が肩に力を入れ過ぎないって、とても大切なことですね。注意しなくちゃあ。

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