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現状否定から、可能性発掘へ ーマネジメントにおける文脈のデザイン

最近、社内のtimes(slack内の個人的なことを自由に発信するチャンネル)で、こんなコトを書いた。

As-Isとは「現状」という意味で、よく「As-IsとTo Beを整理して…」というような言い方で、現状と理想を整理し、そのギャップから課題設定をするために使われる。現状と理想の差分から課題設定をして解消するアクションにつなげる、というのはビジネスでは一般的な知識として流通している。

問題設定から入らない

このとき、多くのマネージャーが「私たちのチーム/会社/事業にはこういう問題がある」と、現状を単に否定的に描き出す。実際、ぼくもやってしまいがちだ。

しかし、これが思考の癖として染み付いてしまうと、いつも現状の粗探しをし、「現状が悪いから解決する」という文脈が繰り返されてしまう。そうすると、チームのなかに「私たちは絶えずどこかが悪い」という認識が刷り込まれ、次第に問題解消疲れや無力感が醸成されていく。

そうではなく、現状のチームがもっている良いところや、まだ実現していない可能性に目を向け、良さを生かしながら可能性が実現した姿を描き、そこに蓋をするものとして問題を描きたい、というのが、ぼくのミドルマネージャーとしてのこだわりだ。

良さ・可能性・問題・課題・手段

真っ先に現状の問題を否定的に描くのではなく、その場に集う人々がもっている良さを活かし、可能性をより開いていくために、問題と課題を設定する。そしてその課題に取り組む具体的な手段を構想する。

ここでは「問題」を「良さを発揮することや可能性に蓋をする要因」とし、「課題」を「蓋を開ける(要因を解消する)ために取り組むべき問い」として設定している。

仮想のケース

仮想の具体例を以下に上げてみたい。

良さと可能性

たとえば、「良さ」として、部門のメンバーは多様なバックグラウンドと専門性をもっていて、さまざまなこだわりをもって仕事をしている点を上げる。加えて「可能性」として、個々人の良さを生かしながら、その多様な専門性を活かし合うチームワークができると、さらに良い仕事ができるようになる点を上げる。

良さ :メンバーの多様なバックグラウンド、専門性、こだわり
可能性:専門性を活かし合うチームワークの発揮

問題

しかし、良いチームワークを作り上げるには、個人のための時間からチームのための時間を作る必要がある。個人作業に追われてチーム活動に参加できない状態がつづくと、チームワークは発揮されない。

個人作業に追われる要因は、1人で仕事を抱え込んでしまい長く悩んだり、要件が把握できないまま思い込み、ずれた提案を繰り返してしまうなどがある。だがそれらは、チームでの分業を見直したり、他のメンバーの視点から要件の見立てを変えたり、チームワークによって解消できる可能性がある。

ここにポテンシャルに蓋をする問題を見立てる。つまり、「個人で業務や悩みを抱えるべき」と思い込ませている風土が自分たちの中にあり、それが個人の専門性やチームワークで発揮しうる価値に蓋をしていると見立てる。

問題:「個人で業務や悩みを抱えるべき」と思い込ませている風土

課題

ここでのコツは「個人が業務や悩みを抱え込んでいること」を直接問題にしないことだ。そうではなく「そうさせている環境、風土がある」と人の外に問題をおくこともポイントである。環境や風土をつくることには当然マネージャーも加担しているわけなので、みんなで解消すべき課題に変わる。

つまり、どうすれば業務や悩みを分かち合い、助け合い、良さを活かし合う風土が作れるのか?という課題だ。

課題:どうすれば業務や悩みを分かち合い、助け合い、良さを活かし合う風土が作れるのか?

手段

手段として、このチームでは具体的なアクションとして、週の初めに「朝会」を導入した。そこで、今週のストーリーをチームメンバーに書き出してもらう。「今週の自分は〇〇できるだろうか?」という形式で書き出してもらい、メンバーの業務量が逼迫していないか、悩みを解消できず1人で抱え込んでいないかを、お互いに配慮し合う。そしてマネージャーを中心に、助け舟を出し合う。そして週末に、そのストーリーがどうなったのかを振り返り共有する。

手段:業務量や内容、悩みを共有する朝会、助け舟、ふりかえりの習慣化

そのアクションの導入の際、なぜこれをやるのかという文脈を再度立て直す。「多様なバックグラウンドと専門性を持った人が集まっている点がこのチームの良さである。そしてそれをチームで活かし合うことがポテンシャルである。その良さとポテンシャルを発揮するために、個人で業務や悩みを抱え込む風土を変え、助け合い、活かし合う風土に変えていく。」

これを繰り返すことで、少しずつ業務負担が改善し、よりチームとしての価値発揮のためにできることを書き出す時間が生まれる。

良さ :メンバーの多様なバックグラウンド、専門性、こだわり
可能性:専門性を活かし合うチームワークの発揮
問題:「個人で業務や悩みを抱えるべき」と思い込ませている風土
理想:業務や悩みを助け合い、良さを活かし合う風土
課題:どうすれば業務や悩みを分かち合い、助け合い、良さを活かし合う風土が作れるのか?
手段:業務量や内容、悩みを共有する朝会、助け舟、ふりかえりの習慣化

まとめ

現状の良さと可能性を無視して、現状否定的な問題設定を繰り返すと、組織のなかに問題解消疲れや無力感が醸成されてしまう。場合によっては、問題や課題の設定すらもすっ飛ばして、手段がいきなり提案されることもある。するとなぜこれをやるのかを理解しないままみんなが手を動かすことになるので、結果として納得感がなく、手段は失敗に終わることもある。そして同じことが繰り返される。

この文章を書きながら思ったことだが、こうした前提の文脈を丁寧に整理し、チームや組織のなかに改善の歴史を積み上げることで、問題解消疲れに陥らず、「良い今」をつくりつづける感覚が得られるのではないかと思う。

最近では、マーク・ザッカーバーグが管理職を減らすなど組織のフラット化が話題だが、こうした文脈の調整を各職場でできるのはマネージャーという存在の意義だと思う。マネージャーがやらなくとも、こうした良さや可能性に立脚した文脈のデザインは不可欠な活動だ。

こうした文脈のデザインの考え方は、ぼくが働いているMIMIGURIのCo-CEOの安斎さんから多大な影響を受けている。そんな安斎さんがミドルマネージャーを対象に、チームで向き合うべき課題(問い)のデザインに関する無料ウェビナーを開催する。

ぼくのこの記事よりも何倍も解像度があがるレクチャーなので、関心をお持ちいただけた方はぜひご参加いただきたい。


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