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ロック魂で仕事すること

 かつてバンドをやっていた人たちが起業して活躍していると、3名の起業家の事例が記事になっていた。

 ROXXの中嶋さんは、ソフトバンクアカデミア仲間で、数年前に初めてお会いした時から、「おぉ、ロックだねー」という印象をもっていた。いつも、ライダーズジャケットを着ていたが、僕のボスの川邊健太郎さんもアドバイスしていたのだな。こういう格好をしているだけで、ROXXはきっとロックなんだなと思う。

 そういえば、ヤフーで2012年経営陣が若返った際のインタビューで、新経営陣となった宮坂社長、川邊副社長が「バンドやるようなもんです、経営は」と言っていた。家入一真さんや孫泰蔵さんも、「バンドやるように起業しよう!事業立ち上げしよう!」と仰っている。そういうものなのだろう。

 サイカの平尾さんは10年近く前から存じ上げている。プレゼンにエネルギーを感じた記憶があるが、これは、バンドマンの経験がなせる技なのだな、ということを改めてこの記事で感じた。サンアスタリスク小林泰平さんの記述を読むと、「常識を疑うパンク精神と、多様性を重んじる思想」は、まさにロック魂だし、それはスタートアップに必要なのだなと。ロックと起業は共通点がある。確かに。

 スタートアップのCEOたちがバンドのフロントマンなら、そこをサポートする人たちがいる。アーキタイプ中嶋淳さんは、仕事をご一緒させていただいたことが何回もあるが、ベンチャーキャピタリストというよりまさに音楽プロデューサーだ。

 僕もバンドをやっていた。そして、僕の仕事は音楽活動、という感覚をもっている。例えば、講演はライブ。僕はボーカル兼ギター兼ベース兼ドラマーとして、メロディのない歌を歌ってオーディエンスをポジティブな興奮に誘う。パネルディスカッションはジャムセッション。音を織り重ねるようにお互いの思いをぶつけ合いながら、新しい境地を共創する。

 書籍はスタジオ録音のアルバム。集中して、テーマに対して楽曲を提供する。アルバムが出ると、ツアーに出る。アルバム、ツアー、アルバム、ツアーの連続だ。

 所属する組織は、バンドみたいなものだ。例えばCharというミュージシャンは、Pink Cloud(JOHNNY, LOUIS & CHAR)というバンドをやっていて、同時にBAHOというデュオもやっていた。そしてPSYCHEDELIXというバンドも始めた。最終的に、PINK CLOUDは解散してPSYCHEDELIXに集中していく。これは複業をして、新しく所属した(始めた)ところに集中する、というのと同じだ。一方で、ソロ活動もしたりする。それは個人で仕事するのと同じだ。

 僕が、Zアカデミアの学長をやりながら、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長をやっているのも、Pink CloudとBAHOみたいなものだ。そう考えていくと、僕はそこでバンドをやっているようなものなのだ。

 で、その意味するところ。当たり前なのだが、ロック魂を持っている人間は、「曲を創る」「アルバムを創る」「ツアーに出る」「ライブに出る」「セッションをする」「展開を考える」「リズムを意識する」「観客を熱狂させる」「スターダムにのし上がっていく」といった、ロックをやっている感覚で、仕事をする、ということだ。

 その感覚を持って仕事をすると、時に「言語化できないけど、あの人のプレゼンは魅力的だ」「うまく言えないけど、なんだか、彼の事業はロックだよね」 という状況が生まれる。

 その時に、コンテンツクリエイター側は、ロックバンドを組むような形でチームをつくり、ロックバンドが成長していく時にようにプロデューサーと出会い、ロックバンドがアルバムをつくるようにサービスや本を世に出し、ロックバンドがライブをやるようにピッチをしたりしている。

 その感覚をもってすると、ものごとが案外、うまくいってしまったりする。
「だって、ロックじゃん」
「だって、カッコいいじゃん」
この感覚が、行動の原動力になり、何かを生み出す原動力になり、そのクオリティを高める最大の要素となっていることがあるのだ。

 僕の書籍や僕の講演(実際僕は講演と言わない、ライブと言っている)に関して言うと、確実にそうだ。本を書きながら、「今、A面ひっくり返して(古いが)、B面に入るあたりだろ?こんな曲調でいこう」とか、ライブで「今、バラード続いた。そろそろ、ヒット曲のイントロでバーンといく感じで盛り上げるか!」と盛り上げたりする。

 そこで勝負しようとする人は、一部に、そういう「意味不明な感覚」でビジネスを捉えている人間がいることを知っていた方がいい。これは意味不明な分、「強敵」になりうるし、「では自分は、どういう、燃え上がる感覚があるか」を知り、そこに「対抗」する必要があるのかもしれない。

 オーディエンス側の人は、そのサービスや仕事や著作に、そんな裏側もあったりすると知っておくと、より楽しめることも、、、あるかもしれない。

 わかる人にはわかる。わからない人にはわからない。
でも世界は案外、こんなことから、つくられていくんだ、と思う。

 


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