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モノ、コトを超え「イミ」消費へ

成熟した日本経済において、消費者の関心は物欲(モノ)を離れ、体験(コト)に向かうと、だいぶ以前から指摘されていた。さて、コロナ禍の自粛でコト消費も思うようにできないいま、巣ごもりの内省から、また新しい消費が生まれつつあると感じる。「自分にとって」「社会にとって」深く、積極的に消費の意味を探す「イミ」消費と名付けよう。

人口縮小の上に長引くデフレとコロナ不況が重なり、日本の消費市場はいかにも前途多難に見える。しかし、この新しい流れを需要と供給が支えることで、より持続可能な成長が見込めると考える。

もちろん、これまでの「モノ」「コト」消費にも、意味はあった。しかし、コロナ前は、ブランドに対する憧れ、安心感に価値が見出され、「楽しい体験」は刹那的に消費された。

ところが、コロナ後には、この消費心理が大きく旋回する可能性がある。端的には自粛により「見栄」は「内省」に置き換わり、「刹那」よりも「つながり」がより意識されるようになるからだ。より自宅で過ごすことで、情報を集め選択を吟味する時間が増えることも「イミ消費」を応援する。

例えば、これまで「皆がするから」一緒に祝っていた成人式を「家族で真夏に」行うことは、お仕着せの「コト」ではなく、再定義された「イミ」のもと、新しい消費が生まれていると言える。

また、先日、日経ビジネスLIVE Day 5「変わる消費行動」に出演し、消費企業やスタートアップ経営者とお話しする機会があった。パネリストが等しく同意したのは、これから理念に裏打ちされた経営が益々重要になるという点だ。

例えば、キャンプギアで圧倒的なファンを持つS社には、自然によって人間性の回復を目指す理念があると伺った。この理念に深く共鳴するS社ファンは、ギアを買うのみならず、コミュニティを作って永く会社とつながる。これも「イミ」消費の一例と言える。

このように、モノやコトの提供側が「イミ」消費に正面から向き合うには、揺るがない理念、使命や思想が経営の根底にあることが必要条件だ。企業の想いを効果的に伝えることが大切なのは言うまでもない。しかし、想いがその企業の立ち居振る舞いすべてから匂いたつようでないと、情報巧者の消費者には、すぐ付け焼刃を見透かされてしまうだろう。

例えば、フランスで「使命を果たす会社」上場会社第一号となったダノンは、環境や生態系を守ることを経営の中枢に置いている。消費者にこの心が通じれば、ダノンブランドに横並びブランド以上の魅力を見出す「イミ」消費が生まれる可能性がある。逆に、消費者が生産の川上で起きる環境インパクトやリサイクルの仕組みに関心を高めれば、企業に対応を迫ることができる。

果たしてコロナ後は、消費の氷河時代だろうか?「イミ」消費の鉱脈を捉えられるプレイヤーにとって、実は新しい市場を創る好機と考えられる。

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