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新卒と中途、地方と都市圏。採用にまつわる垣根は崩れるのか

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

長期化する新型コロナウィルスによる混乱は、これまで当たり前だったことに変化をもたらしています。特に採用や働き方に代表される高度経済成長時代につくられ、いまもなお色濃く残る制度へも変革が求められています。

これは今に始まったことではなく、働き方改革の一環として政府や経団連などから提唱されてきたものです。しかし、コロナにより「変化が加速している」というほうが正しい表現かもしれません。

これまで日本企業は新卒者を、さまざまな仕事に就かせながら時間をかけて育ててきた。これに対し、いま起きているのは、新卒者にも中途採用者のような専門能力や経験を求める動きだ。環境変化のスピードが上がり、長期で人を育てる余裕はなくなってきた。新卒採用と中途採用の垣根が崩れつつある。

感染症への警戒を怠れない「ウィズ・コロナ時代」に入り、企業は人と人との接触を抑える事業モデルへの変革やサプライチェーン(供給網)の見直しなど、多くの課題を抱える。問題解決能力を備えた人材の需要は一段と高まる。

自社では育成が難しい分野を中心に、企業はすでに中途採用を拡大している。自動車メーカーは自動運転技術関連などの人材確保を急ぎ、トヨタ自動車は総合職の中途採用比率を中長期的に5割に引き上げる。

新卒者が入社時期を卒業後1年以内で自由に決めることができる通年採用を導入する企業も出てきました。卒業後の短期の留学や専門性を高める教育を受ける期間を想定しており、最初から自主的なキャリア形成意識をもたせようとする狙いがあります。従来の「メンバーシップ型」雇用の場合、最初に会社への帰属意識を醸成し、OJTを中心に現場社員との関係を深めます。その後は定期的なローテーションでジェネラリストを育成するという流れがありました。キャリア形成の主語はあくまで会社です。今後、職務を明確にして能力・実績で評価する「ジョブ型」雇用への移行を見据え、自主的にキャリア形成を考える準備段階に入ったとも言えるでしょう。

新卒にも中途のような専門性を求めるようになる流れがある一方で、現実的にはふさわしい人材が限られているという声もあります。広く適応させるには就職の手前、つまり学校教育を変えていく必要があります。2017年の学校教育法の改正により設けられた「専門職大学」がそのニーズを汲み取るでしょう。専門職大学とは、実習や実験等を重視した即戦力となりうる人材の育成を目指す職業大学で、専門学校とは異なりいわゆる1条校である大学の一種として設けられます。教員の4割以上を実務家が占め、実習も企業で行うなどより(企業から見て)即戦力となる人材の育成を目指しています。

既存の大学でも変化の動きが見られます。武蔵野大学では「アントレプレナーシップ学部」を2021年に開設する予定です。教員は現役の実務家を中心に構成され、社会課題を解決する策としての起業を教育していくとのことです。

このように「新卒と中途の垣根」が崩れていくと同時に、働く場所にも変化が訪れています。

ファーストリテイリンググループやパナソニックなど一部の大手企業では「地域限定社員」として特定の地域でのみ働く正社員を採用してきた。 転居を伴う異動がない分、昇給額を抑えるなど待遇面で正社員と差があるケースが多かった。厚生労働省の19年賃金構造基本統計調査によると、最も格差が大きい青森と東京では14万円の開きがある。

スタートアップや中小ITなどの中小企業は首都圏では大手との人材獲得競争にさらされている。このため、待遇面で首都圏勤務と差がないリモート専用人材を幅広く募集すれば、首都圏で採用活動をするよりも優秀な人材を集められるとの期待がある。

今後の日本は少子高齢化が進み、介護の課題もより表面化してくるでしょう。リモートワークは、勤務場所や時間の制約から働き続けることが難しかった人材を活かすツールにもなるでしょう。パーソル総合研究所によると、2030年の日本では644万人の人材不足となる見込みです。採用や勤務地や時間の垣根を取り払うことで、より人材のマッチングが進むことを期待しています。

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タイトル画像提供:nespix / PIXTA(ピクスタ)

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